【イベント事後レポート】BEAMS土井地博氏 × 元ナイキ・アダストリア久保田夏彦氏が語る「愛されるブランドのつくり方」。渋谷のクローズド勉強会でトップマーケターが“本音”を熱論

渋谷ブランドマーケターコミュニティ主催。教科書通りのマーケティングではなく、現場の「熱量」と「体験」を重視する“ライフワーカー”としての生き方とは？

KOBUSHI MARKETING合同会社

2025年12月15日 10時10分

渋谷ブランドマーケターコミュニティ（主催：KOBUSHI MARKETING 代表井上裕介）は、2025年11月12日(水)、渋谷KOBUSHI BEERにて第1回クローズド勉強会「ブランドの“体温”をどう伝えるか」を開催いたしました。

11月12日(水)開催された「ブランド&事業会社マーケター限定渋谷でクラフトビール飲みながら勉強会」

ゲストに株式会社ビームス執行役員の土井地博氏、モデレーターに渋谷未来デザイン（元ナイキジャパン・アダストリア）の久保田夏彦氏を迎え、20名の現役マーケター・事業責任者が集結。

教科書的なマーケティング論ではなく、現場の最前線で実績を残してきた二人だからこそ語れる「ブランドの本質」について、クラフトビールを片手に語り合いました。本リリースでは、その熱気あふれる対談の一部をレポートします。

■開催の背景

「代理店任せではなく、自社ブランドを動かす実務家同士が本音で語れる場を」という想いから発足した本コミュニティ。第1回となる今回は、ファッション・カルチャーの最先端を走り続けるBEAMSと、グローバルブランドNIKE等で市場を牽引してきたトップマーケターの視点を交差させ、「ファンを惹きつけ続ける仕組み」を深掘りしました。

■対談ハイライト

1. 仕事とプライベートの境界線を消す「ライフワーカー」という生き方

対談の冒頭、自身の肩書きや働き方について問われた土井地氏は、「オンとオフを分けるのではなく、人生そのものを楽しむ“ライフワーカー”でありたい」と語りました。

「仕事して、働いて…と言いますが、ここにいる皆さんも結局働くのが好きだと思うんです。常にスイッチはオンだし、オフでもある。インプットしたものを自分なりに咀嚼してアウトプットするサイクルは、会社のためだけでなく、自分の人生を豊かにするためのサイクルでもあります」（土井地氏）

これに対し久保田氏も同意。「ビームスという会社自体が、単なる洋服屋ではなく『ライフスタイルそのもの』を提案し続けている。だからこそ、働く人間もライフスタイルとワークが融合しているのが自然な姿」と分析しました。

2. 「わざわざ」が生む価値──効率化の時代における“アナログ”の復権

話題は、デジタル全盛の現代における「リアルな体験」の価値へ。土井地氏は、過去に海外のVIPをアテンドした際、高級レストランではなく、地元のディープなお好み焼き屋へ連れて行き大絶賛されたエピソードを披露。「その土地のストーリーや空気感を含めた体験こそが価値になる」と語りました。

「コロナ禍を経て、効率や利便性は追求されましたが、一方で『わざわざそこに行く』『めんどくさいけどレコードで音楽を聴く』といった、手間の掛かることへの価値が再認識されています。クリック一つで物が届く時代だからこそ、そこにたどり着くまでのストーリーや、店員との会話といった“ノイズ”や“体験”が、ブランドへの愛着（体温）を生むのです」（土井地氏）

3. 人の心には「10個の椅子」しかない

これからのブランドのあり方について、土井地氏は独自の「10本指（10個の椅子）理論」を展開しました。

「人間が朝起きてから寝るまで、ぼんやりと頭に浮かべたり、無意識に選択したりするブランドや行動の選択肢は、せいぜい10個（10本の指）くらいしかありません。朝はスタバに行って、昼はあそこで食べて…といったルーティンの中に、いかに自社ブランドが入り込むか。数百万点の商品が並ぶECサイトから選ばれるのではなく、『あの人が勧めるから』『あのお店に行けば何かあるから』という、信頼とストーリーで選ばれる“10個”に入ることが、これからのブランドの究極の目標ではないでしょうか」（久保田氏）

