シニア世代(60歳以上対象)の求職活動実態調査
60歳以降の求職者の約半数が「経済的な理由で収入を得るため」に仕事を探しているが、そのうち約3割は採用された経験がないことが明らかに。
調査の結果からは、60歳以降の求職者全体の約半数(48.5%)が経済的な理由で仕事を探していることが明らかになりました。また、経済的な理由で求職活動を行っている方を対象に、応募企業に採用された経験の有無をたずねると、約3割(27.0%)が採用に至っていないこともわかりました。採用されるためには、仕事や勤務先に求める条件を緩和し選択肢を広げることが最も重要なポイントであることが見えてきました。また条件を緩和して仕事を見つけた場合であっても、満足度高くやりがいを持って働けている人が多いこともわかりました。
調査実施の背景・Indeedの求人/仕事検索データから見えること
総務省統計局によると、65歳以上の高齢就業者数は2004年以降、18年連続で前年に比べ増加し、2021年は909万人と過去最多となっています。実際に、Indeed上で「60歳/60代」「70歳/70代」に関連するキーワードを用いた仕事検索の推移を調査したところ、「60歳/60代」の仕事検索数は5年間で4.0倍、「70歳/70代」の仕事検索数は5年間で14.7倍に増加しており、シニア世代の就業意向が高まっている様子がうかがえます。
一方、60歳以上を積極的に募集している求人割合を調査したところ、過去5年間で求人割合の増減はあったものの、2020年8月をピークに以降は右肩下がりの傾向が続いており、求職者ニーズとのギャップがあることがうかがえました。この背景として、以下の3つの可能性が考えられると、Indeed Hiring Labエコノミストの青木雄介は言います。
『60歳以上の採用に意欲的な求人は、2020年8月をピークに下がっています。時期的には、第一次緊急事態宣言と第二次緊急事態宣言の間に位置し、パンデミックがだんだん深刻に感じられるようになってきた頃です。そういった状況を背景に、(1)当時はまだワクチンが浸透しておらず健康リスクを考慮した企業が増えた可能性、(2)コロナ禍に対面業務を中心とする求人数が大きく減少する中、将来の先行き不透明さから高年齢層を積極的に採用しようと考える企業が減った可能性、(3)リモートワークへのシフトが急激に進み、労働者のITスキルや自主性が一層求められる中、採用企業は、高年齢層の人材に一様にITスキルがあるか・高年齢層の経験の活用が円滑に進むか等を不安視し、ある特定の層を積極募集するよりも、求職者個々人のポテンシャルやスキルにより向き合うことを優先するようになった可能性などが考えられます。』
Indeedの調査データからは、ますます増加する60代以降の求職者と、実際に企業が高年齢層の人材を積極採用しようとしているトレンドとの間に、大きなギャップがあることがうかがえます。
そこで、9月18日の「敬老の日」を前に、雇用の障壁やバイアスに直面することの多い60歳以降の求職者の方々への支援やヒントに繋げたいと考え、60歳以降の方々の求職活動の実態や、その中でも特に多い「経済的な理由」で求職活動をしている方に焦点を絞り、採用成功のポイントを明らかにするための調査を行いました。
Indeedは「We help people get jobs.」をミッションに掲げ、あらゆる人々が公平に自分にあった仕事が得られる社会の実現を目指しています。本調査結果が、60歳以降の求職者の皆様が前向きに活動を進める一助となることを願うとともに、今後もシニア世代の仕事探しや就業の支援を続けてまいります。
「シニア世代(60歳以上対象)の求職活動実態調査」結果要約
●60歳以降の35.9%が求職活動経験あり。そのうち約半数(48.5%)が、経済的な理由で収入を得る必要があるために仕事を探している。
<60歳以降に経済的理由で求職活動を行っている人の特徴>
●60歳以降に経済的理由で職探しをしている人の約3割(27.0%)は採用に至っておらず、高い水準にあることが明らかに。
・半数以上が年齢を理由に公平に選考されていないと感じている。年齢が選考の妨げになった理由は、企業に「体力に不安がある(41.7%)」「健康に不安がある(26.8%)」「長期間勤務できない(26.3%)」「扱いづらい(23.7%)」と思われたと感じている人が多い。
・応募社数は、採用経験のある人は平均2.53社・ない人は平均2.47社と、ほぼ変わらない。
