生物多様性条約締約国会議(COP17)の開催に合わせ各国政府の持続可能な漁業に関 する公約の分析を発表
測定可能で政策的根拠のある公約はわずか13%、海洋生物多様性の保全には不十分
MSC(海洋管理協議会)がWRI(世界資源研究所)とともに「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」に基づく各国の公約を新たに分析した結果、海洋の生物多様性を守るためには、沿岸国政府が持続可能な漁業を支える、より強固で測定可能な公約を掲げる必要があることがわかりました。
調査チームは、73の沿岸国*が掲げた公約に加え、欧州連合(EU)の共同公約を分析しました。いずれも漁業に関する公約が少なくとも1件含まれ、合計で812件に上りました。このうち、測定可能な指標または期限を含むものは60%、既存の政策、法的文書、ガバナンスの仕組みに直接言及するものは27%で、その両方を満たすものはわずか13%でした。
生物多様性条約締約国会議(COP17)は、生物多様性の保全を目的とする国連条約に参加する各国政府の会合で、10月19日(月)にアルメニアのエレバンで開幕します。2022年の同会議(COP15)では、各国が2030年までに生物多様性を保全・回復するための複数の目標を定めたGBFに合意しました。環境に配慮した持続可能な漁業を対象とするMSC漁業認証規格は、世界の生物多様性の深刻な減少を食い止め、回復させる取り組みを科学的に測定する方法として、同条約で認められています。
各国は、GBFの目標をどのように達成するかを示す「生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAP)」の策定を進めてきました。しかし、沿岸国のおよそ半数は、更新した最終計画をまだ提出していません。**
MSCの主任研究員マイク・メルニチャックは、次のように述べています。「新たなGBFと、その実施に向けて各国政府が掲げる公約は、今後長年にわたり、生物多様性の損失を食い止め、回復へと転じる取り組みの方向性を左右します。海洋生物多様性の損失に対処するうえで、持続可能な漁業の重要性がほぼすべての国で認識されていることを心強く思います。今後、各国政府には、政策、法規制、行動計画に裏づけられた具体的な目標と期限を公約に盛り込み、意志を行動へと移すことが求められます」
WRI海洋プログラム・グローバルディレクターのトム・ピッカレル博士は、次のようにコメントしています。「COP17は、海洋に関する議論を、特に注目を集めがちな海洋保護区(MPA)や『30by30』目標といった区域に基づく保全措置だけにとどめず、さらに広げていける機会です。これらの取り組みが極めて重要であることに変わりはありませんが、今回の調査は、海洋のどれだけの区域を保全するかだけでなく、生物多様性に関する取り組みの成果を持続的にもたらすために、海洋全体をいかに効率的に管理するかにも目を向ける必要があることを示しています」
測定可能な公約の例として、ポルトガルは、定期的な評価や技術革新、漁業慣行の改善を通じ、漁業がほかの海洋生物に及ぼす影響を軽減・緩和する仕組みを整えるとしています。達成度は、混獲の削減率で測定されます。
一部の公約では、生物多様性喪失への解決策として持続可能な漁業の役割に言及しています。日本は「水産資源調査・評価の充実・精度向上」に関する公約の中に、資源評価対象魚種の順次拡大や当該魚種の調査開始を含めており、これらについては既に着手しています。また、2030年までに「海洋環境の変動等による水産資源への影響を調査し資源変動メカニズム及び中・長期的な資源動向を究明する取組や、漁場形成及び漁獲状況等をリアルタイムに把握する取組等を支援する」という公約も含まれています。
今回の分析で明らかになった最も大きな課題の一つは、漁獲圧を左右する経済的要因への言及が限られていることです。経済、市場、サプライチェーンに触れた公約はわずか10%でした。例えばベルギーは、経済的、財政的、金融的インセンティブのいっそうの開発と活用を促進するとしています。
MSCが委託し、調査分析機関のグローブスキャン(GlobeScan)が2026年初めに世界の水産物消費者2万人超を対象に実施した調査では、59%が海洋保全の責任は政府にあると回答した一方、政府が海洋保全に十分貢献していると考える人は26%にとどまりました。日本はそれぞれ67%、19%で、政府に責任があると考える人がより多く、取り組みへの評価はより低い結果となっています。
持続可能な漁業は、人々の生計を守り、健康的かつ生産時の二酸化炭素の排出も少ないという重要な食料源を確保しながら、生物多様性の損失に対処できる有効性が実証された手段です。各国政府は、公約の実効性を最大限に高めるため、具体的な目標、期限、基準値、実施主体を明確にするとともに、漁業関連法や管理計画、資金計画に公約を組み込む必要があります。
注記:
*本調査では、更新版NBSAPの提出が義務づけられている沿岸国および島嶼国154締約主体(EUを含む)のうち、74件の更新版NBSAPに記載された漁業関連の公約812件を分析しました。測定可能性、政策的根拠、テーマの幅、GBF目標との整合性を評価しています。
**アメリカは、生物多様性の保全を目的とする同条約を批准していない唯一の沿岸国です。
WRI(世界資源研究所)について
人々の暮らしの向上、自然環境の保全・回復、気候の安定化に取り組む独立系研究機関です。データ、専門知識、世界規模のネットワークを生かし、食料、陸地、水、エネルギー、海洋、都市などのシステムにおける政策形成に影響を与え、変革を促進しています。2,000人を超える職員が十数カ国の重点国で活動し、50カ国以上のパートナーと連携しています。
MSC(海洋管理協議会)について
将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際的な非営利団体です。本部をロンドンとし1997年に設立され、現在は25カ国に事務所を置き世界中で活動しています。MSCジャパンは2007年に設立。MSC「海のエコラベル」の付いた製品は、2025年度には世界70カ国以上で約22,000品目、日本では約660品目が販売されました。国内ではイオングループ、生協・コープ、イトーヨーカドー・ヨーク、マクドナルド、ロイヤルホストなどで購入・注文できます。
持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC漁業認証規格は世界で広く認知されており、最新の科学的根拠に基づき策定されたものです。FAO(国連食糧農業機関)とISEAL(国際社会環境認定表示連合)双方の要求事項を満たした世界で唯一の漁業認証制度でもあります。漁業がこの規格を満たすためには、(1)水産資源が持続可能なレベルにあり、(2)漁業による環境への負荷が最小限に抑えられており、(3)長期的な持続可能性を確実なものにする管理システムが機能していることを、第三者審査機関による審査を通じて実証することが求められます。
詳しくはMSCウェブサイトをご覧ください:https://www.msc.org/jp
MSC「海のエコラベル」について
環境の持続可能性に関するMSCの基準を満たしていると認められた漁業で獲られた水産物の証、それがMSC「海のエコラベル」です。

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