スペースシードホールディングス、『マテリアルズ・インフォマティクス探索システム』に関する特許3件を出願 ― 「AIが出す材料候補を、作れる候補へ絞り込み、権利化まで一気通貫で固める」
MI探索システムの中核技術について、入口(作れる候補への絞り込み)・駆動(装置と材料の共進化)・権利化(AI発明者問題に対応した発明開示書の自動生成)の3件を特許出願

宇宙系ディープテックベンチャービルダーであるスペースシードホールディングス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:鈴木健吾、以下「当社」)は、合金材料の探索システム「マテリアルズ・インフォマティクス(以下MI)探索システム」の中核技術に関する特許3件を、2026年5月26日付で出願しました。
出願した3件は、AIが提案する材料候補を「実際に作れるもの」に絞り込む入口の技術、作れない候補の情報も学習に回して装置と材料を共進化させる駆動の技術、そして生まれた発明を迅速に権利化へ橋渡しする権利化支援の技術であり、MI探索のワークフロー全体を一気通貫で固めるポートフォリオを構成します。当社は「SFをノンフィクションにする」をミッションに掲げ、2040年までに人類が宇宙空間で居住するために必要な技術を揃えることを長期目標としており、今回の出願内容はその実現を支える素材開発基盤の中核を担うものと位置付けています。
背景:AIが出す材料候補は、本当に作れるのか
MIは、AIをはじめとするデジタル技術を用いて、膨大な材料の組み合わせのなかから有望な候補を効率よく絞り込む、データ駆動型の材料設計アプローチです。一方で現場には根強い悩みがあります。AIに材料を提案させると、計算上は高性能でも、自社の製造装置では再現できない組成が大量に混ざってしまうのです。研究者は「試しては作れなかった」を繰り返し、検証コストを空振りに費やしがちになります。
加えて、探索の土台となる公開材料データベースには構造的な偏りがあります。元素の数を増やすほど、データベースに収載されている組み合わせの割合は急速に減っていきます。元素数の少ない単純な系はほぼ網羅されている一方、扱う元素数が増えるほど踏査されていない領域が広がり、多くの元素を組み合わせる先進材料の探索ほど「データの空白」に踏み込むことになります。
「実際に作れるか」という製造装置の制約と、「そもそもデータが乏しい」という探索の偏り。この二つの課題に正面から向き合うために、当社はMI探索のワークフローそのものを設計し、その中核技術を権利として固めることにしました。今回出願した3件は、入口・駆動・権利化という3つの局面で、この設計思想を具体化したものです。
発明1(入口):作れる候補だけを最上流で選び抜く

1件目(特願2026-087736「物理装置境界制約付き材料候補絞り込み方法、システムおよびプログラム」)は、AIが提案する材料候補のうち、実際の製造装置で作れるものだけを最初の段階で選び抜く技術です。
焼結装置を主たる対象とし、CVD・PVD・液相合成リアクタなど多様な製造装置の「動作範囲」を、候補探索の最上流に置くゲートとして取り込みます。動作範囲に適合しない候補は確定的に取り除かれるため、出力される候補はすべて「実際に作れること」が構造的に裏づけられます。さらに、元素数が増えるほどデータベースへの収載割合が減っていくという探索の偏りをふまえ、既知のデータからどれだけ離れているかを表す「組成距離」を欠かせない評価軸の一つとして組み込み、多軸で候補の新規性を評価します。「計算上は良くても作れない」候補に検証コストを払う空振りを、入口の段階で構造的に減らすことができます。
発明2(駆動):作れない情報も学習に回し、装置と材料を共進化させる

2件目(特願2026-088528「装置適合度の連続融合および装置状態オンライン更新による材料候補絞り込みの閉ループ方法、システムおよびプログラム」)は、探索を反復しながら賢くしていく駆動の技術です。
ここでは、装置の動作範囲にどれだけ適合しているかを「作れる・作れない」の二択ではなく、どの程度・どの方向に作れないかまで含めた連続的な度合いとして扱い、探索を導く評価の中に統合します。これにより、不適合とされた候補が持つ情報も無駄にせず、次の探索に活かせます。さらに、実機での検証や高精度のシミュレーションの結果に基づいて、AIモデルだけでなく装置の動作範囲そのものも更新する閉ループを構成します。装置の改良と材料の発見を「共進化」させることで、探索の初期では到達できなかった材料系――たとえば高い圧力や温度を要する超硬質の領域――へ、反復の後期に到達できるようにすることを狙います。
発明3(権利化):発明開示書を自動生成し、AI発明者問題を構造的に回避

