【高卒社会人の転職に関する意識調査】高卒者の転職ニーズは4割弱
情報と自己分析の不足をハードルに感じているものの、転職エージェント利用はわずか17%
高校生の就職を支援している「ジンジブ」(大阪市)では、高校を卒業して社会に出た18歳〜26歳に向けて卒業後のキャリアに関するアンケート調査を実施し、まとめましたのでお知らせいたします。
<調査結果サマリー>
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民間に正社員就職して同じ会社に働いている高卒の社会人は6割、転職が2割弱。
社内異動を経験した人は年収が高くなる傾向があり、キャリアアップが収入向上につながりやすい。
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転職のニーズは回答者全体の4割弱の38.4%。
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転職のハードルに感じる点は情報不足や自己分析の不十分さ。
個別サポートのニーズがあるものの、転職エージェントの利用率は17%にとどまっている。

<調査概要>
調査期間:2024年10月21日~10月28日
調査形式:Webアンケート
調査対象:18〜26才 800人(有効回答者)
内訳:①働き始めた人 605人(就職436人、パート・自営169人)
②就活中・進路未決定の人 90人(卒業後に働いた36人、未定者50人)

<調査の背景>
2023年の転職等希望者は1,007万人となり、前年より39万人増加(*1)しました。これで7年連続の増加となり、労働市場では多様なキャリアの選択肢が広がっていることがうかがえます。一方で、2025年3月卒業予定の高校生の求人倍率は4.10倍と、昭和63年以降最も高くなりました(*2)。また企業の採用意欲が高まっているものの、就職後3年以内の離職率は38.4%(*3)と依然として高い水準にあることも現状です。
そこで本調査では、進学以外の高校生の卒業後の進路状況や、就職した高卒者の転職ニーズや理由、そのハードルについてのアンケートを通じて、高校生の就職活動や転職ニーズ、定着について考察します。“高卒で就職する「第二新卒者」”のキャリアの可能性と、企業に向けては定着率向上のヒントにつなげることを目的としています。
(*1)出典:総務省統計局 労働力調査 2023年(令和5年)転職希望者の推移より
(*2)出典:厚生労働省 令和6年「高校者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」(令和7年3月末)
(*3)出典:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者) 厚生労働省
■調査結果
1.高校卒業後の進路別キャリアについて
1-1:現在の状況:高校卒業後「働き始めた」と回答した人(n=605)

高校卒業後に「働き始めた」と回答した605人(※)に対しての現在の状況を質問したところ、入社した会社で引き続き働いている人が48.6%、別の会社へ転職している人が18.2%でした。
中でも「民間企業に正社員就職」した人のうち、同じ会社でキャリアを積んでいる人は59.6%、別の会社へ転職してキャリアチェンジを行った人は17.3%でした。パート・アルバイトには8.8%、離職中には6.5%が回答しました。
また、「パート・アルバイト」になった人のうち、42.2%は別の職場でパート・アルバイトとして働いています。18.8%が初職で働き続けていることも考えると、アルバイト経験者はそのままアルバイトを続ける傾向があることがわかりました。
※高校卒業後に「働き始めた」と回答した人の内訳:民間企業(正社員・契約社員)・派遣社員・公務員(常勤・非常勤)・自営業・アルバイト
1-2:現在の状態:高校卒業後に「進路決めなかった」「就活中」と回答した人(n=90)

高校卒業後に「進路決めなかった」「就活中」と回答した人では、55.6%が「まだ働いていない」と回答しています。
最初の会社を継続している人が21.1%、転職をした人が12.2%、離職して現在働いていない人が6.7%でした。
1-3:現在の年収を教えてください。※卒業後の進路に回答した人(n=695)

