1on1ミーティングにはどのような課題や効果があるのか人事担当者に聞いた「1on1ミーティング導入の実態調査」分析結果を発表
1on1ミーティング導入目的の1位は「社員の主体性・自律性の向上」
上司部下の関係性が良くなったなどの効果がある一方、上司の面談スキル不足など課題も明らかに
上司部下の関係性が良くなったなどの効果がある一方、上司の面談スキル不足など課題も明らかに
企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、2022年1月に全国主要都市圏の企業にて人事系業務を担当する正社員936 名に対し、「1on1ミーティング導入の実態調査」を実施し、「1on1ミーティング導入の目的」や「1on1ミーティングの導入効果」など、調査結果から見える実態について公表しました。
*詳細は調査レポート(https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001055/)を参照ください。
1. 調査の背景
近年、リモートワークの進展、多様な価値観の従業員が増えたことなどにより、人材マネジメントの難度が増しています。マネジメント支援施策の一環として1on1ミーティングを導入する企業が増えている一方で、すでに導入されている企業から、より活用していくためのご相談を受けることが増えてきました。そこで、全国主要都市圏の企業において、1on1ミーティングの実施実態を明らかにし、効果的なご支援につなげることを目的に、本調査を実施しました。
2. 調査の結果
●1on1ミーティングを導入している企業は約7割(図表1)
1on1ミーティングの施策としての導入率について尋ねたところ、従業員規模3,000名以上の企業では75.7%、700~2,999名企業では69.9%、100~699名企業では57.7%となり、全体では7割近くの企業が、1on1ミーティングを施策として導入しているという結果となりました。
図表1 1on1ミーティングの導入状況
●導入している企業の内、約6割が「3年以内に導入」(図表2)
導入時期について尋ねたところ、60.5%が「3年以内に導入した」と回答しました。
⇒2020年からのコロナ禍の影響でリモートワークが一気に進展し、部下と話す機会を意図的につくる必要性が感じられたことも、導入が進んだ要因の一つだと考えられます。
図表2 1on1ミーティングの導入時期
1on1ミーティング導入の目的について、施策の狙いが多岐に渡る事例も少なくないため、重要な上位3つに絞って回答してもらいました。その結果、1位は「社員の主体性・自律性の向上」で52.5%、2位は「自律的キャリア形成の支援」で41.5%となりました。
⇒近年、企業ではVUCAと呼ばれる変化の大きなビジネス環境の中で、トップダウン型のマネジメントが通用しづらくなり、一人ひとりの従業員が自律して課題設定、業務遂行していくことが求められています。さらに各自が仕事の意味や担当する範囲を主体的に捉え直し、自律的にキャリアを設計していく姿勢も期待されています。一方で、職場の実態としては、業務の細分化により、課題や取り組むテーマが小粒だったり、課題の前提条件がすぐに変わってしまったり、ということが多くみられます。一生懸命取り組んでも、報われない雰囲気が社内で醸成されてしまうと、職場へのエンゲージメント低下に繋がります。1on1ミーティングという「上司と部下による1対1の定期的な面談機会」を通じて、この今日的な職場課題へ対応することが現場に期待されていると推察されます。
図表3 1on1ミーティングの導入目的
1on1ミーティングの効果について尋ねたところ、60.1%が「上司と部下のコミュニケーションの機会が増えた」、46.5%が「部下コンディションの把握ができている」40.2%が「上司と部下が本音で話せる関係になっている」と回答しました。
⇒特定の人に接する回数が増えることで、その対象への印象が良くなることは、「単純接触効果(ザイオンス効果)」と呼ばれ、よく知られているところです。上司と部下においても1on1ミーティングを設定し、意識的にコミュニケーション機会を設けることで、関係性の向上に寄与していることがうかがえます。基本的なことですが、この関係性の構築ができていることが大事な一歩と考えられます。
図表4 1on1ミーティングの導入効果
職場・組織にどのような変化が出ているかを尋ねたところ、「上司と部下の関係性が良くなった」が40.9%、「部下のモチベーションが上がった」が36.4%となりました。
⇒特になしという回答が、14.7%に留まっていることから、1on1ミーティングを導入することで、上司部下の関係性や職場風土にポジティブな影響が出ることが伺えます。
