ぷらっとホームが農水省採択の日本酒輸出増モデル実証事業でWeb3で現実資産(RWA:Real World Asset)を記述する新しいトークン「ThingsToken ™ 」 を実証投入
1.日本酒輸出増プラットフォームモデル実証プロジェクト
ぷらっとホームは、国内地域産日本酒の輸出拡大を図るためのWeb3技術を活用した日本酒輸出増実証プロジェクトで、Web3の新しいトークン「ThingsToken ™ 」を実証投入しました。
ThingsToken ™ が投入されたのは「日本酒輸出増プラットフォームモデル実証プロジェクト」(以下プロジェクト)が2023年11月から12月にかけて行ったシンガポール向け第1回実証輸出です。
プロジェクトは、近年世界的な需要が高まっている地域産日本酒の輸出に適した新しい輸出物流のモデル構築を行う実証事業としてスタートし、国内の酒造元をはじめ、損害保険会社、IT関連事業者、物流サービス会社、素材メーカーなど、業界を横断した各領域の専門企業と専門家が参加しています。プロジェクトは、共同配送や輸出ルートの研究・検討・システム設計を行い、Web3技術を用いた新しい輸出物流プラットフォームのモデル構築を行っています。
また、プロジェクトは令和5年度農林水産物・食品輸出促進緊急対策事業のうち輸出物流構築緊急対策事業(令和4年度補正)における補助事業に採択されています。 (*)
(*) 詳細につきましては、2023年7月20日「国内地域産日本酒の輸出拡大を図るためのWeb3技術を活用した日本酒輸出増実証プロジェクトの開始について」をご参照ください。
2.シンガポール向け輸出実証の概要
シンガポール向け輸出実証は、参加蔵元である秋田県の酒蔵会社への現地調査および、輸出地調査(物流、商流の実態調査、料飲店を中心とした販路開拓)を経て以下の日程で行われました。
シンガボール向け実証輸出日程
12月7日各蔵元から出荷
12月13日シンガポールへ空輸
12月13日シンガポール倉庫入庫
12月18日倉庫にてQRコードスキャンとセンサーの回収
シンガポール市場と輸出の課題:
シンガポールには日系飲食店や小売店が数多く進出しており、すでに多種多様な日本酒が市場に流通しています。多数の日本酒銘柄の中で売り上げを伸ばすためには各酒蔵による戦略および営業活動が重要ですが、従来、輸出後の自社商品の流通経路や販売実績についてはほとんど情報を得ることができませんでした。
また、輸出において複数の関係者(輸出商社、輸入業者、問屋、料飲店、小売店等)を経由する長いサプライチェーンを経るため、近年特に需要の高い純米酒・純米大吟醸酒などの高級日本酒については、輸送や保管中の温度管理や在庫管理が不透明でした。
輸出実証における輸出課題へのアプローチ:
今回実施されたシンガポール向け輸出実証では、実際に国内3社の酒造元の日本酒製品を取りまとめる形で、輸入商社、料飲店、小売店等の販売ルートから合計180本(酒造元3社合計)の実注文を受けて輸出が行われました。
一連の輸出物流プロセスの進化と課題解決を目指し、従来より存在する物流サービスへ、近年発展の著しいIoT・IT技術、さらに新しいインターネット技術であるWeb3(ブロックチェーン)技術を組み合わせて活用することで、あたらしい輸出物流モデルの構築と検証を行っています。
3.ThingsToken ™ の役割
輸出における製品品質の把握のため、日本酒を各個品ごとに識別し、個品毎に品質の管理やトレースを実現できることが重要となります。このため、輸出用の日本酒についてWeb3(ブロックチェーン)の技術を利用することで製品を個品単位で管理・追跡できる仕組みを導入しました。
実証では、代替不可能なトークンの一種であるThingsToken ™ を、コンソーシアム型のブロックチェーン上に発行し、IDを持つ温度検知QRコードラベル(日立ソリューションズ)を酒瓶に貼付し個品識別のアンカーポイントとして利用することで製品の個品識別を実現しました。
また、連続的温度追跡については、コールドチェーンの各物流ポイントで温度検知QRコードラベルをスキャンすることで、温度情報と位置情報を取得しました。これにより、個品単位での温度管理、位置情報の追跡を実現しました。
