持続可能な繊維産業のエコシステム構築に向けた産学連携ワーキンググループが2022年度版報告書「衣服回収の実態とLCA事例調査」を発表
1.本WGについて
本WGは、発起人である日揮HD、帝人、東京大学に加え、衣料品の製造から回収までのサプライチェーンを構成する企業や、家政学の知見を有する大学、環境NPOなど計10社・団体が参画しています。本WGでは2022年4月に、持続可能な繊維産業に向けた課題を複数分野の視点から幅広く取り上げた2021年度の報告書(URL:https://www.jgc.com/jp/news/2022/20220420.html)を公表し、その中で繊維製品の回収スキーム構築が重要と提言していました。
2.2022年度の報告書について
このたび発表した報告書では、繊維産業のサステナブル化の課題の中でも衣服の回収に焦点を当て、回収方式やリサイクル技術の事例のほか、市町村など行政が回収した衣服の原料組成に関する調査結果に加えて、業界で初めて、ショッピングモールやファッションイベントで回収をした衣服の回収量や原料組成を含む回収衣類の傾向についても独自に調査し、その結果を掲載しています。
また、国内外で報告されている衣服のLCA※報告書を精査し、衣服のリユース・リサイクルにおける、回収や環境価値の定量化に向けた課題も提示しています。
※LCA:Life Cycle Assessment:製品をライフサイクルの面で環境評価する方法
さらに、不要になった衣服の店頭回収に協力する消費者行動に関する考察も加えて、国内における衣服循環システムにおいてどのような回収・リサイクルスキームを構築していくべきかをまとめています。
報告書(全文)はこちらをご覧ください。
URL:https://www.jgc.com/jp/news/assets/pdf/RecycleReport_ClothingLCA.pdf
補足資料
報告書の構成・要約
・ 回収方式の事例
衣服回収は大きく分類すると店頭回収・イベント回収・行政回収の3種類があり、それぞれ責任所掌や回収可能な衣服の物量・品質に違いがあります。本章ではそれらの違いについて情報を整理し、各回収方式の特徴やメリット・デメリットを取り上げました。
・ リユース・リサイクル技術の事例
衣服のリユース・リサイクル技術は既に複数の技術が実装されておりますが、それぞれ受入可能な衣服や再生品が異なるため、効率的に回収衣服を活用していくためには複数の手法を組み合わせる必要があります。この章では各技術の受入可能な条件・製品や、技術的・経済的な課題について調査し、取り上げました。いずれの技術も再生品の活用や実装スキームが課題となっています。
・ 回収実証データ
衣服の活用を検討する際に、回収した衣服の組成は重要な要素です。この章では株式会社チクマによる「チクマノループ®」活動の一環で回収した衣服の組成と、行政回収時の衣服組成の調査結果を比較し、消費者から回収した衣服の組成の傾向を明らかにしました。
・ 繊維リサイクルに関するLCA報告書の事例紹介
回収衣服を活用した際の環境負荷削減効果はLCAによって定量的に評価し比較する必要がありますが、衣服のLCAは前提条件により結果が変わるため、評価方法の議論がなされています。本章では国内外の衣服リユース・リサイクルに関するLCA報告書を調査し、衣服のLCAに関する傾向や問題点を考察しました。特にリユース・リサイクル技術の環境負荷削減効果の評価においては未だ協議の余地を多く残している点を提言しています。
・ PETボトル及び繊維製品のLCA事例
リサイクルが進んでいる製品として代表的なPETボトルのLCA事例を調査し、衣服のLCAにおける共通点や問題点を考察しました。PETボトルと衣服では製品特性が異なりますが、リサイクルという観点では多くの共通点があるため、先行するPETボトルリサイクルを参考に、衣服のLCA評価手法を議論していく必要があるとしています。
・ 不要になった衣服の店頭回収にあたる消費者行動に関する考察
店頭回収に参加した一般消費者にアンケートを行い、衣服回収時の消費者意識を調査しました。衣服の回収スキームを広く普及させるためには消費者のリサイクル意識向上とリサイクルへの参画が重要となるため、消費者の意識に合った回収スキームの構築が重要になります。
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