【台湾情報】マイクロLED産業の発展と台湾企業の強み<ワイズ機械業界ジャーナル2023年6月第1週号発行>
〜台湾電子・半導体・EV自動車・工作機械業界の最新動向を分析する〜
ワイズコンサルティング グループ(本社:中華民国台北市、代表取締役:吉本康志)は台湾機械業界専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」の2023年6月第1週号を発行しました。今週号では機械業界、電気電器業界、自動車業界、製造業界全体の動向を紹介します。
<最新刊目次>
- 台湾専用機械設備製造業の概況と2023年の展望
- マイクロLED産業の発展と台湾企業の強み
- 蓋亜汽車の物流向け電動三輪車、 momoやDHLが採用
- COP27で脱炭素イニシアティブ、台湾産業への影響
マイクロLED産業の発展と台湾企業の強み
先ごろ、アップルが2024年に投入する腕時計型ウエアラブル端末、Apple Watch(アップルウオッチ)新製品のディスプレイには現行の有機EL(OLED)ではなく、マイクロ発光ダイオード(LED)技術が採用されるとの観測が伝えられ、注目を集めた。さらに市場調査会社ヨール・グループは、アップルのこの動きが「ディスプレイ革命」を引き起こすとの見方まで示した。アップルはハイテク業界のトレンドを生み出すリーディングカンパニーであり、その一挙手一投足に商機が潜んでいる。同社が新しい材料を導入すれば、その材料のサプライヤーに成長力をもたらすことになる。これがマイクロLEDに対する関心が高まっている理由でもある。
高い輝度・柔軟性・節電性能を持つマイクロLED
従来型LEDチップの多くは、サイズがミリメートルレベルだが、マイクロLEDは50マイクロメートルまで縮小することができる。
マイクロLEDはサイズが小さい一方で、輝度は有機ELの30倍に上る。マイクロLEDを使ったディスプレイは光源を増やすためのバックライトモジュールが不要だ。また輝度が非常に高いことで優れた節電効果も得られる。またディスプレイパネルに、より多くのLEDチップを収めることが可能なため、解像度や透明度が高められるというメリットがあるほか、曲げたり、伸ばしたりする性能にも向上が見込める。
ただマイクロLEDとLED、有機ELとミニLEDは、相互に代替できない関係にあるため、一方の技術が消失することはない。
プレイナイトライド、技術開発で良品率を99.9%に
台湾のパネル産業は、中国メーカーや韓国メーカーとの価格競争に苦戦し、衰退が続いている。現在、中国と韓国では依然として有機ELとミニLEDの生産が主流となっており、マイクロLEDは技術的な難易度の高さからコストが抑制できず、大規模な生産は行われていない。このこともマイクロLEDの商業利用がなかなか進まない要因となっている。
台湾のパネル産業は2021年、マイクロLEDメーカーの錼創科技(プレイナイトライド)が上場したことで大きな転換点を迎えた。同社は創業当初からマイクロLED技術の開発に専念し、世界初の生産ライン設置に成功。また技術面で欧州や韓国の大手企業をリードするプレイナイトライドは、マイクロLED分野で大きな課題となっていたマストランスファー技術を確立した。
マストランスファー技術とは肉眼で捉えることも難しいほど微小なマイクロLEDチップを数百万個も基板上に正確に実装し、かつ損耗率をほぼゼロに近づける技術だ。
マイクロLEDチップ1個は頭髪の直径よりも小さいため、移載技術のスピードと精度を向上させなければ、大規模生産の実現は不可能な状況だった。プレイナイトライドは磁性材料を導入することで、大量移載の精度を引き上げ、良品率を99.9%まで高めることに成功した。これは当時、アップルの95%を上回る数値で、台湾の光電産業に新たな希望を生み出した。(中略)
将来的なマイクロLEDの応用分野
1.大型ディスプレイ:主にハイエンドテレビとデジタルサイネージ
サムスンは今年のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES、米ラスベガス)にマイクロLEDを採用したハイエンドテレビを出展、第3四半期(7~9月)に量産開始を予定する。この分野における台湾企業の成長の機会は比較的容易に他国のメーカーに奪取される可能性がある。
2.各種ウエアラブル機器
仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といった分野は現時点で市場が成熟していないが、マイクロLEDが有機ELとの価格差を2倍まで縮小できれば、アップルウオッチへの導入のように採用の可能性が高まる。
3.車載分野
台湾メーカーがマイクロLED技術を武器に車載分野へ参入し、顧客からの認証を得ることができれば、自動車メーカーがサプライヤーを変えることは非常にまれなため、価格競争を回避する最大の強みとなる。最近の「電気自動車(EV)革命」において、マイクロLEDを採用する自動車メーカーは多い。ただ各EVメーカーが必要とする規格は異なるため、技術の統合、さらにコストの低減には緊密な協力体制を築くことが必須となる。言い換えれば、台湾パネル大手の友達光電(AUO)と群創光電(イノラックス)は、自動車メーカーにとって従来とは異なる役割を果たすようになり、Tier1(一次請け)メーカーに昇格する可能性も大きく高まる見通しだ。
2025年に爆発的な商機拡大の可能性
マイクロLED技術にブレークスルーが生じるまでには今後、一定の期間を要すると考えられ、今後1~2年内に爆発的な成長が実現する見込みは低いが、長期的にみれば徐々に浸透していく可能性は高い。こうした中、多くのメーカーが2025年が一つの転換期となり、様々な分野でマイクロLEDの採用が拡大していくとの見方で一致。将来、各分野からの受注に応じられるよう今の時点で投資を開始し、生産能力を整備しており、今後もマイクロLEDの量産に着手する企業はさらに増えると予想される。
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会社名:ワイズコンサルティング グループ
所在地:中華民国台北市襄陽路9號8F
代表者:吉本康志
設立:1996年11月
URL:https://www.ys-consulting.com.tw/
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