また、超薄型・小型リチウムイオン二次電池「EnerCera®(エナセラ)」(日本ガイシ)によって電力供給される温度ロガー機能をもつフレキシブルセンサータグ(イノラックスジャパン)と、グローバルな通信機能をもつ4Gロガー(三菱倉庫)を併用することで、輸出梱包のケースや、パレットについて輸送中の温度データを取得する仕組みを構築しました。
4.システム詳細
詳細
1.ThingsToken ™ による個品単位での識別
代替不可能なトークンの一種であるThingsToken ™ の実装系の1つとしてコンソーシアム型のブロックチェーン基盤上に製品を仮想化するThingsToken™ を発行し、IDを持つ温度検知QRコードラベルを酒瓶に貼付して紐付けることにより、個品単位での識別を実現した。
2.製品トレーサビリティ
ThingsToken ™ により 製造段階から、流通、最終需要家到着までの個品トレーサビリティにより製品の品質を透明化する。
分散台帳システム(ブロックチェーン)基盤上のThingsToken ™ によって製造段階から、流通、最終需要家到着までの個品単位のトレーサビリティが可能となった。加えて、複数のセンシング技術により多面的な角度での個品のトレーサビリティを実現している。具体的には、
1)酒瓶単位での温度検知QRコードラベルの活用、
2)スマートフォンによるスキャンでの温度と位置情報の取得、
3)パッケージ単位でフレキシブルセンサータグを設置し温度湿度を取得、
4)パレット単位での4Gロガー設置による位置情報と温度等の取得を行った。シンガポールへの輸出実証では1)〜3)により温度環境が問題なく輸送されていたことが確認できた。一方、4)4Gロガーに関してはデータがサーバから取得できなかった。
3.温度検知QRコードラベルによる温度管理、位置情報の追跡
各物流ポイントでの温度検知QRコードラベルのスキャンによる温度情報と位置情報の取得により、個品単位での温度管理、位置情報の追跡が可能となった。
また、温度検知QRコードラベルを起点とし、輸送中のケース(段ボールパッケージ)や、パレット(複数のケース=段ボールパッケージ)をまとめてパレット梱包したものについて、それぞれ異なるセンサーを同梱し、輸送中の温度データを取得する仕組みを構築した。
シンガポールへの輸出では酒造元、シンガポール輸入業者倉庫、料飲店でのスキャンを実施し各スキャンポイントでの温度、位置情報を取得した。
効果
1.ThingsToken ™ による個品のトレーサビリティ実現
ブロックチェーン上のThingsToken ™ によって個品単位での管理・追跡が可能となったことにより、製造段階から、流通、最終需要家到着までの個品のトレーサビリティが可能となった。
酒造元での製造を終え、酒造元より製品出荷される日本酒は、国内の輸送物流会社を経由し、日本国内の輸出者の倉庫へ入庫する。(実証では、倉庫入庫前に酒造元3社の製品をまとめて輸出梱包する作業も発生する。)その後、航空輸送あるいは海上輸送にて、仕向け地へ向け商品が送り出される。商品は輸入地で到着後、輸入者の倉庫へ運び込まれ、その後、流通ルート(料飲店等)を経て最終需要家で消費される。
本実証においては、日本酒の各瓶へ個品ラベル(温度検知QRコードラベル)を張り付けることにより、本ラベルを起点として、全流通行程を通じて製品トレースが可能である状態が実現できた。
2.温度検知QRコードラベル・フレキシブルセンタータグ・4Gロガーによる多面的なトレーサビリティの実現
製品の日本酒各瓶に張り付けられた温度検知QRコードラベルには、QRコードとともに、温度逸脱検知インクを使用した温度逸脱を検知するセンサーとして、識別ポイント(黒丸)が印刷されている。この識別ポイント(=黒丸)は、製品温度が、逸脱を検知したい温度(今回の場合は、摂氏20度および、摂氏30度のインクを使用)を超えた場合には色が赤く変化する(黒丸が赤丸へ色変化)。この機能により、流通の各段階で、目視での温度逸脱の検知を可能とした。
本実証においては、酒瓶単位での温度検知QRコードラベルのスマートフォンによるスキャンでの温度と位置情報の取得、パッケージ単位でのフレキシブルセンサータグを設置することによる温度情報の取得により、多面的な角度での個品のトレーサビリティを実現できた。
データ
1.フレキシブルセンサータグ温度データ
2.温度検知QRコードラベルのデータの取得とデータベースへの書き込みの証跡