●採用に至った人のうち、84.8%が条件を緩和して仕事を見つけている。そのうち72.7%は仕事に満足しており、64.6%は入社後活躍できていると感じ、62.6%はやりがいを持って仕事をしている。
●採用に至った人のうち、47.2%が待遇や仕事内容にこだわりすぎないこと、25.9%が自身の強みの理解とアピールが、採用成功の秘訣だと考えている。
●採用に至っていない人のうち、半数以上(51.0%)は自身が採用に至らない理由がわからない。求人応募数の少なさや自身の経験・スキル不足を不採用理由として考える人も多く、採用された人との意識ギャップあり。
調査結果に関する有識者コメント:労働政策研究・研修機構 理事長 藤村 博之氏
人手不足と言われながら、シニア世代が応募してくると、企業は慎重になって採用を躊躇するという実態があります。今回の調査は、シニア層の求職状況を調べ、求職側から見た就職の問題を浮き彫りにしているといえます。特に、年齢が採用への障壁となったと感じたことがあると回答した781人にその内容をたずねたところ、企業側に体力や健康面の不安、長期間勤められない、扱いづらいと思われたという点が上位になりました。60代以上の層がその下の年代層に比べて、病気になったり怪我をしたりする確率が高くなることは、否めない事実です。しかし、そこには個人差があり、体力や健康面に何の問題もなく働いている人は大勢います。
雇用は、雇う側と雇われる側が合意することで成立します。場合によっては、お互いに歩み寄ることも必要です。雇われる側が雇う側の懸念を払拭するために、積極的に試用期間を受け入れることも有効です。例えば、「とりあえず1カ月間働かせてください。その状況を見て正式採用するか否かを決めていただいて結構です」と雇われる側が表明。試用期間中の給料は低く抑え(もちろん最低賃金を下回ることは論外ですが)、正式採用になったら本来の給与額との差を補填します。予定していた時給が1,500円の場合、試用期間中は1,200円とし、正式採用になったら差額の300円を追加で支払うという方式です。これで雇う側の負担感がある程度軽減され、「試しに働いてもらおうか」という行動に繋がるのではないでしょうか。
また、今回の「シニア世代の求職活動実態調査」の結果からは、採用に至っている人の特長となる部分も見えてきました。それは、「こだわりすぎないこと」と「選択の幅を広げること」です。調査では8割以上の方が条件を緩和して仕事を見つけ、その7割以上が仕事に満足しているというポジティブな結果が見いだされました。また、採用に繋がった人は、求職活動時に他者への相談や、自分が重視する点や妥協できる点を考える動きが結果として見られました。仕事探しは1人で考えていると視野が狭くなってしまいがちです。そんな時に家族や知人、キャリアカウンセラーなどと相談をしてみることで、それまで考えてはいなかった「業界」「職種」「働き方」の幅や候補が広がる可能性があります。
シニア世代の求職活動では、(1)就職にあたっての条件にこだわりすぎないこと、(2)求職活動の準備として、自分の強みを棚卸することや他の人に相談して選択の幅を広げること、(3)求職活動にあたっては、緩和できる条件をリストアップして視野を広げることの3点が大切だといえます。発想を少し変えれば、可能性は大きく広がると私は考えます。
労働政策研究・研修機構
理事長 藤村 博之
独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長。京都大学助手、滋賀大学助教授、教授を経て、1997年に法政大学経営学部教授、2004年4月から大学院イノベーション・マネジメント研究科教授。2023年4月から現職。専門は労使関係論、人材育成論。著書に、『人材獲得競争―世界の頭脳をどう生かすか』(竹内、末廣と共著、学生社、2010年)、『新しい人事労務管理[第6版]』(共著、2019年)、『考える力を高めるキャリアデザイン入門』(編著、2021年)などがある。
調査概要
1. 60歳以上の仕事検索動向/積極募集求人動向調査
・調査主体:Indeed Japan株式会社
・調査対象期間:2018年7月〜2023年7月
<仕事検索動向>
・調査方法:対象期間において、日本のIndeed上の全仕事検索に対する①「60歳」または「60代」、②「70歳」または「70代」、のキーワードを含む検索割合を算出(100万件あたりの検索数)
<求人動向>
・調査方法:対象期間において、日本のIndeed上に掲載されている全求人における60歳以上を積極的に募集している求人*割合を算出(100万件あたりの求人数)
