『消費税増税 影響分析プロジェクト』2014 総括レポート

~2014 年消費税増税の主役は60 代~
増税前のまとめ買いは1997 年の増税時より拡大。その中心は60代
増税後の生活必需品への影響は限定的。購買回復をけん引しているのも60代
株式会社インテージ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:石塚純晃)は、『消費税増税影響分析プロジェクト』※12014 総括レポートを発表いたします。
本レポートは、当社が保有する市場と消費者をとらえる調査データをもとに、今年4 月の消費税増税前後の影響について食品、日用雑貨品などの生活必需品※2 の分野を対象に、「増税前」と「増税後」の実態を消費者購買の視点と小売店動向の視点にフォーカスし分析を行い、さらに1997年の増税時と比較して結果をまとめました。
※本レポートの全文、全図表は当社Web サイト( http://www.intage.co.jp/library/20140605/ )よりご覧いただけます。

分析者: 消費税増税影響分析プロジェクトリーダー 中村 勇揮

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総括とまとめ
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<増税前の実態: 97年よりまとめ買いは拡大。まとめ買いの中心は60代 >
増税前の消費者の購買動向についてSCI-personal(消費者購買パネル)のデータをもとに分析した結果、増税最終週である3月24日週では購買金額の前年比が37.4%、数量前年比が17.6%まで増加した。また、購買金額前年比を97 年と比較しても伸びており、当時と比べてもまとめ買いが拡大したことがわかった[図1]。拡大の要因としては、次の3 点があげられる。1 つ目は、まとめ買いをした消費者が97 年より増えたことである[図2-1]。特に97年にまとめ買いを経験した40代主婦層が60代となり、今回はまとめ買いの主役となった[図2-2]。
2 つ目は、まとめ買いをした人が97 年よりも数多くまとめ買いを行ったことである[図2-3]。3 つ目は、小売りのキャンペーンによって衝動的まとめ買いが起きたことである。店頭やチラシによる消費税増税前セールを理由にまとめ買いをした人が、45品目中31の品目で20%を超えた[図2-4]。以上のことから、小売店の増税前キャンペーンによって「特売訴求層」が強く反応し、60代を中心にまとめ買いする人も購買数量も増えたため97年に比べまとめ買いが拡大したと考えられる。

<増税後の実態: 生活必需品への影響は限定的。購買回復をけん引しているのは60代>
増税後4 月の収入見通しをみると収入増の消費者は12.0%しかおらず、特に60 代では1.7%しかいなかった[図4-1]。よって今回の増税により消費者は実質負担増となっている。しかし、4 月時点の消費者の支出意欲を「支出を引き締めている」と「支出を引き締めていない」の回答者比率差からみてみると、「引き締めていない」に1.8 ポイントのポジティブとなっている。特に20 代、60 代の支出意欲が高い。また、消費者の「増税による個人消費への影響見通し」も4 月には改善されており[図4-2]、増税を経験したが「思っていたほど影響は感じなかった」ため、見通しの改善につながったと考えられる。
実際、増税後の消費者の生活必需品における購買動向をみると、増税直後はまとめ買いの反動により購買が大きく落ち込んだが、5月5日週時点で購買数量が前年比6%減まで改善した。特にこの回復をけん引しているのは「まとめ買い購買者」であり[図8-1]、さらに年代別にみると60 代が需要の回復をけん引していることがわかった[図8-2]。まとめ買いを行った60代は、購買頻度が高いことから購買が「日常化」していると考えられ、小売店に来店した際、店頭セールなどにより購買が促進された可能性がある。そして、こうした60 代の購買意欲によって増税後の需要回復がけん引されていると考えられる。

<次回の増税に向けて>
増税前後の購買実態を俯瞰してみると、60代がまとめ買いも増税後の需要回復もけん引している実態がみえてきた。まとめ買いの反動はいまだ回復途中であるが、60代に対する販促アプローチにより、さらに需要の回復が見込めるかもしれない。一方で、2015年10 月に予定している10%への引き上げを見据えると、小売店では60代のまとめ買いを取り込むための効果的な店頭販促が求められる。そのためにも企業は今のうちから増税前後における60代の購買特性や購買意識をより深く分析し、次回の対策に生かす必要がある。



