【シニアのモビリティに関する調査2025】日常的に運転をしている高齢者は運転免許返納に慎重
AIによる自動運転には期待と不安が交錯し、利用意向は約2割
女性誌販売部数 No.1(※1)雑誌「ハルメク」などのマーケティングやリサーチのコンサルティングを通じて、50代以上のインサイトを日々探求する、ハルメク 生きかた上手研究所は、50~87歳のハルトモ(ハルメクのモニター組織)の女性577名を対象に「モビリティに関する調査」をWEBアンケートにて実施しました。
(※1)日本ABC協会発行社レポート(2024年7月~12月)
【調査結果のポイント】
■普段の外出先までの移動手段は一都三県(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県)では徒歩
鉄道、バスが主流。それ以外の地方では自動車が日常生活の足となっている。
■運転が生活に根付いている層では、自動車は生活に欠かせないモビリティと認識されており
「運転免許はいずれ返納するつもり」と考えてはいるものの、具体的な時期については現在の
年齢に関係なく明確には定めていない傾向が見られた。
■「2025年6月からの安全装置搭載の義務化」認知率は4割弱に留まったが、制度への興味・
関心は約9割と高い。なお、制度開始により免許返納時期が遅くなると答えた人は3割弱。
「AIによる自動運転」の利用意向は2割程度。「信用できない」「怖い」といった否定的な声
がある一方で、今後の移動手段として期待する声も聞かれた。
【調査背景】
ハルメク 生きかた上手研究所は、シニアのインサイトについて調査・分析を行っています。ドライバーの高齢化や免許返納、公共交通機関の減便などが問題になる一方で、大阪・関西万博は「Smart Mobility Expo」と銘打たれ、AIによる自動運転など先進的モビリティも話題となっています。今回はシニア女性の日常の移動手段に関する意識、悩みなどについて調査しました。
【調査概要】
調査方法:WEBアンケート
調査対象・有効回答者数:50~87歳の全国のハルトモ(ハルメクのモニター組織)の女性・577名
調査実施日:2025年4月11日(金)~4月14日(月)
調査主体:株式会社ハルメク・エイジマーケティング ハルメク 生きかた上手研究所
※ 調査結果のパーセンテージは、小数点以下第2位を四捨五入したため、総数と内訳の合計が一致しないことがあります。
※ 本リリースの内容を掲載いただく際は、出典として「ハルメク 生きかた上手研究所調べ」と明記をお願いいたします。
※ 調査主体の「ハルメク 生きかた上手研究所」所長への取材、コメント提供も可能です。
普段の外出先への移動手段は一都三県では徒歩、鉄道、バスが主流。
それ以外の地方では自動車が日常生活の足となっている。
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普段の外出先への移動手段は居住地域によって差が大きく、一都三県では「徒歩」「バス」「鉄道」利用率がそれ以外の地域を大きく上回る。特に鉄道は一都三県以外の地域の約2倍。
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一方、一都三県以外の地域では「自動車(自分で運転する)」で移動する割合が、一都三県の約2倍となっている。
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年齢別では70代で「自動車(自分で運転する)」が50~60代と比べて1割程度低く、「バス」の利用割合が高くなっている。
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運転状況や運転免許の保有状況別に見ると、日常的に運転している人は、他層(たまに運転する人、ペーパードライバー、運転免許を返納した人、運転免許を持っていない人)と比べてバスや鉄道などの公共交通機関の利用割合が低く、また徒歩での移動も3~4割低い結果となっている。

運転が生活に根付いている層では、自動車は生活に欠かせないモビリティ。
「運転免許はいずれ返納するつもり」と考えてはいるが、具体的な時期は定めていない。
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「免許返納に対する考え方」の自由回答を集計した結果、回答者の年齢による差よりも運転状況や運転免許の保有状況別による差のほうが大きかった。
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自主返納に肯定的な人の割合は「運転免許をすでに返納した人」「運転免許を持っていない人」で4割前後だったのに対し、「日常的に運転している人」「たまに運転している人」では1割ほど。
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一方、日常的に運転している人の4割、たまに運転する人の5割が「いずれは・時期が来たら」と返納時期を具体的には定めていない。また、日常的に運転している人の3割が、返納した場合に生活が不便になることを心配している。
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代替手段の整備を求める意見は、年齢や運転状況に関係なく一定数見られた。
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自由回答では「年齢が高いからというだけの理由で返納するのは生活の質や認知機能の低下を招く」などの意見が見られた。

■運転免許返納に関する考え(自由回答から抜粋)
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義父が90歳の時、周りの説得でようやく返納してくれたが、その後急激に認知機能が衰えた。返納は慎重にすべきと考えが変わった(56歳、福井県)
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車を手放すと行動範囲が狭まり趣味も楽しめなくなる。一気に老化が進むのではないかと心配(70歳、宮城県)
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元気なうちは運転して自由に動き回る方が健康的。返納して移動手段が減り、家に引きこもり認知症になってしまっては無意味(76歳、埼玉県)
「2025年6月からの安全装置搭載の義務化」認知率は4割弱に留まったが、
制度への興味・関心は約9割と高い。
なお、制度開始により免許返納時期が遅くなると答えた人は3割弱。
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「2025年5月からの安全装置搭載の義務化」について知っていた人は全体の約4割。
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一方「安全装置搭載の義務化」に対して関心がある割合(興味・関心がある+まあ興味・関心がある)は9割近い。
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運転免許を保持している人に、安全装置搭載義務化によって運転免許返納のタイミングに変化があるかどうか聞いたところ、ほぼ7割が「運転免許返納時期は変わらない」と回答。「先に延びそう」と答えたのは約3割だった。