*①「60歳」または「60代」、②「70歳」または「70代」、③「80歳」または「80代」と、積極的に募集をしていると考えられるキーワード(「募集」「応募可」「積極採用」「歓迎」「OK」)との複合語が含まれる求人を定義し、算出
2. 「シニア世代(60歳以上対象)の求職活動実態調査」概要
・調査主体:Indeed Japan株式会社
・調査方法:インターネット調査
・調査期間:2023年8月10日(木)~8月15日(火)
<事前調査>
・調査対象:60代~80代の男女30,198名
<60歳以降に「経済的な理由」で求職活動を実施したことのある人を対象とした調査>
・調査対象:60代~80代で「経済的な理由」で求職活動を実施したことのある男女1,579名
・集計:人口構成比による性・年代と、採用経験の有無の出現率を考慮し、ウェイトバック集計を実施
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
※本プレスリリースは、以下からもご確認いただけます。
Indeed Japan Press Room:https://jp.indeed.com/press/releases/20230908
Indeed (インディード) について
Indeedは、最も多くの人が仕事を見つけている世界No.1求人検索エンジン*です。現在60ヵ国以上、28の言語でサービスを展開し、求職者は何百万もの求人情報を検索することができます。 300万以上の企業がIndeedを利用して従業員を見つけ、採用しています。月間3億人以上のユーザーがIndeedを利用**し、求人検索や履歴書の登録、企業の情報検索を行っています。詳細はhttps://jp.indeed.comをご覧ください。
出典:Comscore 2023年6月総訪問数
*出典:Indeed社内データ 2022年4~9月
<参考資料>
「シニア世代(60歳以上対象)の求職活動実態調査」調査結果詳細
1. シニア世代の求職活動実態
・60歳以降に求職活動を行ったことがある人は35.9%で、60歳以上の3人に1人以上が仕事探し経験あり
60歳以降に求職活動を行った経験がある人は35.9%で、3人に1人以上は求職活動経験があることが確認できました。
・60歳以降の求職者は、約半数(48.5%)が「経済的な理由」で働く必要がある
求職活動を行ったことがある人7,534名※1に求職活動を行う最大の理由をたずねたところ、1位は「経済的な理由で収入を得る必要があるから」で48.5%。老後を過ごす上で、年金等の他の収入源として、自ら稼ぐ必要がある人が多いことがうかがえます。次いで「健康を維持/促進したいから」17.3%、「やりがい/生きがいを感じたいから」「社会との接点を持ちたいから」が15.1%となりました。
※1: 60歳以降に求職活動を行ったことのある人のうち、「知人からの新しい仕事・企業の紹介」や「それまでの在職企業での再雇用・関連会社への出向」のみの経験者を除いた人
2. 経済的な理由で収入を得る必要があり、60歳以降に求職活動を実施している人の特徴
ここからは、経済的な理由で収入を得る必要があることを主な理由として、60歳以降に求職活動を行なった経験のある1,579名を対象に、求職活動の実態や意識などを調査した結果をご紹介します。
・応募企業に採用された経験がない人は約3割(27.0%)。73.0%は採用された経験あり
「経済的な理由」で求職活動を行った経験がある人の中で、27.0%は採用されたことがないことがわかりました。一概に比較はできませんが、完全失業率※2が2.7%(2023年7月)であることを考えると、非常に高い水準であることがわかります。一方で、73.0%は採用された経験があることを考えると、60歳以降の求職活動は決して無謀な挑戦ではなく、十分に採用される可能性があることもわかります。
※2: 労働力人口(15歳以上の働く意欲のある人)のうち、完全失業者(職がなく、求職活動をしている人)が占める割合
・求職活動経験者の5割程度が「年齢」が理由となって公平に選考されていないと感じる
求職活動時に、「ご自身のスキルや経験以外の要因によって、公平に選考されていないと感じたことがあるか」を聞いたところ、全体の49.5%が「年齢」が選考の妨げになったと感じた経験があることがわかりました。