図表5 1on1ミーティング導入による職場・組織への影響
現時点での課題を尋ねたところ、「上司の面談スキルの不足」が47.2%、「上司負荷の高まり」が44.6%でした。
⇒1on1ミーティングという、「上司と部下による1対1の定期的な面談機会」は、一見すると導入が簡単なように感じられます。しかしながら、導入企業からは、「上司の面談スキルの不足」と「上司負荷の高まり」という課題が浮き彫りになりました。ここから、1on1ミーティングを導入する際は、ただ号令をかけるだけではなく、1on1ミーティングを実践する上司に対して、スキル向上の機会や負荷軽減につながる支援が必要なことが伺えます。
図表6 1on1ミーティングを進める上での課題感
3.調査担当者
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDサービス開発部 シニアソリューションアーキテクト 星野 翔次
4.調査担当者のコメント
今回の調査から、1on1ミーティングを導入することで、上司部下の関係性や職場風土にポジティブな影響が出ることが伺えました。多くの企業は、上司部下の面談というと、目標設定面談や評価面談といった、役割の中で対峙する場面を想起します。一方、1on1ミーティングは、役割から離れた、ひとりの人として対話することが多いため、関係性の向上に寄与しているのだと推察されます。
この1on1ミーティングは、「上司と部下による1対1の定期的な面談機会」を指し、一見すると導入が簡単なように感じられます。しかしながら、今回の調査で、「上司の面談スキルの不足」と「上司負荷の高まり」という課題が浮き彫りになりました。このような課題に対して、各企業はどのように取り組んでいるかを最後にご紹介いたします。
まずは、上司の面談スキル不足という課題です。上司の面談スキルが不足していると、1on1ミーティングが、雑談のみになったり、上司が進捗確認と指示するだけの場になったりしがちです。これでは、導入目的で一番多い、部下の主体性・自律性の向上という目的は果たせません。実際に、「主体性を向上する関わりのイメージが持てない」「やり方を教えてほしい」といった声をよくお聞きします。これは上司からすると当然のことで、いざ実践となると、具体的な関わり方は分からないものです。だからこそ、上司向けに、関わり方を習得する機会を提供することが必要です。習得する機会とは、学ぶ機会・体感する機会・実践する機会・振り返る機会の4つが挙げられます。まず、学ぶ機会から解説します。学ぶ機会とは、関わり方の知識やスキルを研修で学ぶことが一般的です。1on1ミーティングには「コーチング」「フィードバック」「ティーチング」という3つのスキルが必要になります。次に、体感する機会とは、1on1ミーティングを部下として受ける経験ですが、社内で上司役をできる方が見当たらない場合は、プロコーチによるコーチングセッションを推奨します。上質な1on1ミーティングを体感することで、関わり方のイメージが掴めるのです。さらに、実践する機会ですが、これは文字通り、自身の部下に対して、1on1ミーティングを実践することです。最後に、振り返る機会とは、上司が実践している1on1ミーティングを部下はどのように感じているかをアンケートなどで振り返ることです。この振り返りが、最初に挙げた学ぶ機会に繋がります。これら4つの習得する機会を提供することで、上司の面談スキル不足という課題を解決できるでしょう。
次に上司負荷の高まりという課題です。実際に、個別の企業にヒアリングしてみると、部下の人数が多いマネジメント層にとっては、「全員と実施しようと思うと1日が終わってしまう」という声や、「現状のマネジメント業務で多忙なのに+αの施策は、到底受け入れられない」という声が出ており、悩みは尽きないようです。より1on1ミーティングを効果的に活用する上で、上司に集中する負荷の軽減が求められます。具体的には、1on1ミーティングを+αの仕事として位置付けるのではなく、マネジメントの一環として位置付けることを推奨します。上司に求められる組織成果の最大化を実現するために、1on1ミーティングの場を生かすというイメージです。さらに、実際の運用では、部下の年次や仕事内容によって、1on1ミーティングの頻度を変更することをお勧めします。
忘れがちなのが、1on1ミーティングの実施は、目的ではなく、あくまで手段だということです。1on1ミーティングを導入した本来の目的に常に立ち戻り、その目的に照らして、運用できているかを検証することが、今後も求められていくと思います。
5.調査概要
