細胞間脂質の主要構成成分である脂肪酸が透明感とバリアに重要な角層構造の発達に関わることを発見
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、肌表面の状態を改善するアプローチについて研究を進め、以下の2点を発見しました。
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細胞間脂質の1つである脂肪酸が、透明感とバリア機能に重要な、角層の細胞間脂質の入る隙間の形成を促進することを発見。
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細胞間脂質の脂肪酸を作る酵素に着目し、表皮細胞において脂肪酸生成酵素の発現量を増加させるエキスを発見。
角層の隙間構造は肌の機能に重要
健全な角層の表層では、上下の細胞を接着する「コルネオデスモソーム」と呼ばれるタンパク質複合体があり、これを構成する主要因子「デスモグレイン1」の分解が進むことで、角層細胞の間に隙間が確保され、多くの「細胞間脂質」が充満できるようになります(図1)。このようにして細胞同士の間が脂質で満たされ「成熟化した角層」は、高いバリア機能を発揮します。またポーラ化成工業では、角層が成熟した肌は、光散乱性が高いことなども見出しており、「角層の成熟化」はバリア機能に加え、透明感にも重要であると考えられます。(補足資料1)。

脂肪酸が角層構造の形成に関わることを発見
一方、細胞間脂質の主要成分には「脂肪酸」が含まれますが、「角層の成熟化」には、脂肪酸が重要との仮説を設定し、その働きを調べました。
研究の結果、特定の脂肪酸が、角層表層でデスモグレイン1の減少を促していたことが明らかとなりました(図2)。脂肪酸が、バリア機能の構成成分であるだけでなく、細胞間脂質が入り込む隙間をつくる働きも併せ持っていたことを示しています。したがって、脂肪酸が肌内部で適切に生成・維持されていることは、肌本来のバリア機能や透明感を引き出すうえで重要であると考えられます。

脂肪酸生成酵素を増やすエキスを発見
毎日の洗顔などで、細胞間脂質は少しずつ失われてしまいます。中でも脂肪酸は特に失われやすく、その生成を促すことは角層を健やかに保つ上で重要です。そこで脂肪酸を生成する酵素であるPLA2G2F(補足資料2)を増加させるエキスを探索し、エイジツエキスとハトムギ発酵液の複合物に、その作用があることを見出しました(図3)。今後、ポーラ化成工業では、これらの研究成果を活用していきます。

【補足資料1】 角層の成熟化と透明感・バリア機能について
角層のバリア機能とは、体内の水分が外に逃げるのを防ぐのと同時に、雑菌や乾燥などの外部刺激から肌を守る働きのことです。角層の下層では、角層細胞の表面全体に「コルネオデスモソーム」と呼ばれるタンパク質複合体が存在し、上下の細胞同士が強く結びついています。しかし、表層に向かうにつれて、コルネオデスモソームを構成する主要因子「デスモグレイン1」などのタンパク質は徐々に分解され、細胞は辺縁部だけでつながるようになります。これにより、表層の角層が正常に剥離しターンオーバー(※1)が維持されると同時に、角層表層において、まるで「スポンジ」のように隙間が生まれ、そこに脂質が充満します。このようにして「成熟化した角層」は、高いバリア機能を発揮するようになると考えられています。なお、細胞間を満たす脂質(細胞間脂質)の主な構成は脂肪酸、セラミド、コレステロールであり、バリア機能にはこれらどの脂質も欠かせません。
ポーラ化成工業では、「角層の成熟化」についての研究を長年続けており、肌の柔軟性との関連など、さまざまな新知見を発表してきました(※2)。特に2016年には、角層の成熟化度合いと肌の明るさの指標(L*値)に相関関係があることや、成熟化した角層は、そうでない角層に比べて、光の散乱性が高いことを発表しています。このことから、角層の成熟化は、肌の透明感とも関連性があることが考えられます。
※1 肌(表皮)の内側では新しい細胞が生まれており、徐々に肌表層へ押し上げられ、その過程で角層細胞へと変化し、最終的に表面の古い角層細胞は剥がれていく。この一連の過程をターンオーバーという。
※2 参考リリース:
・「世界の最先端化粧品技術を競う学会 第 29 回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)世界大会にてポーラ化成工業が、6 件の論文を発表します」」(2016年10月24日)https://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20161024.pdf
・「睡眠不足による肌あれの原因を解明~睡眠不足により失われる角層の“バスケットウィーブ構造”の形成を助ける製剤を開発~」(2019年7月11日)https://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20190711.pdf
・「角層は硬化する:原因はバスケットウィーブ構造の発達不足 角層の『抗硬化ケア』で柔らかな肌の実現へ」(2017年7月3日)https://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20170703.pdf
・「シミ部位は過剰な接着タンパクが原因で 皮膚が硬くなっていることを発見~シミ部位の柔軟ケアで角層への成分浸透を高められる可能性も~」(2016年12月5日) https://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20191205.pdf
【補足資料2】 脂肪酸生成酵素PLA2G2Fは、肌のバリア機能だけでなく、メラニン関連因子とも関わる
肌の表皮に存在する脂肪酸生成酵素PLA2G2F(Phospholipase A2 Group IIF)は、角層が形成される過程でリン脂質を分解し、脂肪酸を生成します。またこの酵素によって作られた脂肪酸は、肌のターンオーバーを整える働きや、細胞間脂質の構成成分として機能するなど、肌のバリア機能の形成に重要な役割を果たしていると考えられています。
本研究では、さらに同酵素の作用を追究。培養表皮細胞を用いた実験でこの酵素を人為的に減少させると、表皮にメラニンを蓄積しやすくする因子が増加することが分かりました(図4)。したがってPLA2G2Fの増加はバリア機能の向上に働くだけではなく、メラニン関連因子の減少によるシミやくすみのケアにもつながることが期待できます。

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