※1「消費税増税影響分析プロジェクト」とは
株式会社インテージが保有するリサーチデータやリサーチ基盤を活用し、2014 年4 月から始まった消費税増税の影響を分析するプロジェクトです。今回の増税前後の影響について食品、日用雑貨品の分野を対象に、『市場』『消費者』『店頭』の3 つの視点で分析し、その知見を活かして企業の消費税対策に向けたマーケティング活動を支援します。

※2 生活必需品とは
今回の調査レポートにおいては、食品(生鮮食品除く)、清涼飲料、アルコール飲料、日用雑貨品、化粧品、ペットフード、ペット用品と定義しています。


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調査結果
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■増税前の実態を知る

1. 1997年と2014年の増税前後の市場動向比較

14年の増税前後における生活必需品全体の購買金額の推移は、増税最終週(3/24 週)に金額前年比37.4%、数量前年比17.6%まで拡大した。そこで、97年と14 年の増税時の市場の動きを比較した。(97年3月と14 年3月は日付・曜日が同じ)
・14年は97 年より増税前の市場が早期に拡大し、増税後の反動も大きい[図1]
・食品・飲料は97 年より3週間早く、食品は3/3 週、飲料は2/24週から増税前のまとめ買いが始まった
・日用雑貨品は2/17 週から購買が拡大し3/24週には購買金額前年比86.1%まで伸び、97年(同週37.4%)よりまとめ買いされていた

2. 消費者の購買からみる1997年と2014年のまとめ買い実態の比較
97 年よりまとめ買いが増えた要因を分析した。
※増税年3 月の1 回当たり購買数量が前年の1 回当たり購買数量の1.8 倍以上であれば「まとめ買い購買者」と定義
・14年は97 年よりも「まとめ買い購買者」の比率は4.8 ポイント拡大[図2-1]
・97 年と比較して主婦層では60代の割合が拡大[図2-2]
・14年のまとめ買い購買者の構成を性年代別にみると60 代女性が人数・購買数量ともに最も高い
・まとめ買い購買者の購買金額・数量は97年に比べ共に拡大している[図2-3]
・14年のまとめ買い購買者は、97年のまとめ買い購買者より食品・日用雑貨品を中心にまとめ買いする品目を増やし、1つの品目につき数量もより多くまとめ買いしている
・14年のまとめ買いが促進された理由は、店頭やチラシによる「まとめ買いセール」が消費者のまとめ買いを促進。45品目中31品目で「衝撃的まとめ買い」が2割を超える[図2-4]

3. 増税前における小売店のキャンペーン実態
小売店ではどのようなキャンペーンが行われていたのか、京浜・近畿スーパー13 チェーンのチラシタイトルから増税前のキャンペーン実態を分析した。
・3/24 週のチラシタイトルの89%に「税」「まとめ」「計画的」「必需品」といった文言が入った[図3-1]
・増税前(3/17週)のチラシタイトルには、「計画的に」「今のうち」といった事前購入を促進するタイトル
・増税直前(3/24週)のチラシタイトルには、「あと●日」「ラストチャンス」といった言葉が目立つ[図3-2]

■増税後の実態を知る

4. 増税後の消費者の家計への影響
・4 月以降、収入が増加した消費者は12.0%、減少した消費者は12.6%。実質的には増税により支出負担増[図4-1]
・増税による支出のしわ寄せがいく家計項目は、レジャー費・旅行費・交際費が対象
・増税後、家計全体の支出意欲は依然ポジティブ。また、消費者のマインドは改善。増税を経験した消費者の中には“思っていたほど影響は感じなかった”可能性もある[図4-2]

5. 増税後の生活必需品の購買基準の変化
増税後の生活必需品の購買基準を調査し、品目ごとに増税後の商品選択基準を「安さ⇔付加価値」と「愛着⇔見比べ」の2 軸でプロットした。
・生活必需品間でも増税後、「愛着・付加価値」グループの負担増分が「安さ・見比べ」グループへしわ寄せされる可能性がある[図5]

