博報堂DYホールディングス、博報堂テクノロジーズ、松尾研究所、生成AIで広告表現を革新 ―「広告特化型LLM」共同開発―

博報堂DYホールディングス

株式会社博報堂DYホールディングス(東京都港区、代表取締役社長:水島正幸、以下博報堂DYホールディングス)、株式会社博報堂テクノロジーズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:米谷修、以下 博報堂テクノロジーズ)、株式会社松尾研究所(東京都文京区、代表取締役:川上登福、以下松尾研究所)は、共同開発を通じて、大規模言語モデル(LLM)を広告領域向けに高度化し、広告コピーの「多様性」と「品質」を同時に実現する自動生成技術を開発しました。従来の広告生成AIに比べ、より多彩な表現と高い説得力を兼ね備えたコピーを生成でき、広告制作の効率化とクリエイティブの質的向上を大きく促進します。

■研究の背景

博報堂DYグループは、広告・マーケティング領域において、「生活者視点に立った価値創出」を軸に、AIを活用した広告表現の革新に取り組んでいます。これまでもテクノロジーを活用して生活者インサイトを深く理解し、顧客企業のマーケティング活動を支援してきました。しかし、生成AIが広告制作の現場に浸透するにつれ、従来の汎用的なAIモデルでは表現が画一的になり、生活者に響く独自性のある企業のメッセージを届けることが難しいという課題が顕在化しています。

こうした状況を踏まえ、博報堂DYホールディングス、博報堂テクノロジーズ、松尾研究所は、それぞれの強みをいかして広告に特化したAIモデルを共同開発し、より多彩で人の心を動かす広告表現を生み出す新技術を確立しました。

各社の強みである、博報堂DYホールディングスのもつ長期間にわたり蓄積した生活者インサイトとマーケティング戦略の知見による総合的な視点、博報堂テクノロジーズのもつ広告領域特化のテクノロジー戦略や独自データ活用・ソリューション開発力による先端的広告表現の実現、松尾研究所のもつ東京大学 工学系研究科 松尾・岩澤研究室との連携による最先端AI技術の知見と豊富な産業界実装経験を生かしたモデル開発、それらを統合し、広告表現の多様性と品質を向上させ、AI活用による広告制作の革新を目指します。

■生成AIが直面する広告表現の課題

広告市場では、ターゲットを魅了するため、 オリジナリティあふれるアイデアや印象に残る新規キーワードを打ち出せるかが重要です。しかし、汎用LLMは過去の大量データをもとに「次に続きやすい単語」を予測する構造上、生成される文章も平均的で似通った文章に偏りやすい性質を有します。このため、従来の汎用LLMを利用した広告コピー生成モデルは、広告表示回数の多いビッグキーワードに対応した平均的な広告コピーを大量に生成する一方、表示回数の少ないニッチな表現やロングテールキーワードを反映した広告コピーの生成が困難で、画一的な文調になりがちという課題がありました。

■より多彩で人の心を動かす広告表現の開発

そこで、博報堂DYホールディングス、博報堂テクノロジーズ、松尾研究所は、広告ドメイン特化のLLM開発を共同で実施し、Meta社が開発したLlamaをベースに、Supervised Fine-Tuning(SFT) や RLHF(DPO手法) などの先端的アプローチを組み合わせ、広告表現の多様性とコピー品質を両立する新技術を確立しました。

本研究は、以下の技術的アプローチにより、リスティング広告のような短文コピーにも適した高品質・多様な生成を実現しています。

 1. Supervised Fine-Tuning(SFT)

  ・一般的な言語知識を備えたLlamaをベースに、広告特化のデータを用いて追加学習を実施。

  ・従来の汎用モデルでは難しかった広告ドメイン固有の文脈理解を強化。

 2. 人間のフィードバックを活用(RLHF、DPO手法)

  ・人間のフィードバックをもとに、より最適なコピーを生成するようモデルを強化。

 3. デコーディング戦略やセマンティックな後処理

  ・生成候補の比較を行い、最も効果的な表現を選択するアルゴリズムを採用。

 4. ペルソナ・カスタマージャーニーの導入

  ・消費者の属性や行動に合わせた広告コピーの自動生成を実現し、より効果的な訴求が可能。

■評価

生成された広告コピーの品質評価には、広告領域のベンチマークや実際の広告配信データを活用し、多角的に検証を行いました。これらの評価では、BLEU-4やROUGE-1等の品質指標でGPT-4oと同等水準を保ちながら、Distinct-NやHill numberといった多様性指標でより高い値を示すケースが確認されました。品質は社内にある過去のLPと広告例との対応、多様性はLPに対して複数生成した広告群に対して計測されます。一方で、生成時のパラメータ設定やプロンプト設計によって多様性と品質のバランスが変化することもわかっており、さらなる最適化の追求が今後の課題です。

