静岡で生まれた「命を守るカルタ」がカンボジアへ――雨季の洪水と向き合う子どもたちに防災授業

ふじのくに未来財団「静岡トヨタ自動車 ハイブリッド基金」助成事業。ルワンダに続く海外実践として、学校と地域で「遊びながら命を守る」学びを展開

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト

 特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(千葉県松戸市、代表:中村雄一)は、2026年8月26日および28日、カンボジア王国シェムリアップ州の学校と地域において、「PEACE 防災カルタ」を活用した防災教育を実施しました。

 今回使用したカルタには、2026年7月18日に浜松市、19日に静岡市で開催した「PEACE 防災カルタ2026」において、静岡県の高校生、小学生、留学生、外国籍ルーツを持つ市民、地域住民が制作した札が含まれています。

 本事業は、公益財団法人ふじのくに未来財団「静岡トヨタ自動車 ハイブリッド基金」の助成を受けて実施しています。

 静岡で生まれた防災の知恵は、8月11日にアフリカ・ルワンダ共和国Miyove地区で活用された後、カンボジアへと渡りました。同じカルタであっても、ルワンダとカンボジアでは地形も、災害の起こり方も、生活環境も異なります。

 なかよし学園は、日本の防災知識をそのまま教えるのではなく、カルタをきっかけに、現地の子どもたちが「自分たちの地域では何が起こるのか」「そのとき、どう行動すれば命を守れるのか」を考える授業を行いました。

防災カルタを遊びながら防災を学ぶカンボジアの生徒たち

約220万人の子どもが河川洪水の高リスク地域で暮らすカンボジア

 カンボジアでは、雨季になるとメコン川やトンレサップ湖、その支流の水位が上昇し、各地で洪水が発生します。

 水は農業や漁業を支え、人々の暮らしに豊かさをもたらす一方、雨量や河川水位によっては、住宅、農地、道路、学校、保健施設などに大きな被害を与えます。道路が冠水すれば、子どもたちは学校へ通うことができません。安全な飲料水や衛生設備が確保できなくなれば、感染症のリスクも高まります。

 UNICEFカンボジア事務所が公表する「Children’s Climate Risk Index for Cambodia」によると、カンボジアでは約220万人、国内の子どもの約半数が、河川洪水への曝露が「高い」または「非常に高い」とされる地域で暮らしています。また、約190万人の子どもが、気候変動によるリスクが高い、または非常に高いコミューンで生活しています。

参考:UNICEF Cambodia
「The climate-changed child: The Children’s Climate Risk Index for Cambodia」
https://www.unicef.org/cambodia/climate-changed-child-childrens-climate-risk-index-cambodia

 今回授業を実施した学校にも、9月から10月の雨季には洪水によって道路や移動に影響が生じることが掲示されていました。

 洪水は、単に水位が上がるだけの災害ではありません。

 学校へ行けない。仕事へ行けない。病院へ行けない。安全な水を確保できない。家族と連絡が取れない。支援物資が地域へ届かない。

 一つの災害が、教育、医療、交通、衛生、食料、仕事など、暮らしを支える複数の仕組みに連鎖的な影響を及ぼします。だからこそ、災害が起きてから助けを待つだけではなく、平時から危険を知り、家族や地域で行動を決めておくことが重要です。

8月26日、学校の教室で「自分ならどうする?」を考える

 8月26日、なかよし学園はMy Happy Village Cambodia Schoolを訪問し、食文化、環境、職業、音楽などを組み合わせた総合的な教育プログラムの一つとして、「PEACE 防災カルタ」の授業を行いました。