6. 増税後の店頭価格とチラシによるキャンペーンの実態
・増税直後は、安値宣言とPB を前面に打ち出した価格訴求型チラシタイトルが出現。それ以外の多くは通年通りの「○○市」や「メーカータイアップ」が目立つ[図6-1]
・シーズナリティを売りにしたチラシが昨年より増加。価格訴求もするが、「4月のイベント」もターゲットにしたタイトルも多い[図6-2]

7. 増税後、小売店の販売価格はどう変動したのか、主要カテゴリーの販売価格を分析
・増税後約7 割の品目で単価(税抜)が上昇。スーパーマーケットでは主力の食品、ドラッグストアでは主力の雑貨で値上げ品目比率が高い[図7-1]

8. 増税後の購買行動
・増税後、5 月5 日週時点で購買金額前年比7.4%減、購買数量前年比6.0%減まで回復
・まとめ買い購買者と通常購買者で増税後の購買行動をみると、まとめ買い購買者は通常購買者より増税後の反動は大きいが、購買の回復も早い[図8-1]
・増税後、まとめ買い購買者の回復が早いのは60代。購買回復が他の年代よりも早い(5月5日週時点で購買数量前年比が3%減まで回復)。また、増税後5週間の購買数量の3 割は60 代が占める[図8-2]
・60 代は「購買の日常化」。買うものがなくても小売店に来店し、結果として店頭セールなどにより「買ってしまっている」可能性がある

【本レポートに使用した当社調査データ】
◇SCI‐personal(全国個人消費者パネル調査)
全国男女50,000 人のパネルモニターによる消費者市場動向のトラッキングサービスです。食品(生鮮・惣菜・弁当などを除く)・飲料・日用雑貨品・医薬品の消費者購買パネル調査です。消費者購買パネルモニターが購入した商品のバーコードを携帯端末でスキャンし、インターネット調査画面から、その商品を購入したルートや個数・金額などを入力することで、日本全国の男女50,000 人の消費者購買行動が分析できます。

◇SCI(全国消費世帯パネル調査)
全国の2 人以上の一般世帯12,008 世帯のパネルモニターによる消費市場動向のトラッキングサービスです。
※2012 年にデータ収集は終了

◇SRI(全国小売店パネル調査)
全国3,994 店舗の小売店パネルによるマーケットトラッキングサービスです。GMS、スーパー、コンビニ、薬局・薬店、ホームセンターなど主要小売業態を調査対象に販売動向をPOSデータで収集し、「どの商品が、いつ、どこで、いくつ、いくらで、どのような店舗で販売されたか」といった情報を把握することができます。

◇インテージチラシインデックス
全国のスーパーマーケット、ホームセンター、ドラッグストアなど約600 チェーンのチラシから、食品・雑貨などの特売 実態状況を収集・分析したデータです。

◇インターネット調査・調査概要
調査方法  : インターネット調査
調査地域  : 全国
調査対象者 : インテージ・ネットモニター“キューモニター” 20~69才男女1,000人 ※ウェイトバック集計値
調査期間  : 増税前2014 年2 月21 日(火)~23 日(木)/2014 年3 月29 日(土)~30 日(日)
        増税後2014年4月18日(金)~20日(日)

【株式会社インテージ】 http://www.intage.co.jp/
株式会社インテージ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:石塚純晃)は、インテージグループ各社とともに、リサーチノウハウ、データ解析力、システム化技術と、これらに基づく情報評価力をコア・コンピタンスとして、経営およびマーケティング上の意思決定に役立つ情報(Intelligence)を提供。生活者とお客様を「情報」でつなぎ、お客様のビジネスの成功に貢献することによって、その先の生活者の暮らしを豊かにすることを目指します。

【この件に関するお問い合わせ先】
■株式会社インテージ 広報担当

担当:小関(おぜき)/佐藤(さとう)
TEL:03-5294-6000 FAX: 03-5294-8318
「お問い合わせフォーム」 http://www.intage.co.jp/contact/

※本ニュースリリースは、総務省記者クラブ、内閣府記者クラブに配布しております。

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マーケティング・リサーチ
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会社概要

URL
http://www.intageholdings.co.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都 千代田区神田練塀町3番地 インテージ秋葉原ビル
電話番号
03-5294-7411
代表者名
仁司 与志矢
上場
東証1部
資本金
16億8140万円
設立
1960年03月