「AIによる自動運転」の利用意向は2割程度。
「信用できない」「怖い」といった否定的な声がある一方で、
今後の移動手段として期待する声も聞かれた。
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「AIによる自動運転」の利用意向(すでに利用している+利用したい+まあ利用したい)は24.3%。利用したくない(利用したくない+あまり利用したくない)は34.5%で「利用したくない」がやや上回った。
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一方で自由回答では、「もっと進歩して安全になれば」との条件付きで期待する声が6割で見られ、不信や不安を訴える意見を上回った。


■自動運転に関する考え(自由回答から抜粋)
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とても良いと思う。「高齢者がブレーキとアクセルを踏み間違えた」というニュースを聞くたびに早く実現すれば良いと思っている(60歳、東京都)
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自動運転はありがたいと思うけれど、自動運転に必要なことを自分が判断できるのか心配になる。機械に弱いし、判断力も衰えてくるだろうから(61歳、滋賀県)
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安全性が保たれるならば、高齢者やさまざまな不自由を抱えた方々の行動範囲が拡大して、大変良い状況が訪れる(71歳、神奈川県)
【専門家の見解】
ハルメク 生きかた上手研究所 所長 梅津 順江(うめづ ゆきえ)
2016年3月から現職。主に年間約900人のシニアを対象に
インタビューや取材、ワークショップを行い、誌面づくり・
商品開発・広告制作の糧になるインサイトを探り、アンケートを介して半歩先の未来を予測している。

運転という“習慣”を超えて ~高齢ドライバーが描く、モビリティの未来~
高齢ドライバーによる事故のニュースを見るたび、運転をやめられない理由は「“足”がなくなって不便になるから」だけではないのでは、とぼんやりと感じていました。今回、50~87歳女性に行った「モビリティに関する調査」から、その一端が垣間見えました。運転は単なる移動手段ではなく、生活の一部であり、特に地方在住者にとっては「日常の習慣」となっています。あまりに生活に溶け込んでいるため、免許返納を促されても「自分はまだ大丈夫」「いずれ返納する」と他人事のように受け止め、運転を続ける人が多いのです。その背景には、米国の心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した「認知的不協和」の心理が働いていると考えられます。自分の運転能力が衰えつつあることに気づいていながらも、それを認めたくないという葛藤が生じます。この心と身体のギャップを埋めようと、「体力や認知能力の低下は個人差がある」「返納して引きこもり、認知症になるほうが不安」といった言い訳で自分を正当化し、運転を続けるのです。50代26.1%、60代38.5%だけでなく、70代以上でも28.4%が免許返納の判断を先延ばしにしていました。「思考」や「言動」は、長年染みついた「行動」や「習慣」にはなかなか勝てません。
2025年6月から「安全運転装置の搭載」が義務化されます。約9割が関心を示す一方で、6割以上がその内容を知らないと回答。対して「AIによる自動運転」について「分からない」と答えた人はわずか1割。まだ「信用できない」「怖い」といった不安もあるものの、「行動範囲が広がる」「高齢者の味方」「早く普及してほしい」といった前向きな声も目立ち、自動運転技術への高い期待が伺えます。
高齢ドライバーが行政や企業に望んでいるのは、運転をやめさせる施策ではなく、安心して移動し続けられる選択肢です。少子高齢化や人手不足で公共交通機関の整備が進まないことを彼女たちは理解しており、だからこそ「自動運転」は一筋の光として、未来を明るく照らしています。「自動運転」がこの世代の新たな習慣となり、QOL(生活の質)を高める。それは、安心かつ前向きな次世代モビリティ社会の一歩となるはずです。
行動変容には、まず習慣の理解をすること。そして、ワクワクする希望ある未来(高齢期の移動)を思い描かせることが求められます。
■女性誌販売部数No.1! 50代からの生きかた・暮らしかた応援雑誌「ハルメク」
50代からの女性が前向きに明るく生きるための価値ある情報をお届けしています。健康・料理・おしゃれ・お金・著名人のインタビューなど、幅広い情報が満載です。
また、雑誌「ハルメク」の定期購読者には、本誌とともに提供するカタログと、オンラインでの通信販売を行っています。販売している商材は、ファッション・インナー・コスメ・美容・健康など多岐にわたり、独自のシンクタンクである「ハルメク 生きかた上手研究所」を通じて利用者の声を徹底的に調査、反映した商品開発で、多くの女性から支持を得ています。
■ハルメク 生きかた上手研究所のシニアリサーチデータは、「ハルメク シニアマーケティングLAB」で掲載しています。
「ハルメク シニアマーケティングLAB」は、ハルメク世代(シニア)を顧客とする企業にとって有益な情報をお届けしている情報サイトです。ハルメクグループが提供する定期購読誌や通販等を通じて得たマーケティングデータや記事、シンクタンク「ハルメク 生きかた上手研究所」の調査レポートなど豊富な情報が満載です。
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