電通デジタルと電通、人工知能学会で4つの研究成果を発表
人とAIの協働を拡張し、マーケティングや広告ビジネスを革新
株式会社電通デジタル(本社:東京都港区 代表取締役社長執行役員:瀧本 恒 以下、電通デジタル)と株式会社電通(本社:東京都港区 代表取締役 社長執行役員:佐野 傑 以下、電通)は、生成AIとLLM※1活用における「消費者行動予測」と「アイデア評価」をテーマに実施した人とAIの協働可能性に関する4つの研究成果を、5月27日(火)から開催される人工知能学会全国大会※2で発表します。
具体的には、次の4つの研究成果を取り纏めています。
*発表論文の閲覧には、人工知能学会全国大会開催前~会期中(5月30日まで)は当該大会への参加者登録ならびにログインが必要です。また、当該大会開催後の7月初旬ごろJ-STAGEの「人工知能学会全国大会論文集」ページ※3よりどなたでも閲覧可能です。
1.生成AIを活用した大規模生活者予測モデルの研究
https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2025/subject/3I4-GS-11-05/advanced
本研究では、大規模調査パネルから得られる生活者の属性や消費行動に関するデータを基に、生成AIを用いて新たな生活者予測モデルを構築。従来の調査データからは答えが得られなかった未知の質問についても、AI擬人化技術を利用して予測。この研究は、生活者の行動や嗜好の精度の高い予測を実現し、マーケティング戦略や商品開発、広告企画への活用を目指した国内電通グループの独自AIモデル「People Model」※4の開発にも応用されています。
2.アートディレクターのアイデア発想プロセスを用いたLLMのFine-tuning手法の提案および評価実験
https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2025/subject/3F1-GS-10-01/advanced
近年、テキストから画像を生成する拡散モデルの発展により、自動的なビジュアル作成が容易となりました。しかし、専門家の深いアイデア発想プロセスが欠如すると、広告やデザイン分野では十分な質が担保できない可能性があります。本研究では、アートディレクターの「課題設定」「メタファー設定」「配色や構図の検討」などの思考過程をテキスト化し、大規模モデルにFine-tuningする手法を提案。生活者1,000名を対象にしたオンライン評価実験の結果、提案手法による生成画像は従来モデルと比較して8指標で5%~12%の有意な向上(p<0.001)を示し、特にインパクトや比喩表現の面で大きな改善がみられるなど、専門家の思考をモデルに取り込むことの有用性が示唆されました。この研究は、社内画像生成AIサービスである「ビジュアルアイデア生成機能」の開発にも応用されています。(東京大学AIセンター※5との共同研究)
3.CM 好感度、何に効く?:消費者行動ファネルへの影響検証
https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2025/subject/1M5-GS-10-01/advanced
本研究では、CM好感度が消費者の購買行動に与える影響についてパーチェスファネルを用いて定量的に分析。ビデオリサーチ社「クリエイティブカルテ」のCM調査データ(3,387本、有効回答数約180万件)に対するパス解析※6を実施し、CM好感度および説得力がファネル各段階(認知・興味関心・購買意向)に与える影響を検証しました。その結果、CM好感度の購買意向への総合効果は0.701と極めて高く、非常に強い影響を与えていることが統計的に示されました。また、視聴者の自由回答を対象に、LLMを用いたテキストマイニングを行い、好感度を高めるためには「直感的な魅力」を感じる表現が重要であること、および「共感強度」と「共感モード」の2軸を主成分とした新たな広告評価マップの可能性が示唆されました。(東京大学AIセンターとの共同研究)
4.LLMを活用したペルソナベースのデルファイ法による多視点アイデア評価
https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2025/subject/4D2-OS-33b-01/advanced
本研究では、LLMを用いたペルソナとファシリテーターに基づくデルファイ法※7によって、多様な視点に基づくアイデア評価手法の実験を行いました。属性データを基に作成したペルソナを用いることで、それぞれが独自基準でアイデアを評価することができました。ペルソナの評価結果は、ファシリテーター役のLLMによって集約・要約・フィードバックを複数回繰り返すことで収束し、低コストで多様な視点を取り入れた評価手法の有効性が示されました。本研究は、アイデアの評価のみならず、他の意思決定プロセスへの応用も期待できます。