*詳細は調査レポート(https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001055/)を参照ください。
1. 調査の背景
近年、リモートワークの進展、多様な価値観の従業員が増えたことなどにより、人材マネジメントの難度が増しています。マネジメント支援施策の一環として1on1ミーティングを導入する企業が増えている一方で、すでに導入されている企業から、より活用していくためのご相談を受けることが増えてきました。そこで、全国主要都市圏の企業において、1on1ミーティングの実施実態を明らかにし、効果的なご支援につなげることを目的に、本調査を実施しました。
2. 調査の結果
●1on1ミーティングを導入している企業は約7割(図表1)
1on1ミーティングの施策としての導入率について尋ねたところ、従業員規模3,000名以上の企業では75.7%、700~2,999名企業では69.9%、100~699名企業では57.7%となり、全体では7割近くの企業が、1on1ミーティングを施策として導入しているという結果となりました。
図表1 1on1ミーティングの導入状況
●導入している企業の内、約6割が「3年以内に導入」(図表2)
導入時期について尋ねたところ、60.5%が「3年以内に導入した」と回答しました。
⇒2020年からのコロナ禍の影響でリモートワークが一気に進展し、部下と話す機会を意図的につくる必要性が感じられたことも、導入が進んだ要因の一つだと考えられます。
図表2 1on1ミーティングの導入時期
●導入の目的は社員の自律促進が最多で約5割(図表3)
1on1ミーティング導入の目的について、施策の狙いが多岐に渡る事例も少なくないため、重要な上位3つに絞って回答してもらいました。その結果、1位は「社員の主体性・自律性の向上」で52.5%、2位は「自律的キャリア形成の支援」で41.5%となりました。
⇒近年、企業ではVUCAと呼ばれる変化の大きなビジネス環境の中で、トップダウン型のマネジメントが通用しづらくなり、一人ひとりの従業員が自律して課題設定、業務遂行していくことが求められています。さらに各自が仕事の意味や担当する範囲を主体的に捉え直し、自律的にキャリアを設計していく姿勢も期待されています。一方で、職場の実態としては、業務の細分化により、課題や取り組むテーマが小粒だったり、課題の前提条件がすぐに変わってしまったり、ということが多くみられます。一生懸命取り組んでも、報われない雰囲気が社内で醸成されてしまうと、職場へのエンゲージメント低下に繋がります。1on1ミーティングという「上司と部下による1対1の定期的な面談機会」を通じて、この今日的な職場課題へ対応することが現場に期待されていると推察されます。
図表3 1on1ミーティングの導入目的
●6割以上の企業で「上司と部下のコミュニケーションの機会が増えた」(図表4)
1on1ミーティングの効果について尋ねたところ、60.1%が「上司と部下のコミュニケーションの機会が増えた」、46.5%が「部下コンディションの把握ができている」40.2%が「上司と部下が本音で話せる関係になっている」と回答しました。
⇒特定の人に接する回数が増えることで、その対象への印象が良くなることは、「単純接触効果(ザイオンス効果)」と呼ばれ、よく知られているところです。上司と部下においても1on1ミーティングを設定し、意識的にコミュニケーション機会を設けることで、関係性の向上に寄与していることがうかがえます。基本的なことですが、この関係性の構築ができていることが大事な一歩と考えられます。
図表4 1on1ミーティングの導入効果
●「上司と部下の関係性が良くなった」が約4割(図表5)
職場・組織にどのような変化が出ているかを尋ねたところ、「上司と部下の関係性が良くなった」が40.9%、「部下のモチベーションが上がった」が36.4%となりました。
⇒特になしという回答が、14.7%に留まっていることから、1on1ミーティングを導入することで、上司部下の関係性や職場風土にポジティブな影響が出ることが伺えます。
図表5 1on1ミーティング導入による職場・組織への影響
●導入後の課題は上司の負荷と面談スキル向上(図表6)
現時点での課題を尋ねたところ、「上司の面談スキルの不足」が47.2%、「上司負荷の高まり」が44.6%でした。
⇒1on1ミーティングという、「上司と部下による1対1の定期的な面談機会」は、一見すると導入が簡単なように感じられます。しかしながら、導入企業からは、「上司の面談スキルの不足」と「上司負荷の高まり」という課題が浮き彫りになりました。ここから、1on1ミーティングを導入する際は、ただ号令をかけるだけではなく、1on1ミーティングを実践する上司に対して、スキル向上の機会や負荷軽減につながる支援が必要なことが伺えます。
