【開催レポート】700名の教育関係者に向け「子どもたちの可能性を広げるインクルーシブ教育の力」をテーマに講演
”現役アスリート”と”DE&Iを推進する管理職”二刀流のキャリアで生きる山本恵理が「試行錯誤をする過程の大切さ」を伝える
公益財団法人日本財団パラスポーツサポートセンター(以下「パラサポ」、所在地:東京都港区、会長:山脇康)DE&Iプログラム推進部ディレクターの山本恵理が、5月17日、長野県の飯田文化会館で開催された下伊那教育会総集会にて「パラスポーツを通じて気づくー子どもたちの可能性を広げるインクルーシブ教育の力ー」をテーマに講演を行いました。
先天性の二分脊椎症により生まれつき足が不自由な当事者として、また現役のパラ・パワーリフティング選手であるパラアスリートの視点も交え、約700名の教職員や教育関係者に向けて多様な価値観を受け止め子どもたちの可能性を広げることの大切さを伝えました。



「先生方は日ごろから道徳の授業などで子どもたちと考えていると思いますが、『障がい』とは何だと思いますか」という山本講師の問いかけに、「人と人の間の壁」「段差や階段」「個性」「(山本講師は)むしろ長所ととらえているのではないか」など様々なコメントがあがりました。
「足が動かないこと、車いすに乗っていることは私にとっては障がいではありません。私が障がいだと感じるのは、皆さんにある『選択肢』が私にはない、『選択肢』が限られていると思った時です」と語る山本講師。


神戸市出身の山本講師が小学6年生の時の阪神・淡路大震災後の被災地を巡る校外学習でのエピソードを紹介。山本がグループのリーダーになり、みんなが行きたいところ、行けそうなところを考えていたところ、3日前に先生から「同行できる先生がいないので、山本さんは車でみんなが集まる場所に移動して待っていよう」と言われたことに対して、自分がどうしたかを紹介。母親からのアドバイスもあり、グループで一緒にまわるために何かできることはないかを先生に相談。校長先生なら時間が空いているのではないかと「一緒に行ってくれませんか」とお願いし、校長先生と一緒に無事に被災地巡りをすることできたこと、母親に背中を押してもらって思い切って先生に相談してみてよかったと思ったこと、そして今でも先生方には「ありがとうございました」の気持ちでいることを伝えました。
「自分がやりたい目的、どうなったらいいと思うかを相手に共有すること、それに対してお互いが選択肢を提示することも大切だと思います。小学生だった私がアスリートになるとか、このようにたくさんの皆さんの前で講演をするとは、当時はだれも想像できなかったと思います。ですが、こんな風にいろいろなことに挑戦できる今の私があるのは、学校が、先生方がいてくれたからです。先生方はいろいろな教え方、工夫をいっぱいお持ちのはずです。そしてすでに学校はインクルーシブなのだと思います。
インクルーシブ教育はこうすれば正解という、数学のように答えは出ない。だから試行錯誤をするという過程がとっても大切なのだと思います。私が先生と話し合える、私が友達と話し合える、クラスで話し合える。摩擦や議論が起きても、最後にみんなでこうしたらいいねって、みんなが納得する着地点にどうやったら行きつけるかなって。皆さんの持っているものを共有し合い、一方通行でなく、児童生徒と先生方、お互いに『選択肢』を増やしていく、コミュニケーションと試行錯誤をしていくことが、さらにインクルーシブ教育につながるのではないでしょうか」と伝え講演を終了しました。
講演後の質疑応答
Q:自分の強みを見つけるために、今までどんなアドバイスをしてきましたか?
山本:私の場合は、自分の苦手から強みを見出しました。苦手なことって何なんだろうと因数分解して、そこから自分が何ができて、何がしたいんだろうと考える、苦手と強みは紙一重なのだとお話ししています。
Q:山本さん自身が、だれかの選択肢になるために心がけているようなことがありますか?
山本:できないって答えるのが嫌なので、どうやったらできるかなという姿勢で、まず相手の話を聞くようにし、自分だったら何ができるかを相手に提示するようにしています。また、先入観を持たずにとも思うのですが、アンコンシャスバイアスをなくすことは難しいと思うので、自分はもしかしたらいろんな固定概念や先入観を持っているかもと思いながら、話を聞くようにしたいと思っています。
講演を聞いた先生方の感想
<小学校の校長先生>
おそらく今日、会場にいた人たちはただ漠然と聞いていたのではなく、それぞれ受け持っている子どもたちのことを思い浮かべながら、子どもたちにとって選択肢になるって?と常に頭において山本さんの講演を聞いていたんだろうと思います。
一番印象に残った言葉は「i enjoy !」ですね。この講演の中でも試行錯誤という話もありましたが、これが私たちにとっては苦しい時もあるんです。でも苦しいではなく、「こんな選択肢を広げることをやってみたらどうかな」「やってみたらうまくいった!」「先生たち、これやったらよかったよ!」と、教師のやりがいだとか生きがいにつながっていくといいなと思いました。
「選択肢」については、そういう考え方があるんだなと。それはだめだよと選択肢を広げるとは反対の方向に考え方がなってしまう時もあるけれど、選択肢を広げてあげるという言葉には、なるほどと思いました。子どもたちの選択肢を広げていくという視点でやっていきましょうと、先生たちとも話したいと思いました。
インクルーシブ教育というと、ハード的な部分や教育課程的な部分などと思ってしまっていたこともあったのですが、今日の選択肢を広げるという話は、インクルーシブの原点というか、あしたからできる、だれでもできる、新たな視点でお話をしていただいたなと感じています。
<中学校1年生の担任の先生>
学年の始めに、“苦手なことはやらないではなく、まずやってみよう”という目標を立てましたが、生徒が苦手なことができない、めんどくさいなどと言うと、まるで上からのように「そういうことは言わない方がいいよ」と言っていました。
でも今日の講演を聞いて、できないことをどうやったらできるか一緒に考えてあげればよかったと思いました。まだ手遅れではないので、どうやったらできるか、何が必要なのかということを一緒に考えて、山本さんが「i enjoy !」自分自身が楽しむことも大切と言っていたように、考える過程も楽しんでいきたいと思います。
一番、心に残っている言葉は「あなたがだれかの選択肢になること」。
助けてもらいたければ、助けてあげたいと思われる人になる、自分が助けたいって思う人ってどんな人かな、と子どもたちと考えていきたいなと思いました。
誰かに支えられているなと思うと、自然と自分もだれかを支えたいなと思うので、支える支えられるというその関係を、自分のクラスの中でも作っていきたいなと感じました。
自分が初めて学級担任を持ったということもあり、子どもたちの前だから、自分が大人だからしっかりやらなきゃ、と思っていたのですが、もっと子どもたちにも頼っていいんだ、みんながそれぞれもっている良さや苦手なこともあって、それは子どもたちも一緒だし、自分も一緒。だからこそ、自分が苦手なことは子どもたちに「これお願いしてもいい?」と頼ってもいいんだなと思えました。
今回の「あすチャレ!メッセンジャー」講演について