●主な評価指標

  • Distinct-N(多様性スコア):ユニークなN-gramの割合

  • SELF-BLEU(類似度スコア):生成文同士の類似度を測定

  • BLEU / ROUGE / BERTScore:従来の言語モデル評価指標

注:表中の数値はGPT-4oのスコアを基準(=1.0000)としてノーマライズした結果である。太字は各評価指標において最も優れたスコアを示す。

■マーケティング活用でのメリット

今回の研究成果により広告制作コストが低減され、規模や予算に関係なく、あらゆる企業が生活者に響く高品質な広告を展開できる環境整備に貢献します。企業はより多様で魅力的な広告を効率的に制作し、生活者一人ひとりにとって有益で心に響く広告体験を届けることが可能になります。これにより、企業と生活者双方にとっての広告コミュニケーションの価値がさらに高まります。

■今後の展望

本共同開発で開発した広告コピー生成モジュールは、博報堂DYグループの統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」の広告文生成機能(CREATIVE BLOOM TEXT Ads)に導入を予定しています。同プラットフォームを通じて誰もが手軽に質の高い広告コピーを生成できる環境を提供します。

今回の共同開発で開発された広告コピー生成技術は生活者一人ひとりに寄り添った広告体験を生み出します。博報堂DYホールディングス、博報堂テクノロジーズ、松尾研究所は今後もテクノロジーとクリエイティビティを融合し、生成AIを活用した広告制作フロー全体の最適化などを通して、生活者が求める真に価値ある広告表現の実現に向けて、さらなる技術革新を推進してまいります。

♦参考文献・引用情報

  • Grattafiori, A., Dubey, A., Jauhri, A., Pandey, A., Kadian, A., Al-Dahle, A., ... & Vasic, P. (2024). The llama 3 herd of models. arXiv preprint arXiv:2407.21783.

  • Ouyang, L., Wu, J., Jiang, X., Almeida, D., Wainwright, C., Mishkin, P., ... & Lowe, R. (2022). Training language models to follow instructions with human feedback. Advances in neural information processing systems, 35, 27730-27744.

  • Li, J., Galley, M., Brockett, C., & GaoJ, D. B. (2016). A diversity-promoting objective function for neural conversation models. arXiv preprint arXiv 1510, 03055.

  • Zhu, Y., Lu, S., Zheng, L., Guo, J., Zhang, W., Wang, J., & Yu, Y. (2018, June). Texygen: A benchmarking platform for text generation models. In The 41st international ACM SIGIR conference on research & development in information retrieval (pp. 1097-1100).

博報堂DYホールディングスについて

博報堂、大広、読売広告社などを傘下に持つ、日本を代表する総合マーケティング・コミュニケーション企業グループです。「生活者発想」を基本理念に、広告・マーケティングの力で企業と社会の課題解決に取り組んでいます。

Webサイト:https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/

博報堂テクノロジーズについて

フルファネルマーケティング・生活者インターフェース市場・メディア・クリエイティブ領域をはじめとした各種テクノロジー戦略の立案・開発を行うテクノロジー戦略会社。博報堂DYグループの開発体制を集結し、体制強化・進化を目的として2022年4月に設立。

・会社名:株式会社博報堂テクノロジーズ

・所在地:東京都港区赤坂5丁目3番1号

・事業内容:博報堂DYグループ・得意先の課題解決に向けての各種テクノロジー戦略の立案・ 実施及び各種テクノロジー戦略のプロダクト・ソリューション・サービス開発。

 ・会社URL:https://www.hakuhodo-technologies.co.jp/

■松尾研究所について
株式会社松尾研究所は国立大学法人 東京大学 工学系研究科 松尾・岩澤研究室に伴走し、大学を中心としたイノベーションを生み出す「エコシステム」を作り、大きく発展させることを目的に設立された研究所です。松尾研究所は、アカデミアから生み出される研究成果・技術の「開発・実装」を行い、広く社会に普及を目指し、日本の産業競争力の向上に貢献しています。

■統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」について

博報堂DYホールディングス、新しい統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」を開発

博報堂DYホールディングス、博報堂テクノロジーズ 統合マーケティングプラットフォームBLOOMにて「CREATIVE BLOOM TEXT Ads」を提供開始

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会社概要

博報堂DYホールディングス

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URL
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区赤坂5-3-1 赤坂Bizタワー
電話番号
03-6441-8111
代表者名
水島正幸
上場
東証1部
資本金
101億円
設立
2003年10月