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【国立科学博物館】ヒスイラン(パイナップル科)の花が翡翠色を発色する仕組みを解明

文化庁

 独立行政法人国立科学博物館(館長:林良博)は、サントリー生命科学財団、農業・食品産業技術総合研究機構、大阪市立大学理学部附属植物園とともに、ヒスイラン(Puya alpestris,パイナップル科)の翡翠色の花の発色のメカニズムを明らかにしました。

 ​ヒスイランの花の液胞pHは通常よりややアルカリであるために、この液胞内では、アントシアニンとフラボンによる青色の発色と、フラボノールによる黄色の発色が同時に起こっており、さらに、緑色のクロロフィルが含まれていることが翡翠色の発色に関与していました。また、ヒスイランのアントシアニンは、遺伝子組換え技術を用いて作られた青いキク(参考文献)にも含まれており、共存する化合物の違いにより、多様な花色を発色させることができることが解りました。この成果は、Phytochemistry(ヨーロッパおよび北米植物化学協会の機関誌)で公表されました。
 
  • 研究の背景
 プヤ属(Puya)はパイナップル科の植物で、200種類以上が中南米を中心に分布しています。この属の中には、世界最大(約10m)の花序を付け、発芽から開花まで130年もかかるプヤ・ライモンディ(Puya raimondii)など、大型の種が多く含まれています。

 翡翠色の花を咲かせるヒスイラン(図1)は南米チリ原産のプヤ属植物で、数年に一度、約3m前後の背丈になる大きな花序を付けます。その花は多くの蜜を分泌することから、自生地では、蜜を吸いに訪れる鳥が受粉に関与しています。日本においては、大阪市立大学理学部附属植物園や、咲くやこの花館でヒスイランが導入され、近年、栽培株の開花が報告されており、開花した際には、いずれも新聞やニュースなどで取り上げられました。

  • 研究の内容
 国立科学博物館 植物研究部の水野貴行研究員らは、2017年に大阪市立大学理学部附属植物で開花した株と、2018年に咲くやこの花館で開花した株から花を採集し、色素成分を分析しました。その結果、1成分のアントシアニン、2成分のこれまで未発見のフラボノールおよび、2成分のフラボンを単離し、同定しました。また、顕微鏡下での色素の局在の調査(図2)や、花の発色に関わるクロロフィル含量の測定、pHの測定を行い、最終的にこれらのデータから、試験管内での花の色の再現に成功しました(図3)。

 その結果、ヒスイランの花の翡翠色には、ややアルカリ化した液胞内において、アントシアニンとフラボンが共存することにより生じる青色の発色(分子間コピグメンテーション)と、フラボノールによる黄色の発色、さらに、これにクロロフィルが関与して、このような翡翠色が生じていることが明らかになりました(図4)。

 

  • 今後の展望
 チリに自生するプヤ属植物には白、黄色、青紫色など、多彩な花色を持つ種があります。筑波実験植物園においても、2019年に青紫色の花を咲かせるプヤ・セルレア・ビオラケア(Puya coerulea var. violacea)が開花しました。ヒスイランの仲間の多彩な花の色を調査し、ヒスイランが珍しい翡翠色の花を獲得した経緯を明らかにしたいと考えています。
 
  • 発表論文
表題: Identification of Anthocyanin and Other Flavonoids from the Green–Blue Petals of Puya alpestris (Bromeliaceae) and a Clarification of their Coloration Mechanism
著者:水野貴行・菅原孝太郎・堤 千絵・飯野盛利・厚井 聡・野田尚信・岩科 司
掲載紙:Phytochemistry (ヨーロッパおよび北米植物化学協会の機関誌)
(URL):https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0031942220311961
 
  • 用語解説
花序:花の集合体を指します。ヒスイランでは、花序中に枝(花を咲かせない花序)を複数分枝させて付けることで、蜜を吸いに訪れた鳥にとっての止り木の役割を果たしています。

アントシアニン:フラボノイドの一種。植物界に広く見られる色素成分で、葉や花、果実など、一般的には赤い色素として知られていますが、様々な構造の違いや条件で、橙~紫、青など、多彩な色を発現させます。

フラボン:フラボノイドの一種で、植物界に広く分布し、単体では無色の成分です。今回の研究で単離された成分は、アントシアニンと共存することで、アントシアニンを青味がかった色に変化させる機能がありました(分子間コピグメンテーションを参照)。

フラボノール:フラボノイドの一種で、植物界に広く分布し、単体ではほとんど無色の成分です。ソバのルチンや、タマネギのクェルセチンなど、食品機能性が注目されている成分です。今回の研究で単離された新しいフラボノールは、アントシアニンの発色には影響しませんが、通常よりも高い液胞のpH条件(弱アルカリ)で黄色を発色することが明らかになりました。

 分子間コピグメンテーション:花における青色発色機構の一つで、アントシアニンとフラボンなどの補助色素が液胞内で共存することによって生じます。アイリスやビオラの青い花、遺伝子組換え技術を用いて作られた青いキクの花などではこの仕組みで発色しています。



国立科学博物館https://www.kahaku.go.jp
国立科学博物館 筑波実験植物園:http://www.tbg.kahaku.go.jp
国立科学博物館 筑波研究施設:https://www.kahaku.go.jp/institution/tsukuba/index.html

農業・食品産業技術総合研究機構:http://www.naro.affrc.go.jp/
大阪市立大学理学部附属植物園:https://www.sci.osaka-cu.ac.jp/biol/botan/
咲くやこの花館:https://www.sakuyakonohana.jp/



参考文献
Noda, N., Yoshioka, S., Kishimoto, S., Nakayama, M., Douzono, M., Tanaka, Y. and Aida, R. (2017) Generation of blue chrysanthemums by anthocyanin B-ring hydroxylation and glucosylation and its coloration mechanism. Science Advances, 3, e1602785.
 

 

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未上場
資本金
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設立
1968年06月
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