Indeed上で「60歳/60代」「70歳/70代」をキーワードとして仕事を検索する割合は過去5年間で増加してきています。この結果と合わせてみると、自分の年齢でも採用されやすい仕事をみつけたいと、自身の年齢や年代をキーワードとして仕事を探している人が増えているものと推測されます。
・年齢が選考の妨げになった理由として、4割が「体力に不安があると思われた」とシニアならではの懸念
自身の年齢を理由に公平に選考されていないと感じたことがある781名に、年齢が選考の妨げになった理由は何だと思うかをたずねたところ、41.7%が「体力に不安があると思われた」、26.8%が「健康に不安があると思われた」、26.3%が「長期間勤務できないと思われた」、23.7%が「扱いづらいと思われた」、23.4%が「新しいことは覚えられないと思われた」と回答しました。自身の年齢を理由に企業が体力や健康に不安を感じているのではないかと感じる人が多いことがわかります。
・求職活動期間中の応募社数は、採用経験のある人は平均2.53社、ない人は平均2.47社と、ほぼ変わらない
応募社数をたずねたところ、54.3%が「1社」、32.6%が「2~3社」と回答しました。平均応募社数は、採用された経験のある人の場合2.53社、採用された経験のない人の場合2.47社とほぼ差がないことがわかりました。シニア世代はある程度応募する企業の的を絞って求職活動を行っていることがうかがえます。また、応募社数が多いことが、採用有無に影響しているわけではないこともうかがえます。
3. 経済的な理由で収入を得る必要があり、60歳以降に求職活動をした人のうち「採用された人」の特徴
・妥協した条件は「給与」。求職時に条件を緩和して仕事を見つけている人は8割以上
採用された経験者のある人(1,152名)のうち、求職活動中に「妥協した/ゆずった条件がない」人は15.2%。84.8%が何かしら条件を緩和して仕事を見つけていることが明らかになりました。妥協した条件として圧倒的に多かったのは「給与」で45.6%。その他「働く日数や時間の柔軟さ」「職場の環境」「勤務地」と続きます。
・仕事の求める条件を緩和して採用された人のうち、7割以上が「仕事に満足」、6割以上が「入社後活躍している」、5割以上が「やりがい」を感じている
求職時に仕事の求める条件を緩和して採用された人977名のうち、「仕事に満足している」人は72.7%、「入社後活躍できている(と実感している)」人は64.6%、「仕事にやりがいがある」人は62.6%※3となり、条件を緩和した場合であっても、ポジティブに働いている人が多いことがわかります。
※3:「とてもそう思う」14.33%「そう思う」48.22%の合計値62.55%を四捨五入しているため、グラフ内の数値の合計値との間に差が出ています。
・約半数(47.2%)が、「条件にこだわりすぎず、妥協できる範囲を広げること」を採用された理由だと考えている
採用された経験のある人に、求職活動中に行なったことの中で、採用に至ったと思う理由をたずねたところ、最も多かったのは「希望の待遇にこだわりすぎず、妥協できる範囲を広げたこと」で32.2%、ついで「希望の仕事内容にこだわりすぎず、選択肢を広げたこと」30.0%となり、2つの回答を合わせて重複を差し引くと47.2%が“条件緩和”して視野を広げたことを理由に挙げていました。3位は「自身の強みや専門知識、経験を理解し、うまく伝えることができたこと」で25.9%となりました。条件にこだわりすぎないこと、及び、自身の強みの理解とアピールが、採用に繋がる可能性があると考えられます。
4. 経済的な理由で収入を得る必要があり、60歳以降に求職活動をした人のうち「採用されていない人」の特徴
・採用されない人は半数以上、自身が採用に至らない理由は「特になし/わからない」。応募企業数や仕事へのこだわり、スキル・経験不足を挙げる人も多い
採用された経験がない人に、自身が採用に至っていない理由をたずねたところ、最も多かったのは「特になし/わからない」で51.0%となりました。次いで、「希望の仕事内容にこだわっているから」「応募した企業が少ないから」が共に14.6%、「自分の持つスキルや経験が足りないから」14.4%でした。
採用されたことのない人の平均応募社数(2.47社)と採用された人の平均応募社数(2.53社)がほぼ変わらないことや、採用されたことのある人が採用に至った理由として、約半数が仕事に求める条件を緩和し視野を広げたことを挙げていたこととは、相対する結果となりました。
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