新たな企業組織へのモードチェンジを後押しする「企業の成長戦略としてのニューロダイバーシティ宣言」を発表
宣言を社内に浸透させるために取り得るアクションも例示
株式会社日経BP(本社:東京都港区、社長CEO:井口哲也)は、2025年3月25日、企業内におけるニューロダイバーシティの推進のため「企業の成長戦略としてのニューロダイバーシティ宣言」を公表しました。これは、日経BPが主催する「ニューロダイバーシティ&インクルージョンフォーラム」が、2024年度の活動総括として取りまとめたものです。

ニューロダイバーシティ(神経多様性)とは、ニューロ(脳・神経)とダイバーシティ(多様性)を組み合わせた造語で、1990年代に欧米の神経発達症(発達障害)当事者が権利擁護のために使用し始めた言葉です。その後、脳や神経の発達・機能は人それぞれで異なる、すなわち「人は多様である」ことを指すようになり、この多様性(ニューロダイバーシティ)を前提とした組織への転換が必要と言われるようになりました(※1、※2)。
企業内におけるDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進は、イノベーションや競争力の向上を促すと同時に、偏った意思決定を防いで法的リスクやレピュテーションリスクの軽減にもつながります。経済産業省は2021年から「ニューロダイバーシティへの取組みは、大いに注目すべき成長戦略」とし、発達障害のある人がその特性を活かし、活躍できる社会を目指すとしています(※3)。国内企業の中にも、人材確保やイノベーション創出を目的にニューロダイバーシティを推進する企業が徐々に増えています(※4)。このような現状を受け、フォーラムは、今回の宣言をまとめました。少子高齢化が進む日本において、イノベーションを生み出し、企業の生産性を向上し、競争力を高める上で、脳や神経に由来する特性を活かすことは欠かせません(注釈)。
我々が目指すのは、従業員が有する多様な特性に由来する強みを活かし合う職場づくりであり、全ての従業員が安心して能力を最大限に発揮できる配慮と工夫のある職場の実現です。これは、発達特性の強弱や精神疾患(精神障害)の有無に関わりません。ニューロダイバーシティの推進は全てのステークホルダーに貢献すると考えます。
注釈:ギフテッドのような特殊能力を持つ方は少数であり、ここでは、自分を偽っているために十分社業に貢献できていない人の力を引き出したり、多様性を認め合うことで生まれる相乗効果を指します。
企業の成長戦略としてのニューロダイバーシティ宣言
私たちは、それぞれの脳や神経の発達・機能に違いがあること、そこから生じる考え方、感じ方などの多様性(ニューロダイバーシティ)を互いに尊重します。
これらの違いに由来する強みを活かし合う配慮と工夫のある職場づくりに取り組みます。
こうした取り組みを通じて、全ての従業員が安心して能力を最大限に発揮できる職場を実現し、持続的な企業価値の向上を図ることで、全てのステークホルダーに貢献します。
以下に記載する【取り得るアクション例】は、ニューロダイバーシティ宣言を社内に浸透させる際の参考として海外の動向なども踏まえて例示したものです(※5)。ただし、アクションを有意義なものとするには、各企業の社内文化などに応じたアレンジや優先順位付けも重要となること、ここに示しきれないアクションもあることを前提とした上で参考にしてください。フォーラムでは、ニューロダイバーシティ推進に有効な先進事例の収集、方策の検討を継続して進める予定です。
【取り得るアクション例】
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すべての従業員に最大限に力を発揮してもらうため、ニューロダイバーシティをDE&Iの一環として推進する
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人は多様であり、特性、考え方・価値観、感じ方が異なる。それを従業員が理解する機会を研修などを通じて提供する
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これらの違いを前提としたキャリア開発、人事評価、マネジメント、就労環境の整備などを検討する
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従業員の多様性を高めるためには採用も重要であるため、求める人材像を具体化・明確化し、バイアスの排除に努める
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社内に発達障害を含めて精神疾患(精神障害)への差別的表現、スティグマ(偏見・差別)につながるような取り決めや言動があれば見直しを進める
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一般雇用、障害者雇用ともに、成長と活躍の機会を公平に提供することを目指し、不合理な待遇差を認めた場合は是正に努める
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福祉や医療などの支援機関との連携を深める
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就業上の困りごと(業務プロセス、就労上の慣習、人間関係、通勤、職場環境など)を拾い上げ改善する仕組みづくりに務める(例:相談窓口の設置、ニューロダイバーシティ関連のERG[従業員リソースグループ]の設置など)
【ニューロダイバーシティ&インクルージョンフォーラム参加企業】
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/TS/24/neuro/
【参考データ】
現在国内では、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、限局性学習症(LD)といった発達障害の特性を持つ子どもは約10人に1人いると言われており(※6)、発達障害者の活躍を引き出せないことによる経済損失は、日本国内のみで約2.3兆円との試算があります(※7)。日本では、精神科外来の年間受診患者数はこの10年で約2倍に増加し、600万人を突破しています。また、メンタルヘルス不調は若年層でも生じやすいことから、傷病手当金の支給内訳はメンタルヘルス不調ががんの約3倍(※8)、労災支給の8割を精神障害が占めています(※9)。精神障害者保健福祉手帳の所有者は右肩上がりで増加し、2023年度末時点で日本国民の100人に1人以上が所有しています(※10)。
【本リリースに関するお問い合わせ】
ニューロダイバーシティ&インクルージョンフォーラムに関するお問い合わせは、ニューロダイバーシティ関連ソリューション お問い合わせフォーム(https://secure.nikkeibpm.co.jp/dform/form.php?form_no=2452)からお願いいたします。取材のお申し込みは、日経BPのコーポレートサイトお問い合わせページ(https://www.nikkeibp.co.jp/faq/)からお願いいたします。
【参考】
※1 英国国民保健サービス(NHS)のニューロダイバーシティ関連サイト
※2 日本経済新聞電子版 2024年1月19日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD16BWN0W4A110C2000000/
※3 経済産業省「ニューロダイバーシティの推進について」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity.html
※4 Human Capital Online(2024年11月8日掲載) 日立ハイテクが進める「ニューロダイバーシティ推進プロジェクト」
https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00092/110500001/
※5 Human Capital Online(2024年12月16日掲載) 世界経済フォーラム、ニューロダイバーシティ推進における経営層の役割を指南
https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00084/121200019
※6 日本学術会議提言「発達障害への多領域・多職種連携による支援と成育医療の推進」(2020年8月31日)
https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t292-7.pdf
※7 野村総合研究所「デジタル社会における発達障害人材の更なる活躍機会とその経済的インパクト」(2021年4月2日)
https://www.nri.com/jp/knowledge/report/2021forum308.html
※8 Human Capital Online(2024年9月9日掲載) 昨年の傷病手当金支給、メンタルヘルス不調だけで約2671億円に
https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00084/090600016/
※9 Human Capital Online(2024年8月26日掲載) 精神障害が8割、増え続ける過労死等の労災認定、その理由とは?
https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00084/082000014/
※10 厚生労働省 令和5年度衛生行政報告例の概況(2024年10月29日)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/23/dl/kekka1.pdf
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