日本のNPOが主導し、紛争の終結へ一歩前進。ウガンダの元子ども兵社会復帰支援事業、12期生の訓練がスタート。
きっかけは、卒業生の説得。ウガンダで誘拐された元子ども兵とその家族141名が、拘束されていた武装勢力(LRA)から逃れ、祖国に帰還。社会復帰のための職業訓練や識字教育が始まりました。
認定NPO法人テラ・ルネッサンス(理事長:吉田真衣、所在地:京都府京都市、以下テラ・ルネッサンス)は、2005年からウガンダで「元子ども兵社会復帰支援事業」を実施しており、これまで251名の元子ども兵が社会復帰のための訓練に取り組んできました。2024年3月18日、新たに訓練へ参加する12期生(58名)へのオリエンテーションを行いました。彼ら・彼女らは、ウガンダや隣国のコンゴ民主共和国(以下コンゴ民)等で、幼い頃に誘拐され、兵士として駆り出されてきました。
昨年、テラ・ルネッサンスの社会復帰訓練を卒業し自立を果たした元子ども兵らと共に、隣国に残っている兵士(多くは元子ども兵)らに帰還を呼びかけてきました。結果、ウガンダで誘拐された元子ども兵とその家族141名が、ウガンダに帰還することができました。テラ・ルネッサンスが主導した帰還支援としては、最大規模になります。
子ども兵と社会復帰について
アフリカ東部に位置するウガンダでは、1980年代後半から内戦が始まり、反政府組織「神の抵抗軍(LRA:Lord’s Resistance Army)」と政府軍が約20年にわたって戦闘を繰り広げました。2006年の停戦合意まで、ウガンダ北部で推定3万8千人以上が子ども兵としてLRAに誘拐され、男の子であれば戦闘の最前線に駆り出され、また女の子であれば兵士と強制結婚をさせられるなど、壮絶な経験をしてきました。停戦後も、LRAは隣国のコンゴ民や中央アフリカ共和国での虐殺行為や村々の襲撃、子どもの誘拐を繰り返し、同地域でもこれまで8,426名の子どもや若者たちが誘拐され、兵士として駆り出されています。これらは「LRA紛争」と呼ばれ、今も続いています。
自ら逃げたり、政府軍に保護されるなどして地元の村々に帰還することができても、多くの元子ども兵が精神的・肉体的なトラウマを抱えています。戦うことしか教えられてこなかった元子ども兵たちは、読み書き・計算など、基本的な教育を受けられていません。職業技術も無いため、まともな仕事に就くこともできません。地元の村々への襲撃にも加担させられてきた元子ども兵たちは、帰還後、地域住民から加害者とみなされ憎しみの対象になることもあります。
そのためテラ・ルネッサンスでは、「元子ども兵が社会復帰するために必要な能力を身につけ経済的に自立すると共に、地域住民との関係を改善しながらコミュニティで安心して暮らせるようになる」という目標を掲げ、「元子ども兵社会復帰支援事業」に取り組んでいます。
テラ・ルネッサンスの帰還支援:かつての仲間の声が、帰還を後押し。
テラ・ルネッサンスは、ウガンダに帰還することができた元子ども兵たちを受け入れ、社会復帰のための支援を行ってきました。これまで251名の元子ども兵が社会復帰を果たしましたが、一方で、LRAに拘束されたまま、いまだ祖国に帰ることが出来ない元子ども兵たちもいます。
そこでテラ・ルネッサンスは、コンゴ民の現地NGOと協力し、コンゴ民や中央アフリカ共和国に残っているLRA兵士の動員解除と帰還を促してきました。ウガンダに残る家族を探し、彼ら彼女らが帰還した際の受け入れ体制を整えると同時に、「帰還後、ウガンダ政府軍に拘束されることなく、社会復帰する道筋が用意されていること」等々のメッセージ動画を送るなどして、元子ども兵の帰還を促進してきました。
ここで活躍してくれたのが、かつてテラ・ルネッサンスの社会復帰支援を受け、自立を果たした元子ども兵たちでした。隣国に残る元子ども兵たちにとって、ウガンダに戻っても仕事がなく、家族を養えないのではないか?地域のコミュニティに受け入れてもらえないのではないか?という不安が、帰還を渋る大きな理由のひとつでした。また、敵対してきたウガンダの政府軍や政府関係者の言葉は信用できないという思いがある中、かつての仲間であった、テラ・ルネッサンスの卒業生の言葉は、彼ら・彼女らの心を動かし、帰還を後押しすることになりました。そしてかつての仲間たちが地元の村々で仕事をして、生活を再建している姿を見て、希望を胸に社会復帰に向けた一歩を踏み出したのです。
目指すのは、元子ども兵の社会復帰、そして紛争の平和的解決へ