<電通デジタルおよび国内電通グループのAIの取り組みについて>
企業の業務効率化はAI活用によりますます加速しています。現在、AI活用は企業にとって重要な経営アジェンダの一つとなり、その研究も加速度的に進められています。特にマーケティング領域では、より解像度の高い分析や出力に向け、「機能性」ならびに「人の嗜好性理解」の両側面での高度化が求められています。
電通デジタルは、2024年8月に発表した国内電通グループにおける独自のAI戦略ビジョン「AI For Growth」のもと、広告クリエイティブにおけるAIソリューション開発にいち早く取り組み、AIを活用した統合マーケティングソリューションブランド「∞AI🄬(ムゲンエーアイ)」※8を提供し、多くの企業のデジタルマーケティング活動の高度化に貢献しています。
また電通と共同で、コピーライターが長年培ってきた思考プロセスを学習した AI広告コピー生成ツール「AICO2」※9を開発・導入しています。
電通では、事業・サービス開発を支援する 「AIQQQ STUDIO(アイキュースタジオ)」※10のサービス提供も開始しました。
今回の研究成果を生かし、人とAIの掛け合わせによる可能性を拡張することで、AIソリューションの更なる進化を図り、新たなマーケティング戦略や商品開発、広告企画への活用、広告手法の研究・開発、広告評価、アイデア評価などの革新を進めていきます。
※1:Large Language Model(大規模言語モデル、LLM)
※2:2025年度の人工知能学会全国大会(第39回)が、2025年5月27日(火)から30日(金)までの期間、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)とオンライン会場で開催。https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2025/
※3:J-STAGE「人工知能学会全国大会論文集」ページ https://www.jstage.jst.go.jp/browse/pjsai/-char/ja
※4:「People Model」とは、電通が独自構築している大規模調査データを、LLMを活用してFine-tuningすることで、1億人規模の高解像度なペルソナを仮想再現するAIモデル。
※5:国立大学法人東京大学次世代知能科学研究センター
現状の人工知能技術の枠組みとその限界を超え、真に人間のためになり、将来の社会、産業、経済、文化、学術を駆動する新たな次世代知能科学体系の構築と応用に取り組む研究組織。https://www.ai.u-tokyo.ac.jp/ja/
※6:「パス解析」とは、変数間の因果関係や相関関係をパス図(矢印で因果関係や相関関係を表した図)を用いて表現し、その関係性を分析する手法。
※7:「デルファイ法」とは、複数の専門家に同じ質問を複数回繰り返し、その意見を集約して未来予測などを行う研究手法。
※8:「∞AI🄬」について https://www.dentsudigital.co.jp/services/AI/mugen-ai
※9:電通コピーライターが長年培ってきた思考プロセスを学習した AI広告コピー生成ツール「AICO2」を開発(2024年8月5日電通発表)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2024/0805-010761.html
※10:AI×クリエイティブで事業・サービス開発を支援する 「AIQQQ STUDIO」のサービス提供を開始(2024年2月21日電通発表)https://www.dentsu.co.jp/news/business/2024/0221-010685.html

国内電通グループは、“人間の知(=Intelligence)”と“AIの知”の掛け合わせによって、顧客や社会の成長に貢献していくAI戦略「AI For Growth」を推進しています。
AI For Growthについては、以下ウェブページをご確認ください。
<電通デジタルについて>https://www.dentsudigital.co.jp/
電通デジタルは、国内最大規模の総合デジタルファームです。「人の心を動かし、価値を創造し、世界のあり方を変える。」をパーパスに、生活者に寄り添うクリエイティビティとテクノロジーを統合的に活用することで、あらゆるトランスフォーメーションを実現しています。クライアント企業の事業成長パートナーとして、共に新たな価値を創造することで、経済そして社会の「変革と成長」を目指しています。
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