3.Webシステムのスキャン実施情報(スキャン日時、色判定、位置情報)
5.今後
1.ニュージーランド・米国・英国の特徴を反映した流通
輸出における流通を検討する際には、国、地域ごとに特徴が異なるため、それぞれの特徴を反映した上で解決策を策定していくことが重要である。今後、シンガポールに引き続き、実証対象国であるニュージーランド、米国、英国については各国の実情に合わせたモデルで物流、商流の課題点を探っていく予定である。
2.酒造元、卸売業者、現地営業が連携する情報基盤としてのアプリケーション開発
現地調査により、シンガポールおよび東南アジアにおいて輸出を促進するためには酒造元を支援する営業担当者を採用し、現地での営業活動を効率的に推進するための酒蔵からの情報提供、営業担当者から酒蔵に対して行う現地情報のフィードバック、さらに個品管理技術で商品流通を可視化し、関係者間で共有することが有用であるとの洞察が得られた。この結果に基づき、酒造元、卸売業者、現地営業が連携するための情報基盤としてのアプリケーション開発を予定している。
3.ブロックチェーン実装
シンガポールに続く、ニュージーランド、英国、米国の輸出については現在の仕組みを修正したもので対応を検討している。今回初めて実証投入したWeb3のトークンシステム「ThingsToken ™ 」は代替不可能なトークンの一種であり、現実資産(RWA:Real World Asset)をブロックチェーンのトークンとして記述可能にしたものである。ThingsToken ™の実装系は各種想定され、現実証プロジェクトとしては閉域型で閉じたチェーン(コンソーシアムチェーン)上で展開されているが、 最終的にはWeb3の普及による新しいインターネットの構成要素の一つとして、公開型で開かれたチェーン(パブリックブロックチェーン)上での展開を行う予定であり、各種法令・ルールへの準拠の上でその実装を行う予定である。
用語
Web3 (ウエブスリー)
Web3 は次世代のインターネット技術として提唱されている概念で、分散化・ブロックチェーン・トークンベース経済などが取り入れられている。
RWA(Real World Asset)
リアルワールドアセット「現実世界の資産」。狭義には不動産や株式、債権、コモディティ資産(金、石油等)や、美術品などの資産を意味し、あるいはそれら資産についての権利や関係を記述したトークンのこと。(例:証券トークン =Security Token などの金融系トークン) 広義には、金融系資産を含まないより広義のリアルワールドアセット、例えば、「物」(モノ)や「設備」、「部品(コンポーネント)」も意味し、あるいはそれら資産についての権利や関係を記述したトークンのこと。(例:ThingsToken ™ )
ThingsToken ™ について
ThingsToken ™は、現実世界の資産をブロックチェーン上に仮想化できるトークンシステム及びその技術です。現実世界の資産(RWA: Real World Asset)のモノや設備・デバイス群を仮想化することで、Web2の世界をWeb3の世界へ結び付け、現実資産に関連したトークンエコノミクスを加速します。
ThingsToken ™ はぷらっとホーム株式会社の登録商標です。
関連リンク
国内地域産日本酒の輸出拡大を図るためのWeb3技術を活用した日本酒輸出増実証プロジェクトの開始について(2023/7/20)
https://www.plathome.co.jp/wp-content/uploads/20230720-nihonshu.pdf
ぷらっとホームについて
ぷらっとホームはマイクロサーバー・IoTゲートウェイの開発製造メーカーです。1993年の創業よりLinuxサーバーのパイオニアとして、通信やネットワーク分野に自社製サーバーを供給してきました。代表的な製品である超小型Linuxサーバー「OpenBlocks®」は、大手通信事業者をはじめ、物流、輸送、金融、エネルギー産業、官公庁など日本の社会インフラを支える様々な領域で採用されており、成長しつつあるIoTの分野でもLinuxサーバーをベースとした当社のIoTゲートウェイは主要産業で幅広く利用されています。
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