2024年3月18日、ウガンダ北部グル市内にある、テラ・ルネッサンスの社会復帰支援施設に、コンゴから帰還した58名の元子ども兵とその家族が集まり、社会復帰訓練のためのオリエンテーションが行われました。彼ら・彼女らは、これから洋裁や木工大工などの職業訓練や識字教育、心理社会支援などを通して、社会復帰に向けた一歩を踏み出します。
これまで、200名以上の元子ども兵が、テラ・ルネッサンスの社会復帰支援を受け、自立を果たしてきました。彼ら・彼女らの頑張りもあり、支援前は平均月収が128円でしたが、支援後は7,008円になり、現地の公務員とほぼ同等の水準になりました。また、地域の人々との関係も改善し、自尊心も向上し、過去のトラウマと向き合い、現在の自分を受け入れられる人々の割合が向上しました。
ウガンダで誘拐され、今もなお、隣国でLRAに拘束されている元子ども兵の正確な数は不明ですが、今回の帰還支援により2つの部隊が解体されました。残りの部隊は、リーダーのジョセフ・コニーとその家族や側近などが、隣国の南スーダン(ダルフール地方)などに潜伏していると言われています。アフリカで最も長く続いている紛争の一つであるLRA紛争が、今、終わりに近づきつつあります。
テラ・ルネッサンスは、同軍に拘束された全ての元子ども兵の社会復帰を目指しています。そして、子どもの徴兵が二度と起こらないように、LRA紛争の終結に向けて活動を続けていきます。
武力ではなく、対話によって、平和的に紛争を終結させるために、引き続き、様々な関係機関と連携・協働しながら、LRAに拘束されている元子ども兵の動員解除・社会復帰への取り組みを進めていきます。
担当者よりコメント
小川 真吾(テラ・ルネッサンス 理事・海外事業部長)
2005年のウガンダ事業立ち上げから、元子ども兵の社会復帰支援に携わってきましたが、今回のような大規模での帰還は初めてのことでした。しかも今回帰還した元子ども兵たちを説得したのが、私たちの支援を受けて社会復帰を果たした卒業生であることは、とてつもなく嬉しく、誇らしいことでした。こうした活動を地道に続けていけば、LRA紛争を終結させることができると、希望を抱いています。子どもが兵士になることのない、平和な世界の実現に向けて、これからも活動を続けていきます。
2024年6月に、元子ども兵社会復帰支援事業を担当する弊会の小川(理事・海外事業部長)がウガンダから帰国し、報告会などを予定しています。メルマガで随時お知らせ配信をしていますので、興味のある方はこちらからご登録ください。
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認定NPO法人テラ・ルネッサンスについて
「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」を目的に、2001年に鬼丸昌也によって設立。現在では、カンボジア、ラオスでの地雷や不発弾処理支援、地雷埋設地域の生活再建支援、ウガンダ、コンゴ、ブルンジでの元子ども兵の社会復帰支援を実施。また、日本国内では、平和教育(学校や企業向けの研修)や、岩手県大槌町で大槌刺し子を運営。2022年にはハンガリー、ウクライナにおける避難民への支援を開始。主な受賞歴:地球市民賞(独立行政法人国際交流基金)、社会貢献者表彰(公益財団法人社会貢献支援財団)、日経ソーシャルイニシアチブ国際 部門賞ファイナリスト(日本経済新聞社)、 第4回ジャパンSDGsアワード 副本部長(外務大臣)賞(外務省)、第52回毎日社会福祉顕彰(毎日新聞東京・大阪・西部社会事業団)、第1回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞「平和の部」(公益財団法人岩佐教育文化財団)、第18回西日本国際財団アジア未来大賞(公益財団法人西日本国際財団)、第10回エクセレントNPO課題解決力賞(エクセレントNPOを目指そう市民会議)、ほか多数。国連経済社会理事会特殊協議資格NGO。
名称:特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス
所在地:京都府京都市下京区五条高倉角堺町21番地jimukinoueda bldg. 403号室
理事長:吉田 真衣
設立:2001年10月31日(2014年5月30日より認定NPO法人)
事業内容:『地雷』『小型武器』『子ども兵』の課題に対するアジア・アフリカでの支援活動、および国内での『平和教育』を中心とした啓発活動 など
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