 机の上には、避難、飲料水、非常用品、火災、家族との連絡、危険な場所から離れることなどを表した絵札が並べられました。

 子どもたちは読み札の内容を聞き、対応する絵札を探します。しかし、札を早く取ることだけが目的ではありません。

「この絵は何を表しているのか」

「なぜ水を備えておく必要があるのか」

「道路が水で通れなくなったら、どこへ行けばよいのか」

「家族が別々の場所にいるとき、どうやって連絡を取るのか」

 一枚の札を取るたびに、その行動が必要な理由を確認し、自分たちの暮らしに置き換えて考えました。

カルタの内容を考えながら、災害時の行動を考える生徒たち

 授業で使用した札には、ふじのくに未来財団「静岡トヨタ自動車 ハイブリッド基金」の助成により、浜松・静岡で制作されたものです。

 日本の浜松で生まれた防災の知恵を一つの教室へ持ち寄り、カンボジアの子どもたちとともに考える。防災カルタは、地域ごとに独立した教材ではなく、多くの人の経験と発想が重なりながら成長する教材として活用されました。

言葉や識字力の違いを越える「絵と遊び」の力

 海外で防災教育を行う際には、言語の違いだけでなく、年齢や識字力、これまでに受けてきた教育の違いも考慮しなければなりません。

 文章中心の教材では、内容を理解できる子どもが限られる場合があります。一方、防災カルタは、絵を見る、読み札を聞く、対応する札を探す、手を伸ばして取るという複数の方法で参加できます。

 文字を十分に読めなくても、絵から状況を想像できます。分からないときには、子ども同士で相談できます。言葉が完全に通じなくても、指さしやジェスチャーを使って考えを伝えられます。

 カルタという遊びの形式が、子どもたちの緊張を和らげ、「間違えたらどうしよう」という不安よりも、「やってみたい」「この札を見つけたい」という好奇心を引き出します。

 防災を怖い災害の説明だけで終わらせず、子どもたち自身が参加し、考え、繰り返し学べる活動に変えることが、防災カルタの大きな特徴です。

【写真3】札に描かれた絵を見せ合い、身近な危険や備えについて話し合う子どもたち

札に描かれた絵を見ながら、身近な危険や備えについて話し合う子どもたち

8月28日、学校から地域へ――家族の命を守る学びに

 8月28日には、なかよし学園の現地パートナー団体の近隣に暮らす子どもたちを対象に、地域での防災カルタ授業を実施しました。

 防災教育は、学校の教室だけで完結するものではありません。

 災害が発生したとき、子どものそばに必ず教師がいるとは限りません。自宅にいるとき、家族と移動しているとき、遊びに出ているときなど、さまざまな状況が考えられます。

 地域での授業では、洪水、火災、避難、飲料水、家族との連絡などを、自分たちの日常生活と結び付けて確認しました。子どもたちには色鉛筆などの文房具も提供し、札を見るだけでなく、自分の考えを絵に表す時間を設けました。

 子どもが学んだことを家庭へ持ち帰り、保護者やきょうだいに伝える。そこから家族の会話が生まれ、地域の備えへ広がっていくことを目指しています。

カンボジアの子どもたちもカルタを作成しながら防災を学び始めた

地雷リスク教育と防災教育――異なる危険に共通する「知る・判断する・行動する」

 なかよし学園のカンボジアプロジェクト2026では、防災カルタによる授業に加え、地雷原周辺の学校におけるEORE(Explosive Ordnance Risk Education/爆発性兵器リスク教育)も実施しました。

地雷と洪水は、異なる種類の危険です。しかし、命を守る教育という観点では、共通する要素があります。

 危険があることを知る。危険な場所を見分ける。近づかない。周囲の大人に知らせる。状況を確認し、安全な行動を選ぶ。

 地雷の場合は「見慣れない物に触らない」「危険区域へ入らない」、洪水の場合は「増水した川や冠水した道路へ近づかない」「安全な場所へ早めに移動する」といった具体的な行動につながります。

どちらも恐怖を与えることだけが目的ではありません。子どもたちが危険を理解し、自分で判断し、周囲の人と協力して行動する力を育てる教育です。

 戦争の痕跡である地雷と、気候変動によって深刻化する洪水。カンボジアの子どもたちは、複数の危険と隣り合わせに生きています。だからこそ、個別の知識を伝えるだけでなく、状況を見て命を守る選択ができる力を育むことが重要です。

