みんなのコード、次期学習指導要領での情報活用能力の抜本的向上に向けた提言を発表
― 子どもたちが“本当につくりたいものづくり”を実現する情報教育へ ―
特定非営利活動法人みんなのコード(神奈川県横浜市、代表理事:杉之原 明子、以下みんなのコード)は、「中央教育審議会 教育課程企画特別部会 情報・技術ワーキンググループに向けた提言 ー次期学習指導要領での情報活用能力の抜本的向上に向けてー」を発表します。本提言は、次期学習指導要領の議論に資するものとして、子どもたちが「本当につくりたいものづくり」を実現できる情報教育の姿を示しています。

2024年12月、文部科学大臣は中央教育審議会に「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」を諮問し、小中高等学校を通じた情報活用能力の抜本的向上を図る方策が検討事項となりました。また、2025年9月に教育課程企画特別部会が公表した「論点整理(案)」では、小学校における「情報の領域(仮称)」や、中学校における「情報・技術科(仮称)」の新設などが示され、今後、情報・技術ワーキンググループ(WG)で詳細な検討がされる予定です。
みんなのコードは、こうした国の議論に先立ち、2022年4月には「2030年代の情報教育のあり方についての提言」、2024年7月には「小・中・高等学校における情報教育の体系的な学習を目指したカリキュラムモデル案」を発表し、次期学習指導要領を見据えた検討を続けてきました。一連の提言の中には、
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小学校における、「情報を学ぶ時間」の新設
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中学校における、「技術・情報科」の新設 への再編
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高校における、必履修科目の増加など情報科の充実
といった内容を提議しており、現在の論点整理に示された方向性とも重なっています。
また、みんなのコードでは、各地域や学校と連携した実証研究を重ね、現場に根ざした取り組みを積み上げてきました。
これらの活動から得られた授業実践の際のポイントや留意点は、今後の国の教育政策をめぐる議論においても生かせるものであると考え、今回の提言を公表します。
提言資料:中央教育審議会 教育課程企画特別部会 情報・技術ワーキンググループに向けた提言 ー次期学習指導要領での情報活用能力の抜本的向上に向けてー
情報・技術ワーキンググループへの提言概要
「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」には、以下の記載があります。
生成 AI などデジタル技術の発展は、変化に伴う困難や負担を個人や社会に強いるだけではなく、多様な個人の思いや願い、意志を具現化し得るチャンスを生み出している側面もあります。生産年齢人口が急減する中、テクノロジーを含むあらゆる資源を総動員して、全ての子供が多様で豊かな可能性を開花できるようにすることが、我が国の未来のために不可欠です。
2030年代の情報教育について、諮問文ではデジタル技術の発展がもたらす「多様な個人の思いや願い、意志を具現化し得るチャンス」があると示されています。しかし、子どもたちがそのチャンスを掴むためには「情報・技術は自分の道具で、今後新しい技術が出てきても活用できる」という信念が必要となります。そのために、自分の興味関心に基づいて、心からつくりたいと思う「ものをつくる体験」が不可欠です。そのような体験を繰り返すことが、情報技術の発展による「チャンス」を掴む基盤となるのではないでしょうか。
一方、実際には「大人がつくらせたいものづくり」に終始してしまっている例も珍しくありません。情報・技術WGでは、「子どもたちが本当につくりたいものづくり」の実現に向けた議論に期待します。
関連して、次の観点についても検討が不可欠であると考えます。
生成AIなどの新技術への対応
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生成AIが社会に与える影響を考慮し、AIリテラシーをリスクと活用の両面から捉えた学習指導要領への明確な位置付け
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技術の進展に柔軟に対応できるよう、タイムリーな学習指導要領の改訂
多様性包摂・DE&I
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多様な背景をもつ子どもたちにとって魅力的な活動の例示などの工夫
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教科書・教材作成など、改訂後も多様性包摂・DE&Iの観点が重視されるような検討
※ その際、全ての委員が多様性包摂・DE&Iの視点をもつこと
小・中・高を通じた、体系的な情報教育の実現
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情報教育の特性を生かした活動を通じて、卒業時に身につけたい資質・能力
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小学校における情報技術の「特性の理解」など、新たに加える内容等が実践につながるための工夫
これまでの提言・調査研究活動
みんなのコードは、小・中・高を通じた体系的・継続的な情報活用能力を育成する枠組みが必要であると考え、以下のアクションを行ってきました。
提言
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2022年4月「2030年代の情報教育のあり方についての提言」
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2023年4月「生成AIの初等中等教育でのガイドライン策定に向けた提言」
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2023年7月 「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」への見解
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2023年8月「2030年代の情報教育カリキュラムモデルを提案予定〜小学校・中学校・高校の学びを接続〜」
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2024年3月「小・中・高等学校における情報教育の体系的な学習を目指したカリキュラムモデル基本方針」
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2024年7月 「小・中・高等学校における情報教育の体系的な学習を目指したカリキュラムモデル案」
調査研究
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2021年4月「2020年度「コンピュータサイエンス教育」の カリキュラム開発に向けての実証研究」(宮城教育大学附属小学校と共同)
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2021年12月 「プログラミング教育 実態調査報告書」
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2022年4月 「2021年度「コンピュータサイエンス教育」の カリキュラム開発に向けての実証研究」 (宮城教育大学附属小学校と共同)
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2022年6月「日本国内の大学における情報系学部・学科の実態調査」
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2022年6月 「2021年度 教育課程特例校「NAiSUタイム」で取り組む特色ある教科づくりとプログラミング教育」(栃木県那須町と共同)
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2023年4月「2022年度「コンピュータサイエンス教育」の カリキュラム開発に向けての実証研究」(宮城教育大学附属小学校と共同)
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2023年8月「2022年度 プログラミング教育・高校「情報Ⅰ」実態調査」
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2023年10月 「教育課程・授業時数特例校制度で取り組む特色ある情報・テクノロジー教育事例について」(栃木県那須町と共同)
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2024年3月「千葉県印西市立・原山小学校における新たな学び「情報探究の時間」実践報告」(千葉県印西市立原山小学校と共同)
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2024年5月「2023年度「生成AI100校プロジェクト」実践報告」
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2025年7月「小学校女性教員向けプログラミング教育研修プログラム「SteP」実践と課題」
みんなのコード 理事会長 利根川裕太コメント
みんなのコードは「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」とのビジョンを掲げて活動していますが、2020年からの現行指導要領においても情報活用能力の体系的な育成に課題を予てから感じてきました。今回の中央教育審議会への諮問、その後の特別部会での「情報活用能力育成の抜本的向上」に向けては良い議論が進んでいると認識しています。今後始まる情報・技術ワーキンググループにおいても「抜本的向上」の実現に向けて良い指導要領の議論がなされることを期待し、議論に協力していきたいと思っています。
みんなのコードは、引き続き、全国各地の小中高との情報教育における研究、および関係者との議論を深め、情報教育のより良い仕組み作りを進めてまいります。
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