1-1と1-2の質問に回答した695人に現在の年収を質問しました。高校卒業後に入社した会社で、同じ職種で働いている人の年収のボリュームゾーンは300万~399万円で、全体の25.3%を占めています。一方で、高校卒業後に入社した会社で別の職種に転職した人のボリュームゾーンは400万~499万円で、28.9%でした。また、転職を経験した人では、2社目の勤務者は300万~399万円、3社目以降の勤務者は199万円以下の割合が最も高くなりました。
さらに、アルバイトとして働いている人の年収は、199万円以下が中心となっています。
■高校卒業後のキャリアまとめ
高校卒業後に「働き始めた」人の現在の状況を質問したところ、全体で入社した会社で引き続き働いている人が48.6%、別の会社へ転職している人が18.2%でした。
卒業後の進路別に見ると、高校卒業後に民間企業に正社員として就職した人のうち、59.6%は同じ会社で働き続けていますが、17.3%は転職を経験し、8.8%はアルバイトとして働いています。対して卒業後にアルバイトとして働き始めた人を見ると、転職をしてもアルバイトで働く傾向が強く(42.2%)、正社員での就職につながるケースは少ない傾向があることが分かりました。
また、最も年収が高くなるのは、同じ会社に勤め続けながら部署異動を経験した人で年収が400~499万と回答した人が28.9%いました。社内でのキャリアアップが収入面でのメリットにつながりやすいことが示唆されています。2社目への転職では年収に大きな変化は見られませんが、転職回数が増えると年収のボリュームゾーンは低下する傾向であると言えそうです。
2.高卒の社会人の転職ニーズについて
2-1:現在の職場からの離職や転職を検討したことはありますか。(n=641)

就職した経験のある人に対して離職や転職を検討したことがあるか聞いたところ、「離職して就職活動中」「離職を検討していて転職活動をしている」と回答した人は、働いた経験のある全体(641人)のうち17.8%いることがわかりました。「活動はしていないが意向がある人」を加えると38.4%になり、40%弱の高卒社会人には転職ニーズがあることが分かります。
また卒業後の進路によって、離職や転職の意向には差が見られます。最も転職意向が強いのは、民間企業に契約社員として入社した人であり、19人中11人にあたる57.9%が転職を考えています。
一方で、人数が最も多いのは民間企業に正社員として入社した人であり、全体352人の42.6%にあたる150人が転職を考えています。その内訳として、61人がすでに転職活動を行っており、89人が離職を検討している状況でした。
※就職した経験のある人の内訳:高校卒業後に「働き始めた」と回答した605人+高校卒業後に「進路決めなかった」「就活中」と回答した人のうち、1-2で「まだ働いていない」の回答以外の36人
2-2:現在の職場の離職理由、または離職を検討する理由を教えてください。【複数回答可】(n=323)

2-1の質問で、離職や転職を検討したことがあると答えた人の最も多い離職理由は、「自分のやりたいことができたから」(23.5%) であり、約4人に1人が転職理由に挙げています。次いで、「会社の将来性が不安だから」(22.3%)、「給与が見合っていない」(17.6%)、「待遇・福利厚生の不満」(17.3%)が続いています。
2-3:転職活動をする場合、どのように行いますか(行いましたか)。【複数回答可】(n=323)

「転職活動をする場合、どうやって進めるか」という質問では、1位が「求人サイトに登録する」(37.2%)、2位が「ハローワークに行って仕事を探す」(33.7%)となりました。
3位になった「人材紹介サービス」(17.0%)は、上位2つとは大きく差が開き、高卒の社会人にとって転職活動の手法としてまだ浸透していないと言えそうです。
高卒社会人の転職ニーズまとめ
今回のアンケート結果からは、高卒社会人の回答者全体の40%弱に転職ニーズがあることが推測されます。
正社員として就職した層が転職希望者のボリュームゾーンであり、高卒の社会人でも一定数が転職の意欲を持っていることがわかります。しかし、現在転職活動をしている人はそのうち17.8%で、転職を検討しているが活動ができていない人が20.6%であることから、転職活動者の人数以上が転職を考えつつも行動に移していない人の方が多いことが分かりました。
さらに、「転職活動をする場合どのように進めるか」という質問では、「求人サイトに登録する」(37.2%)に次いで「ハローワークに行って仕事を探す」(33.7%)が2位であり、求人サイトとハローワーク求人は近い割合になりました。その背景として、高卒社会人は新卒の就職活動では、学校の進路指導を通じてハローワーク求人から仕事を探すことが一般的であったため、その延長線上でハローワークを活用する傾向があるのではと推測できます。
また「人材紹介サービス」を使うと回答した人は17.0%にとどまり転職活動の手法としてはまだ浸透していないと言えそうです。
3.高卒社会人の転職活動のハードルについて
3-1:転職活動や就職活動で不安な点は何ですか【複数回答可】(n=323)