地雷の啓発授業(EORE)を行うことで地雷の犠牲になる子どもを減らす

ルワンダとカンボジア――同じカルタから異なる学びが生まれる

 「PEACE 防災カルタ」は、2026年8月11日、ルワンダ共和国Miyove地区でも活用されました。

 急な斜面が多い「千の丘の国」ルワンダでは、豪雨による鉄砲水、河川の氾濫、地滑り、土砂崩れなどが大きな課題となっています。一方、カンボジアでは、河川や湖の水位上昇、低地の冠水、道路の寸断、水と衛生、通学への影響などが身近な課題です。

 同じ「洪水」という言葉でも、地域によって必要な備えは異なります。

 なかよし学園は、カルタを「正解を覚えさせる教材」ではなく、それぞれの地域の災害経験を引き出し、対話するための教材として活用しています。

 ルワンダで得た学びをカンボジアへつなぎ、カンボジアで得た気づきを静岡へ還す。複数の国と地域が互いの経験から学び、防災の知恵を更新していく国際的な学び合いが始まっています。

ルワンダでの実施報告:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000139.000166170.html

ルワンダで行われた防災カルタ

静岡でのイベントを「一日限り」で終わらせない

「PEACE 防災カルタ2026」は、静岡県内でイベントを開催することだけを目的とした事業ではありません。

 静岡で参加者が災害について学び、自ら考え、カルタを制作する。その教材をなかよし学園が海外の学校や地域へ届ける。現地の子どもたちと一緒に使い、それぞれの地域に必要な備えを考える。そして、海外で見えてきた災害の現実や教材への反応を、再び静岡へ持ち帰る。

 この往還によって、地域の学習活動が国際的な防災教育へ発展します。

カルタを使って防災やSDGsを学ぶ子どもたち

 ふじのくに未来財団によると、「静岡トヨタ自動車 ハイブリッド基金」は、静岡トヨタ自動車株式会社からの寄付を原資として、「環境」「交通安全」「防災」「福祉」の分野でNPO等が実施する社会貢献活動を支援しています。

 地域で生まれた企業の社会貢献が、NPO、市民、学校を通じて世界の子どもたちの命を守る学びにつながりました。

基金に関する情報:
https://www.shizuokafund.org/news_topics/news.php?id=340

「つくる・届ける・学び合う・還す」CoRe Loop

 なかよし学園は、日本で生まれた学びを海外へ届け、現地で得た経験や課題を日本の次の学びへ還す循環型教育モデル「CoRe Loop」を展開しています。

 今回のカンボジアでの活動では、次の循環を実践しました。

【つくる/Create】
 静岡県の高校生、小学生、留学生、外国籍ルーツを持つ市民、地域住民が、災害から命を守るカルタを制作する。

【届ける/Deliver】
 なかよし学園がカルタをカンボジアへ届け、学校と地域で防災授業を実施する。

【学び合う/Co-learn】
 日本の防災知識と、カンボジアの雨季、洪水、道路、通学、水と衛生に関する経験を持ち寄り、地域に必要な備えを考える。

【還す/Return】
 現地での授業の様子、子どもたちの反応、カンボジアの災害事情を静岡へ伝え、次の防災学習と教材の改善につなげる。

 静岡から約4,000キロ離れたカンボジアへカルタを届けることは、活動のゴールではありません。

 世界の教室で実際に使い、そこで見つかった課題や知恵を日本へ戻し、次の教材と地域防災へ反映するところまでが、本プロジェクトの防災教育です。

浜松で行われた防災カルタ
浜松で行われた防災カルタ
静岡で行われた防災カルタ
静岡で行われた防災カルタ

なかよし学園プロジェクト代表・中村雄一 コメント

「カンボジアの学校には、雨季になると洪水によって道路や移動が困難になることが掲示されていました。洪水は子どもたちにとって、ニュースの中だけにある災害ではありません。学校へ行けなくなる、水が手に入らなくなる、家族が移動できなくなるという、生活そのものに関わる問題です。