3件目(特願2026-087739「AI主導の発明開示書自動生成方法、システムおよびプログラム」)は、探索の出口で生まれた発明を、迅速に権利化へつなぐための技術です。
MI探索が出力した候補のレコードを起点に、特許出願の前段資料となる「発明開示書」のドラフトを、所定のフォーマットに沿って自動で作成します。来歴をたどれる追記専用の台帳と連動させ、設定・候補・原案・開示書・台帳を一つの実行識別子でひと続きに追跡できるようにしました。重要な特徴として、発明者リストが自然人のみで構成されていることを生成の前提条件として強制し、これを満たさない場合は生成を行いません。AIを発明者として誤って扱うリスクを、仕組みの段階で排除する設計です。これは、現行特許法上、特許を受けることができる「発明」は自然人が発明者となるものに限られ、AIが自律的にした発明については特許を付与できないとした知財高裁令和7年1月30日判決(令和6年(行コ)第10006号)を踏まえたものです。
ポートフォリオとしての意義
3件は単発の発明ではなく、MI探索のワークフローを入口から出口まで一気通貫で固めるために設計されたポートフォリオです。入口の発明1がAIの提案を「実際に作れる候補」だけに絞り込み、駆動の発明2が作れない情報まで学習に回して装置と材料を共進化させ、権利化の発明3が出てきた発明をAI発明者問題をクリアした形で迅速に権利化へ橋渡しする。設計から検証、そして権利化までを一筋でつなぐこの構成こそ、当社のアプローチの特長です。
ソフト(設計)とハード(検証)を両輪でとらえる当社の姿勢とも、本ポートフォリオは地続きです。当社は超高圧の焼結(SPS:放電プラズマ焼結)装置の開発を岡山理科大学とともに進めており、発明1が主たる対象とする「焼結装置の動作範囲」は、この実装と直接つながっています。ソフトで賢く設計し、ハードで素早く確かめる。その往復を権利化とともに速く回せる体制の構築を目指します。
今後の展開
当社は今後、半導体をはじめとする各種の新素材分野に対して、素材開発という立場から、ソフト(設計)とハード(検証)の両面を含めた提案ができる体制づくりを進めます。今回出願した3件は、その基盤を支える知的財産の第一歩にあたります。MI探索システムの具体的な適用や個別の探索結果、ならびに権利化の進捗については、追って報告します。
代表コメント
「AIにいくら賢く材料を提案させても、『実際には作れない』ものが大半では、研究の現場は前に進みません。だからこそ私たちは、作れる候補だけを選び抜くことを入り口、作れない情報まで学びに変えて装置と材料をともに育てる駆動、そして生まれた発明を正しく速く権利にする出口――探索の流れ全体を一つの設計として組み上げ、その中核を特許として固めました。
AIは道具として最大限に使う一方で、発明者はあくまで人である。その一線を仕組みのなかに引いたことも、今後の研究開発においても大切にしていきたいと考えています。
私たちが見据えているのは、宇宙でものづくりをし、人が宇宙で暮らせる時代です。その時代に必要な素材を、いま地上で設計し、確かめ、権利として残しておく。この積み重ねで、当社のミッション『SFをノンフィクションにする』を一歩ずつ現実にしていきます。」
スペースシードホールディングス株式会社について
スペースシードホールディングス株式会社は、「研究支援で宇宙を目指す」をスローガンに掲げる宇宙系ディープテックのベンチャービルダーです。2024年1月の設立以来、「SFをノンフィクションにする」をミッションとし、2040年までに人類が宇宙空間で居住するために必要な技術を揃えることを長期目標に、宇宙利用研究事業「SPACE LAB.」をはじめとするディープテック領域の研究支援・事業化に取り組んでいます。地上での研究開発と将来の宇宙でのものづくりを地続きのものととらえ、素材・発酵・医学など多様な分野で、社会実装に資する技術づくりを進めています。
会社概要
社名:スペースシードホールディングス株式会社(Space Seed Holdings Inc.)
代表者:代表取締役 鈴木 健吾
設立:2024年1月
事業内容:宇宙利用研究事業(SPACE LAB.)ほか、ディープテック領域の研究支援・事業化
公式サイト:https://ss-hd.co.jp/
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