令和6年度「第72回電気科学技術奨励賞」を受賞

RIR光学技術、高周波高電圧インバータ、パワーデバイスの耐湿環境性能向上の3技術が評価

三菱電機株式会社

 三菱電機株式会社は、「超薄型・高効率ヘッドライトを実現するRIR(※1)光学技術の開発と実用化」と「プリント基板穴あけ用レーザ加工機向けトランスレス高周波高電圧インバータ技術」および「電鉄・電力システムの安定稼働を支えるパワーデバイスの耐湿環境性能の向上」に関する3つの技術が、公益財団法人 電気科学技術奨励会が主催する令和6年度「第72回電気科学技術奨励賞」を受賞しましたのでお知らせします。受賞式は、11月22日(金)に学士会館(東京都千代田区)にて行われます。

■受賞の概要について

<第72回電気科学技術奨励賞>

1.超薄型・高効率ヘッドライトを実現するRIR光学技術の開発と実用化

 自動車やバイクのヘッドライトは、ロービームの光が上方に飛ばないための境界線(カットオフライン)をつくるなど、緻密な配光が必要になります。従来のヘッドライト光学系は、LEDからの光を、ミラーコーティングを施したリフレクター(反射面)を用いて集光し、配光を形成していましたが、光学系が大型化するとともに光の利用効率が低下するという課題がありました。

 当社が開発したRIR光学系は、従来のリフレクターを用いず、レンズの屈折作用と全反射作用のみで必要な配光を実現できます。その結果、高さ20mmのレンズにおいて、光利用効率を従来方式の1.8倍に向上させ、従来一般的な高さ40~60mmのレンズと同等以上の明るさを確保しました。これにより、超薄型で高効率なヘッドライトを実現し、デザイン性、省エネ性を向上しました。また、部品数を従来方式より削減して部品同士の位置関係を従来方式の約30倍高精度に配置できるようにしたことで、製造性も大幅に向上しました。これらの技術開発と実用化に関する取り組みが高く評価されました。

2.プリント基板穴あけ用レーザ加工機向けトランスレス高周波高電圧インバータ技術

 デジタル機器の小型化・高性能化に伴って高密度プリント基板の需要が急拡大し、その製造方法も複雑化する中で、生産性向上のため、基板の穴あけ加工にかかる時間の短縮が求められています。ミクロン単位の微細な穴を基板に加工する「プリント基板穴あけ用レーザ加工機」の穴あけ速度を上げるには、インバータ装置を用いてレーザ発振器を高周波高電圧で駆動させ、レーザ光を高速かつ高頻度に出力する必要があります。

 当社は高速スイッチ可能なMOSFET(※2)を多直・多並列に接続したユニットを組み合わせてインバータ回路を構成し、変圧器(トランス)を使わずに、直流高電圧から、直接、交流出力を生成する「トランスレス高周波高電圧インバータ技術」を開発しました。ユニット内の多数のMOSFETを同時にスイッチングさせる高速ドライブ回路と、高い絶縁性能を持ちドライブ回路に電源を供給する独自のドライブ電源を組み合わせることでMOSFETをばらつきなく高速に制御し、当社製レーザ加工機の穴あけにおいて最高速度(※3)である毎秒7,000穴を実現しました。これにより多層基板の層間接続穴の加工速度を高速化し、デジタル機器の製造コスト抑制や高性能化、安定供給に貢献できる点が高く評価されました。

3.電鉄・電力システムの安定稼働を支えるパワーデバイスの耐湿環境性能の向上

 鉄道車両や高圧直流送電システムのインバータ等に使用される電鉄・電力システム向けパワー半導体は、電力の高出力・低損失の性能のみならず、気温や湿度の変動が大きい屋外などの厳しい環境下でも安定動作する耐環境性能が求められています。

 パワー半導体に搭載されるチップは、電力を変換・出力する役割の有効領域と、電圧を安定的に保持する役割の終端領域(無効領域)に分けられ、湿度が高い環境などでは、水分などの影響により保持電圧が低下しないように終端領域を広くするチップ構造が必要ですが、終端領域を広くすると相対的に有効領域が狭くなるというトレードオフ関係にあるため、パワー半導体チップの高出力・低損失の性能向上と耐湿環境性能の両立には課題がありました。

 今回受賞した技術は、パワー半導体チップの終端領域に、新しい電界緩和構造(※4)と表面電荷制御構造(※5)を適用し、終端領域を30%低減しつつ、従来比100倍(※6)の耐湿環境性能を可能としたことで、高出力・低損失と耐湿環境性能の両立を実現しました。本技術を活用したパワー半導体が、さまざまな環境下で走る鉄道車両や洋上風力発電設備からの高圧直流送電システムなどに搭載され、安定稼働を支えていることが、カーボンニュートラル実現に貢献している点において高く評価されました。

■電気科学技術奨励賞について

 公益財団法人 電気科学技術奨励会が、電気科学技術に関する発明、研究・実用化、教育などで優れた業績を挙げ、日本の諸産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も引き続き顕著な成果の期待できる人を表彰するものです。

※1 入射屈折面(Refraction surface)と全反射面(Total Internal Reflection Surface)、及び出射屈折面(Refraction surface)を有する当社独自のヘッドライト光学系

※2 MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)

※3 GTW6シリーズ(形名:ML605GTW6(-P)-5500U)にて穴径50umの加工を行う場合

※4 p型半導体領域の間隔を徐々に広がるように最適配置した当社独自の構造

※5 半絶縁膜を半導体領域に直接接触させ、安定して電荷を逃がす当社独自の構造

※6 Xシリーズと従来品Hシリーズの3.3kV/1800A製品での耐結露性検証試験結果

<お客様からのお問い合わせ先>

・「超薄型・高効率ヘッドライトを実現するRIR技術の開発と実用化」に関して

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所

〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町八丁目1番1号

FAX 06-6497-7289

https://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_at.html

・「プリント基板穴あけ用レーザ加工機向けトランスレス高周波高電圧インバータ技術」に関して

三菱電機株式会社 設計システム技術センター

〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町八丁目1番1号

TEL 06-6491-8031

・「電鉄・電力システムの安定稼働を支えるパワーデバイスの耐湿環境性能の向上」に関して

三菱電機株式会社 半導体・デバイス第一事業部 パワーデバイス営業部

〒100-8310 東京都千代田区丸の内二丁目7番3号

https://www.MitsubishiElectric.co.jp/semiconductors/powerdevices/contact/

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会社概要

三菱電機株式会社

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URL
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/
業種
製造業
本社所在地
東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビル
電話番号
03-3218-2111
代表者名
漆間 啓
上場
東証プライム
資本金
1758億2077万円
設立
1921年01月