 静岡の皆さんがつくったカルタを広げると、子どもたちはすぐに札を手に取り、絵を見て、友達と相談し始めました。日本語を読むことができなくても、絵と遊びが対話を生み出します。一枚の札が、国や言葉を越えて、命を守るための会話を始めてくれました。

 私たちは、日本の防災を一方的に教えに来たのではありません。カンボジアの子どもたちが、雨季にどのような状況を経験しているのか。道路が使えないとき、水が確保できないとき、地域でどのように助け合っているのか。日本側も現地から学ぶ必要があります。

 ルワンダでは丘陵地での洪水や土砂災害を学び、カンボジアでは河川や低地の洪水、通学、水と衛生の問題を学びました。同じカルタを使っても、地域が変われば生まれる対話も変わります。

 静岡でカルタをつくった皆さんの学びは、世界の教室へ確かに届いています。そして今度は、カンボジアの子どもたちから受け取った学びを静岡へ還します。

 本事業を支えてくださった静岡トヨタ自動車『ハイブリッド基金』、ふじのくに未来財団、そしてカルタを制作したすべての皆様に、心より感謝申し上げます。地域で始まった小さな学びが国境を越え、世界の命を守る行動へつながる。その循環を、これからも広げていきます」

カンボジアの地雷原にて

今後の展開

 なかよし学園は、カンボジアで撮影した写真や映像、現地で確認した洪水への備え、子どもたちの反応を、静岡県内の参加者や協力者へフィードバックします。

 また、ルワンダとカンボジアという異なる災害環境での実践を比較し、絵札の分かりやすさ、読み札の内容、授業の進め方、地域の災害経験を引き出す問いかけなどを検証します。

 今後も、各国の子ども、教師、保護者、地域住民とともに教材を更新し、世界の経験が日本の地域防災を強くし、日本の学びが世界の命を守る循環をつくっていきます。

今後はカンボジアからのカルタを日本が遊ぶという展開を考えている

カンボジア実施概要

活動名:カンボジアプロジェクト2026「PEACE 防災カルタ」

実施日・実施場所:2026年8月26日 My Happy Village Cambodia School
カンボジア王国シェムリアップ州2026年8月28日 現地パートナー団体の近隣地域

対象:現地の児童、地域の子どもたち、教員、現地協力者ほか

主な内容:防災カルタを活用した災害時の行動学習/洪水と雨季に関する対話/避難、飲料水、非常用品、火災、家族との連絡に関する学習/絵を使った表現活動

実施団体:特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト

現地協力:My Happy Village Cambodia School、Sothy Sorn氏ほか

助成:公益財団法人ふじのくに未来財団「静岡トヨタ自動車 ハイブリッド基金」

関連情報

静岡から世界へ――「PEACE 防災カルタ2026」開催報告
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000166170.html

静岡で生まれた「命を守るカルタ」がルワンダへ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000139.000166170.html

なかよし学園「CoRe Loop 世界とつながる学び」
https://nakayoshigakuen.org/coreloop

団体概要

団体名:特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト

代表者:中村雄一

所在地:千葉県松戸市

事業内容:「世界とつながる学び(CoRe Loop)」を軸とした探究・平和・包摂教育プログラムの企画運営/国内外における教育支援、防災教育、災害支援、食料支援、心のケア支援等

公式サイト:https://nakayoshigakuen.org

本件に関するお問い合わせ先

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト
E-mail:peace.office@nakayoshigakuen.org

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会社概要

URL
https://nakayoshigakuen.org
業種
教育・学習支援業
本社所在地
千葉県松戸市小金原4-14-14
電話番号
047-704-9844
代表者名
中村雄一
上場
未上場
資本金
-
設立
2019年04月