4. 「Q&A」から「Q&Q」へ。店舗は“物を売る場所”から“劇場”へ

最後に土井地氏は、ビームスの店舗戦略について「劇場化」というキーワードを挙げました。

「かつては『課題（Q）に対して解決策（A）としての商品を提供する』のがメーカーや小売の役割でした。しかし今は、正解のない時代。だからこそ、店舗は単に物を売る場所ではなく、スタッフやお客さま同士が交流し、何かを感じ取る『劇場』のような場所であるべきです。売上などの数値だけでなく、滞在時間や『また来たい』と思わせる熱量が、結果としてブランドの寿命（LTV）を伸ばすことにつながります」（土井地氏）

5. 次回は“ブランドの未来”を語る夜──1月16日(金) 19:00～

今回のテーマは「ライフワーカー」「わざわざの価値」「10個の椅子」「店舗の劇場化」でしたが、議論はそこで終わりません。次回は、国内を代表するブランドのコミュニケーションを手掛けてきたマーケターが登壇します。舞台裏の意思決定と、ストーリーテリングのリアルを共有いただきます。

「どんなブランドが、なぜ選ばれているのか」「広告の外側で起きていることは何か」「顧客の“10個の椅子”をどう奪うのか」リアルな現場と実例から、ブランドの熱量とLTVのつくり方を深掘りする予定です。

次回開催：2026年1月16日(金) 19:00～

詳細を知りたい方は、KOBUSHI MARKETING 井上まで

https://www.facebook.com/nowaysangel

■参加者の声（アンケートより抜粋）

・「トップマーケターのお二人が、理論だけでなく泥臭い現場の話をしてくれたのが非常に響いた」

・「『わざわざ』というキーワードが腑に落ちた。効率化ばかり考えていたが、ブランドの熱源は非効率な部分にあると気づけた」

・「少人数制で距離が近く、懇親会も含めて非常に濃密な時間だった。次回も必ず参加したい」

■今後の展開

渋谷ブランドマーケターコミュニティでは、今後も「事業会社の実務家」「熱量のあるマーケター」に限定したクローズドなイベントを定期開催してまいります。次回開催等の情報は、公式SNS等で発信予定です。

■登壇者プロフィール

【ゲスト】

土井地博

(株)ビームス執行役員シニアクリエイティブディレクター

兼ディレクターズバンク室長
20年以上BEAMSグループの宣伝PR業務を行い、グローバルプラットフォームを持つ国内外の企業や組織、ブランドとのアライアンスを推進。現在はディレクターズバンク室長を務め、新たなビジネスモデルの構築やブランドイメージ向上に従事。島根県親善大使、大学非常勤講師、ラジオパーソナリティなど活動は多岐にわたる。

【モデレータ】

久保田夏彦

Kubotech代表 / 元ナイキジャパン・アダストリア CMO

ナイキジャパンにてNike.jp、NIKEiD、NIKE HARAJUKU立上げ等を歴任後、アダストリア執行役員・マーケティング本部長として25ブランドを統括。現在は渋谷未来デザインにおける都市のスマート化や、複数ブランドのCMOとして活躍中。

■主催

井上裕介

KOBUSHI MARKETING 代表

音楽レーベル起業、COOを経て、デジタルマーケティング領域で活躍。現在はKOBUSHI MARKETING代表として、コンサルティングやオリジナルブランドKOBUSHI BEERを中心としたイベント・コミュニティ事業を展開。元プロキックボクサー。

KOBUSHI MARKETINGについて

渋谷発のオリジナルクラフトビール「KOBUSHI BEER」を通じて、人と人とを繋ぐ取り組みをおこなっている。渋谷のマーケターや起業家を集めた4,000人が参加するコミュニティを運営しており年間200本以上のビジネス交流会を主催。また、ウェブIT系やクリエイティブ系の経営者を中心とした10,000人の人脈を使った営業支援メニュー「コミュニティスポンサー」には、成長ベンチャー企業をなど約70社が参加している。