今回は、スピーチトレーニングを経て、伝えるスキルを体得したパラアスリートを中心とした講師を講演テーマや目的にあわせご紹介するパラサポのプログラム「あすチャレ!メッセンジャー」の認定講師・山本恵理が下伊那教育会の依頼を受け講演を行いました。
「あすチャレ!メッセンジャー」では、学校の授業やDE&I教育、企業・自治体におけるDE&I推進やさまざまな研修などにおいて、希望の認定講師に依頼することができ、講演内容も相談可能。
目的・ニーズに沿った最適な認定講師のご紹介を行います。
<講師紹介>
山本 恵理/やまもと えり
兵庫県神戸市出身
パラリンピック出場を目指すパラ・パワーリフティング選手
日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)DE&Iプログラム推進部ディレクターとして、これまで58万人以上が参加したDE&I教育研修プログラム「あすチャレ!」、学校の運動会を通じてインクルーシブ教育を推進する「パラサポ!インクルーシブ運動会」のプログラムの企画・講師業務、講演会などを行いながら、国内外の試合に出場中。
日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)について
日本財団の支援を受け2015年5月に活動を開始した日本財団パラスポーツサポートセンター*(パラサポ)は、運営基盤に課題があったパラリンピック競技団体の持続可能な運営体制構築のため、2015年11月、競技団体・関係団体との共同オフィスをオープンしました。
また安定した団体運営に欠かせない事務局人件費、競技人口を増やす活動を行うための普及啓発費、広報・マーケティング費等の助成金をはじめ、会計・翻訳など共通する業務を集約し効率的な団体運営を推進する「シェアードサービス」の提供により基盤強化に取り組んでいます。
2018年6月には、パラアスリートの練習環境向上、普及啓発イベント実施などを目的とした「日本財団パラアリーナ」をオープン、これまでに延べ6.8万人を超えるパラアスリートが活用しています。


パラアスリートを中心とした講師が行う小・中・高・特別支援学校向けの教育プログラム、企業・団体・自治体・大学等向けの研修プログラム「あすチャレ!」は、2016年度から2025年3月末までに国内外で約5,600回開催、子どもから大人まで58万人以上が参加しています。
10年目となる2025年度は、株式会社JTB、株式会社アシックス、日本電気株式会社(NEC)、日本航空株式会社(JAL)、中外製薬株式会社の協賛5社の皆さんと協力しながら 、全国で年間900回以上の開催を目指しています。
また2024年4月には学校の運動会にインクルーシブな種目「車いすリレー」と「ソーラン節」を導入し、インクルーシブ教育推進の機会を提供する新プログラム「パラサポ!インクルーシブ運動会」をスタートしました。
先生と児童が運動会の本番までに数回の練習を重ねる中で、障がいの有無にかかわらず、誰もが参加でき楽しめる運動会をみんなで考える、そのプロセスがインクルーシブな考え方や大切さを知ることにつながり、運動会当日は練習した成果を保護者や地域の皆さん、自治体の関係者などが観戦することで、地域全体で共生社会を考えるきっかけとなります。


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