図表6 1on1ミーティングを進める上での課題感
3.調査担当者
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDサービス開発部 シニアソリューションアーキテクト 星野 翔次
ベンチャー企業・商社勤務を経て、2013年、リクルートキャリア(現・株式会社リクルート)入社。斡旋事業部にて、マネジメント業務に従事。2019年より現職。現在は、コーチングサービスを提供する部門にて、1on1ミーティングやコーチングの導入支援などに携わっている。キャリアコンサルタント(国家資格)米国CTI認定資格プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)。
4.調査担当者のコメント
今回の調査から、1on1ミーティングを導入することで、上司部下の関係性や職場風土にポジティブな影響が出ることが伺えました。多くの企業は、上司部下の面談というと、目標設定面談や評価面談といった、役割の中で対峙する場面を想起します。一方、1on1ミーティングは、役割から離れた、ひとりの人として対話することが多いため、関係性の向上に寄与しているのだと推察されます。
この1on1ミーティングは、「上司と部下による1対1の定期的な面談機会」を指し、一見すると導入が簡単なように感じられます。しかしながら、今回の調査で、「上司の面談スキルの不足」と「上司負荷の高まり」という課題が浮き彫りになりました。このような課題に対して、各企業はどのように取り組んでいるかを最後にご紹介いたします。
まずは、上司の面談スキル不足という課題です。上司の面談スキルが不足していると、1on1ミーティングが、雑談のみになったり、上司が進捗確認と指示するだけの場になったりしがちです。これでは、導入目的で一番多い、部下の主体性・自律性の向上という目的は果たせません。実際に、「主体性を向上する関わりのイメージが持てない」「やり方を教えてほしい」といった声をよくお聞きします。これは上司からすると当然のことで、いざ実践となると、具体的な関わり方は分からないものです。だからこそ、上司向けに、関わり方を習得する機会を提供することが必要です。習得する機会とは、学ぶ機会・体感する機会・実践する機会・振り返る機会の4つが挙げられます。まず、学ぶ機会から解説します。学ぶ機会とは、関わり方の知識やスキルを研修で学ぶことが一般的です。1on1ミーティングには「コーチング」「フィードバック」「ティーチング」という3つのスキルが必要になります。次に、体感する機会とは、1on1ミーティングを部下として受ける経験ですが、社内で上司役をできる方が見当たらない場合は、プロコーチによるコーチングセッションを推奨します。上質な1on1ミーティングを体感することで、関わり方のイメージが掴めるのです。さらに、実践する機会ですが、これは文字通り、自身の部下に対して、1on1ミーティングを実践することです。最後に、振り返る機会とは、上司が実践している1on1ミーティングを部下はどのように感じているかをアンケートなどで振り返ることです。この振り返りが、最初に挙げた学ぶ機会に繋がります。これら4つの習得する機会を提供することで、上司の面談スキル不足という課題を解決できるでしょう。
次に上司負荷の高まりという課題です。実際に、個別の企業にヒアリングしてみると、部下の人数が多いマネジメント層にとっては、「全員と実施しようと思うと1日が終わってしまう」という声や、「現状のマネジメント業務で多忙なのに+αの施策は、到底受け入れられない」という声が出ており、悩みは尽きないようです。より1on1ミーティングを効果的に活用する上で、上司に集中する負荷の軽減が求められます。具体的には、1on1ミーティングを+αの仕事として位置付けるのではなく、マネジメントの一環として位置付けることを推奨します。上司に求められる組織成果の最大化を実現するために、1on1ミーティングの場を生かすというイメージです。さらに、実際の運用では、部下の年次や仕事内容によって、1on1ミーティングの頻度を変更することをお勧めします。
忘れがちなのが、1on1ミーティングの実施は、目的ではなく、あくまで手段だということです。1on1ミーティングを導入した本来の目的に常に立ち戻り、その目的に照らして、運用できているかを検証することが、今後も求められていくと思います。
5.調査概要
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