2の質問で、「離職・転職を検討したことがある」と回答した人の中で、転職活動において最も不安を感じる点を聞いたところ、「自分に合う職業が見つかるか」(33.1%)が最も多く、次いで「自分に合う会社が見つかるか」(29.7%)、「自分に合う働き方が見つかるか」(21.4%)が続くという結果となりました。
中でも、2-2の転職したい理由への質問で「やりたいことが見つかったから」と回答した人の回答では、「自分に合う会社が見つかるか」(40.8%)が最も多く、次が「自分の将来やキャリアステップについて」(31.6%)でした。この結果から、高卒者にとって転職活動の最大の課題は、自分に合ったキャリア選択をすることが難しいと感じていることだと考えられます。
また「自分に自信が持てないこと」(20.4%)の回答が次点であることから、経験やスキルをはじめ自信が持てない要素を抱えている人がいることが分かります。
3-2:転職活動や就職活動をする際にどんなサポートが欲しいですか?【複数回答可】

就職した経験のある高卒社会人に転職活動や就職活動に求めているサポートを質問したところ、「自分がどんな職業に向いているかを見つけるサポート」(24.3%)であり、次いで「自分でも何に悩んでいるか分からないので話を聞いてほしい」(22%)という回答が多いことが分かりました。
高卒社会人の転職活動のハードルまとめ
高卒社会人の転職希望者の多くは、「自分に合った職業・会社・働き方があるのか」「悩みを可視化できていない」という不安を抱えており、これが主な転職活動のハードルになっていることが伺えます。やりたいことが見つかったと回答した人も「自分にあった会社が見つかるか」に不安を持っています。
加えて、「自分に自信が持てない」という不安からは、自己分析・スキル・経験の不足からの自信のなさも影響していることが推察できます。
そのことから、自分の強みの理解や、自分に合う仕事の棚卸しするサポート、そして具体的に合った仕事を見つける支援が必要と言えます。特に、「自分が何に悩んでいるのか分からない」という声も一定数あることから、単なる情報提供だけでなく個別に寄り添った支援(キャリアカウンセリングや適職診断など)が有効であると考えられます。
しかしながら、転職活動で人材紹介エージェントの活用を考えている人は17.0%と少数派であり、求人サイトの登録者数の半分ほどにとどまっていることからも、高卒社会人の転職活動で人材紹介エージェントがまだまだ浸透していない現状が伺えます。人材紹介エージェントを使うことへの不安が払しょくすることができれば、自分にあった職業選択のための手法としての伸びしろがあると言えそうです。
<アンケート結果全体の考察>
■高校生の第二新卒者の可能性
高卒社会人のキャリアに関する意識のアンケートから、「高校生の第二新卒」という新たな労働市場の可能性が浮かび上がりました。
高卒で就職した若者には「より自分に合った職場への転職」を考える人が4割弱と一定数存在しています。離職理由には「やりたいことが見つかった」や「会社の将来性」が主な理由となる一方、待遇・福利厚生の不満も回答がありました。「働きがい」と「働く環境」の両方がキャリアの希望に影響を与えていることが分かります。
多くが「求人サイトへの登録」や「ハローワーク」を利用して転職活動をすると回答している一方で、「悩みが分からないので話を聞いて欲しい」というニーズを持っており、ギャップが生じていると推察できます。
高卒者に対するキャリアカウンセリングや自分に合った仕事や企業の紹介のサポートが増えること、本人がそのサポートを知り利用することが必要です。また企業は「高校生の第二新卒」にも注目し採用や活躍できる環境を整えることで、新たなキャリアの機会を生み出せると考えられます。
■高卒社会人の採用促進・離職を防止に向けて
企業の視点から見た、高卒社会人の採用と定着について考察します。まずは学歴に捉われない受け入れ体制を整え挑戦の環境を用意することが有効です。スキルアップ支援や昇進のチャンスなど成長の機会を提供すること、企業の人的投資に対する魅力を向上させることが重要と言えます。
特に若手人材の早期離職を防ぐためにも長期的な人材育成戦略は不可欠です。離職を考える理由には「自分のやりたいことができたから」(23.5%)に次いで、「会社の将来性が不安だから」(22.3%)が上位にあがっています。やりたいことができた自己実現と、成長を実感できる有能観の「働きがい」を高めるためのキャリア支援が必要です。
また「給与が見合っていない」(17.6%)、「待遇・福利厚生への不満」(17.3%)、「会社の価値観や雰囲気が合わない」(13.3%)、「仕事の内容が合わない」(12.4%)といった離職を考える理由も多いことから、評価と給与待遇への納得感や、会社の価値観を共有しやすい環境づくりや人間関係などの心理的安全性の両面を改善することでも「働きがい」につながると考えられます。
また、年収のボリュームゾーンが400万~499万円ともっとも高いのは、同じ会社で異動をした人でした。そのことからもスキルアップの機会の提供と配置転換を活用して成長機会を設けることが、定着と高卒者の長期的な活躍につながると言えます。
■まとめ:「高校生の第二新卒」の労働市場での可能性
これらのことから「高校生の第二新卒」という層にも注目が届き、適切なサポートの充実や企業の受け入れやキャリアアップ支援が向上することで、新たな若手人材の活躍の機会が増やすことができると考察できます。若手の転職市場では、学歴に捉われずに成長意欲やスキルや積んだ経験が評価される環境を整えることが、高卒社会人の働きがいを増やすキャリア形成につながります。
社会全体が連携し、次世代の若手人材が活躍できる場を創出することが、今後の日本の労働市場において鍵になります。
当社では、今後も高校生のキャリア教育、高校生の新卒採用・第二新卒採用の支援、企業への人事支援と高卒者向けの研修提供を通して寄与してまいります。
<回答者属性・補足アンケート>
【回答者属性】



