正露丸の主成分「木クレオソート」がアニサキスに与える影響 大幸薬品と国立感染症研究所が動物実験での検証に成功

日本寄生虫学会機関誌「Parasitology International Vol.108」に掲載予定

大幸薬品株式会社

 大幸薬品株式会社(本社:大阪市西区、代表取締役社長:柴田 高、以下、大幸薬品)は、国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所(所在:東京都新宿区、所長:俣野 哲朗、以下、感染研)との共同研究により、「木(もく)クレオソート」が、魚介類に寄生するアニサキスの運動を抑制する働きがあることを、大幸薬品としては初となる動物を用いた実験で確認。大幸薬品並びに感染研と本研究について共同執筆した論文「アニサキス症に対する木クレオソートの効果」として、2025年10月発行の日本寄生虫学会の機関誌「Parasitology International Vol.108」に掲載予定です。

 厚生労働省による食中毒統計調査によると、食中毒の発生件数は2021年以降増加しており、2024年の食中毒発生件数は1,037件と発表されました。そのうちアニサキスによる食中毒は330件で原因物質別では最多でした。アニサキス症は、生(なま)あるいは調理不充分な魚介類を摂食数時間後、突然の腹痛に見舞われる、日本の魚介の生食文化にも関連する特徴的疾患です。ただし、近年では、和食様式が世界各国へと普及するに伴い、多くの国々でも問題視されている食中毒症状の一つとされています。

 2011年に「木クレオソート」含有薬(当社が製造販売する胃腸薬『正露丸』)内服によりアニサキス症の症状が改善したという症例報告および、試験管内で「木クレオソート」がアニサキスの動きを抑制することを示す研究結果が発表されました1)。その後、大幸薬品が2014年に「木クレオソート」を有効成分として含有する消化器アニサキス症用薬剤の特許を取得(特許第5614801号)。以降、アニサキスに対する「木クレオソート」の有効性に関する研究や情報提供を強化してきました。

従来の試験管研究の一例
今回のマウスを用いた研究の様子

 今回、発表に至った論文における感染研との共同研究は2023年1月より始動。これまで当社では試験管内での実験に限られていた「木クレオソートとアニサキス」の研究において2,3)、寄生虫に関する動物実験の技術・経験を持つ感染研との共同研究により初めて動物(マウス)を用いた試験による検証に成功し、新たな科学的根拠を得ることができました。本研究では、アニサキスを経口投与したマウスに「木クレオソート」0.67mg(※)を投与した後に、摘出したアニサキスの運動が抑制されたことを確認しました。この結果は、「木クレオソート」が生体内においてもアニサキスの運動を抑制する効果を持つ可能性を示唆するものであり、今後の応用展開に向けた重要な知見となります。当社では、今後も「木クレオソート」の薬効解明の研究をさらに深めるとともに、アニサキスによる食中毒に苦しむ方々の痛みの軽減につながるような取り組みを続けてまいります。

※「木クレオソート」0.67mg…当社『正露丸』の成人服用量1回分に含まれる木クレオソート量

1) Sekimoto M., et al., Two cases of gastric Anisakiasis for which oral administration of a medicine containing wood creosote (Seirogan®) was effective, Hepatogastroenterology, 58, 1252–1254 (2011).

2) Ogata N., et al., Inhibition of Acetylcholinesterase by Wood Creosote and Simple Phenolic Compounds, Chem. Pharm. Bull., 68, 1193-1200 (2020).

3)Ogata N., et al., The Inhibitory Effect of Wood Creosote on the Movement of Anisakis Larvae: An Implication for the Treatment of Acute Anisakiasis, Pharmacology, 106, 637–643 (2021).

◆今回の研究論文発表に対するコメント

大幸薬品株式会社 代表取締役社長 柴田 高
正露丸の主薬効成分である木クレオソートはエジプトのミイラに使用された木タールから蒸留精製され、クレオソートの語源の由来である生肉(クレアス)保存(ソート)として命名され食肉の保存に使用された歴史があります。その後おなかの薬として西洋では内服薬になりました。日本に持ち込まれた当時は殺菌剤として認知されていましたが、当社の薬効研究で木クレオソートは腸内細菌に影響することなく、水分吸収促進や大腸の過剰な運動を抑えることにより止瀉効果があることが明らかとなりました。しかし、それでは食あたりの効能の説明ができません。今回の研究成果は日本食を代表するお刺身を食した後の異変、すなわち食あたりに関する新たな薬効解明の根拠になると考えます。

大幸薬品株式会社 研究開発部 ペレイラ・カロリネ(論文執筆者)

近年、アニサキス症は日本のニュースでも頻繁に取り上げられ、社会的な問題となっています。私自身の身近にも生魚を食べたことで発症した人が何人かいます。現時点ではアニサキス症に対する有効な治療法は確立されておりませんが、本研究により、木クレオソートがアニサキスの運動を抑制する働きがあることを動物実験にて理解を深めることができました。これは今後の非侵襲的かつ効果的な治療法の開発を目指す研究への基盤となりうる可能性があります。本研究に携わることで、科学的進展に貢献できたことを大変意義深く感じております。

国立感染症研究所 寄生動物部 室長 下川 周子氏(論文共同執筆者)

本研究では、アニサキス症に対する「木クレオソート」の作用を生体内で検証するため、マウスを用いた動物実験を実施しました。アニサキス感染マウスに「木クレオソート」を一定量投与した後、胃の中から回収したアニサキス虫体の運動量を調べると、「木クレオソート」を飲ませなかったマウスから回収したアニサキス虫体と比べて運動量が有意に低下していました。これまで試験管内での観察にとどまっていた現象を、生体内でも確認できたことは、科学的根拠をさらに強化するものであり、大きな意義があると考えています。今後も、アニサキス症の予防・軽減に向けた研究が発展し、魚介類を安心して楽しめる社会の実現につながることを期待しています

<論文掲載概要>

・掲載誌
Parasitology International Vol.108(2025年10月発行)


・タイトル
Effects of wood creosote on anisakiasis: A Japanese traditional medicine as a potential tool against Anisakis larva infection


和訳)木クレオソートのアニサキス症に対する効果:アニサキス幼虫感染に対する潜在的なツールとしての日本の伝統薬


・DOI                   
https://doi.org/10.1016/j.parint.2025.103077


・共同著者           
下川 周子|国立感染症研究所 寄生動物部 室長
 杉山 広|国立感染症研究所 寄生動物部 客員研究員

城山 光子|麻布大学 生命・環境科学部 講師

<大幸薬品株式会社について>

大幸薬品は、【「自立」、「共生」、「創造」を基本理念とし、世界のお客様に健康という大きな幸せを提供します】の企業理念のもと、『正露丸』『セイロガン糖衣A』を主力製品とする医薬品事業と、低濃度二酸化塩素ガスの効果を用いた『クレベリン』を主力製品とする感染管理事業を活動の柱としております。近年、セルフメディケーションの重要性が高まる中、当社では家庭薬と感染管理による衛生対策で、お客様の健康への寄与を通じて、社会に貢献できればと考えております。

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会社概要

大幸薬品株式会社

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URL
http://www.seirogan.co.jp
業種
製造業
本社所在地
大阪市西区西本町1-4-1 オリックス本町ビル16階
電話番号
06-4391-1191
代表者名
柴田 高
上場
東証1部
資本金
1000万円
設立
1946年11月