2025年10月最低賃金引上げに関する実態調査

株式会社エフアンドエムが運営する中小企業総合研究所によるレポート

株式会社エフアンドエム

2025年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で66 円引上げられ、1,121円となりました。物価上昇や人手不足を背景に、最低賃金の引上げペースは加速しており、政府は2020 年代に全国平均1,500 円とする目標を掲げています。こうした動きを受け、最低賃金は一部の業種や雇用形態に限られた論点ではなく、多くの企業経営に共通する前提条件となりつつあります。

特に中小企業においては、賃金水準の見直しに加え、価格設定や人材確保、事業運営全体への影響が懸念される状況に置かれています 。一方で、業種や企業規模、地域によって置かれている環境は異なり、最低賃金引上げへの受け止め方や対応余地にも差が生じていると考えられます。

本調査は、このような環境変化の中で、中小企業が最低賃金引上げにどのように向き合っているのかを把握し、今後の経営判断や制度議論に資する基礎的な情報を整理することを目的として実施しました。

1.調査結果

本調査は、エフアンドエムクラブ会員企業を対象にアンケート調査を実施したものである。調査期間は2025年9月1日から9月30日までとし、有効回答数は2,760社である。設問内容に応じて単一回答および複数回答を設定しており、未回答は集計母数から除外している。

最低賃金引上げの影響を受ける企業は、業種や企業規模を問わず広がっており、多くの企業が何らかの対応を行っている。対象者への賃上げ対応にとどまらず、賃金体系全体への波及を意識した動きも一定程度見られる。

一方で、人件費上昇分を十分に価格へ転嫁できていない企業も多く、対応状況にはばらつきが存在する。業界構造や制度的制約を抱える分野では、企業努力のみでの対応が難しい実態が浮かび上がっている。

最低賃金1,500円の実施については、現時点では慎重な見方が多く、中小企業経営への影響を懸念する声が強い。

2.まとめ

本調査を通じて、最低賃金引上げはすでに一部の企業や業種に限定された問題ではなく、多くの中小企業にとって避けられない経営環境となりつつあることが明らかとなった。最低賃金引上げの対象者が「いる」と回答した企業は全体の約半数に達しており、業種・規模・地域を問わず影響の裾野が広がっている。

注目すべき点は、最低賃金引上げへの対応が、単に対象者の賃金を引き上げる対応にとどまらず、賃金体系全体へ波及していることである。対象者以外への賃上げを予定する企業が一定数存在し、特に企業規模が大きくなるほどその割合が高まる傾向が見られた。最低賃金の改定が、結果として社内の賃金バランスや人事制度全体の見直しを促している実態がうかがえる。

一方で、改定後最低賃金との差を見ると、「+100 円以内」に集中する分布が多くの業種・規模・地域で確認された。これは、企業が最低賃金を意識しながらも、余力を持った賃金設計が難しい状況にあることを示している。特に宿泊業・飲食業や医療・福祉などでは、この傾向が顕著であり、賃金引上げ余地の限定性が浮かび上がった。

人件費上昇分の価格転嫁については、実施できている企業と、ほとんど実施できていない企業に分かれている。製造業や運輸業では一定の価格転嫁が進んでいる一方、医療・福祉や一部サービス業では、制度や業界構造上の制約から転嫁が難しい実態が確認された。価格転嫁ができていない理由としては、競合との価格競争、顧客離れへの懸念、価格決定権の欠如などが挙げられており、企業努力だけでは解決が難しい構造的課題が存在している。

こうした状況の中で、企業は価格転嫁以外の対応策にも取り組んでいる。社内業務の見直しや業務効率化・省人化投資が広く行われており、自由記述からは、内製化、固定費の見直し、事業構成の転換など、経営全体を見直す動きも確認された。ただし、これらの対応は企業規模や業種によって実行余地に差があり、すべての企業が同様の選択肢を持てるわけではない点には留意が必要である。

最低賃金1,500円という政府目標については、現時点では「現状では難しい」とする回答が多く、特に従業員規模が大きい企業ほど否定的な見通しが強まる傾向が見られた。自由記述では、人件費総額の急増、賃金と生産性の乖離、業界構造や制度的制約、いわゆる「年収の壁」への懸念など、定量調査では捉えきれない具体的な課題が数多く指摘されている。

以上を踏まえると、最低賃金引上げは「賃金水準を引き上げれば解決する」単純な問題ではなく、価格転嫁の可否、業界構造、制度設計、企業規模ごとの対応力といった複数の要素が複雑に絡み合う課題であることが明確になった。今後の制度設計や支援策を検討するにあたっては、こうした現場の実態を踏まえ、企業努力に過度に依存しない形での議論が求められる。

>>>レポート全文はこちら

https://www.fmltd.co.jp/info_cat/chushou

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

株式会社エフアンドエム

7フォロワー

RSS
URL
https://www.fmltd.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
大阪府吹田市江坂町1-23-38 F&Mビル
電話番号
06-6339-7177
代表者名
森中 一郎
上場
東証スタンダード
資本金
9億8965万円
設立
1990年07月