【補足アンケート】高校生の就職活動について
※対象:卒業後の進路「社員で就職した人」n=436
・高校卒業のタイミングで「社員就職」の進路を選んだ理由

・高校生の就職活動をどのように行ったか

・高校での就職活動で満足できなかったこと

※内訳:高校での就職活動の方法で、「先生から紹介してもらった」「自分で会社を探して先生に紹介してもらった」「自分で会社を探して自分で応募した」と回答した359人
・高校生の就職活動の時にどんなサポートが欲しかったか。

<ジンジブについて>
株式会社ジンジブ
代表取締役:佐々木 満秀(ささき みつひで)
本社所在地:大阪府大阪市中央区南本町2-6-12 サンマリオンタワー14階
拠点:大阪本社・東京・福岡・名古屋・仙台・広島・新潟・岡山・熊本・静岡
設立:2015年3月23日(グループ創業1998年9月1日)
株式情報:東京証券取引所 グロース市場(証券コード:142A)
ジンジブは「高卒」の若者のための社会課題解決企業です。同じく「高卒社長」である佐々木が、「夢は、18才から始まる。」をスローガンに掲げて事業をはじめました。高校生のキャリア教育や、就活の情報提供、就職後の定着やスキルアップやキャリア形成、転職時の情報提供やサポートを行います。
■サービスについて
●高卒就活採用支援サービス 「ジョブドラフト」
将来について考えるきっかけを与えるキャリア教育支援「ジョブドラフトCareer」や、これまでは文字情報のみの求人票でしか収集できなかった求人情報を、高校生に向けた発信をする就職情報アプリ「ジョブドラフトNavi」や、高校生のための合同企業説明会「ジョブドラフトFes」を運営し高校生が未来を自分の意思で形作るためのサービスを展開しております。
また、卒業後の生徒には、高卒第二新卒や既卒者へのリスキリングと就職・転職を支援する「ジョブドラフトSchool」「ジョブドラフトNext」を運営し、社会に出た後にも寄り添ってまいります。
2023年12月「第13回キャリア教育アワード※」(主催:経済産業省主催)にて「優秀賞」を受賞。
※ジンジブ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000048030.html
●人事部支援サービス「人事部パック」
これまでの「高卒採用」の支援にとどまらず、「採用戦略策定」「教育」「定着」「評価」「福利厚生」など、中小企業の「人的資本経営」を支える人事にまつわる業務のサポートをする月額サービスです。日本の根幹を支える中小企業にとっての「人事部」としてのパートナーとなり企業の成長をサポートします。
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