乳牛の乳房炎原因菌を迅速に検出する技術を開発、ライセンス提供を開始
酪農現場における迅速かつ的確な治療・対処方針の策定に貢献
旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎、以下「当社」)は、当社独自の乳牛の乳房炎原因菌を検出する技術を開発し、本年8月、エレクトロニクス、自動車、医薬、航空宇宙およびバイオテクノロジー産業などを展開する技術系専門商社エア・ブラウン株式会社(本社:東京都中央区、社長:島田 浩貴)と日本およびアジア・中東地域を対象としたライセンス契約を締結しました。
1. 当社における共創による事業創出(TBC)の取り組み
当社は『中期経営計画2027 ~ Trailblaze Together~』において、無形資産の活用によるソリューション型事業やライセンス型事業の強化を進めており、その中で、当社の研究開発を通じて蓄積された特許、ノウハウやデータなどの無形資産を活用し、パートナー企業との共創による事業化を前提としてスピーディに新規事業を創出する取り組み「TBC(Technology value Business Creation)」を推進しています。今回のライセンス提供もTBCの活動として開始しました。
2. 酪農業界における乳房炎検査の課題
酪農業界において、乳牛の乳房に細菌が感染することで発症する感染症「乳房炎」が大きな問題となっています。乳牛において発生率の高い疾患の一つであり、牛乳の品質低下や乳量の減少を引き起こすため、全世界で約130億米ドルもの深刻な経済損失を与えています※1。乳房炎罹患牛への適切な治療方針や農場全体の衛生管理方針を策定するためには原因菌の特定が不可欠であり、従来の検査法である培養法やPCR法※2は、専門の検査機関への委託が必要で、結果が得られるまでに通常1日以上かかるため、迅速な治療方針や衛生管理方針の策定には課題がありました。
3. 今回ライセンス提供を開始した技術について
当社では、ヘルスケア領域での感染症診断をターゲットとして、細菌検出技術の研究を進めてきました。その中で、幅広い細菌種に対する抗体ラインナップおよびさまざまな検体に対応する検査キット化ノウハウを獲得しました。今回、これらの技術を応用し、このたび、酪農業界において症例数が多く経済的影響が大きい感染症である乳牛の乳房炎に着目して、主要原因菌である大腸菌群、ブドウ球菌、レンサ球菌を検出できる当社独自の検査技術を開発しました。本技術を用いることで、専門技術がなくても、酪農家自身が乳汁中の細菌を約1時間で簡単に検出することが可能になります。それにより、乳房炎罹患例に対して的確な治療・対処方針を迅速に策定することが可能となり、酪農家の経済的損失の減少が期待できます。

本ライセンス契約において、当社は契約一時金に加え、事業化後は販売額に応じたロイヤリティを受け取る権利を有します。当社は、当該技術の特許使用権を許諾するだけでなく、当社のノウハウを提供することで、エア・ブラウン株式会社における早期事業化を支援します。
本技術のライセンス提供により、酪農現場における細菌検査を迅速化・簡便化し、より的確な乳房炎の治療および農場全体の衛生管理に貢献することを目指します。
当社は、「変わる未来のはじまりを。」を研究開発の理念に掲げ、無形資産を生み出し、その価値を社会に提供することを通じて、人と地球のよりよい未来の実現を目指してまいります。
TBCについて
https://www.asahi-kasei.com/jp/r_and_d/oi/#anc-05
当社の無形資産活用について
https://www.asahi-kasei.com/jp/ir/library/business/
エア・ブラウン株式会社について
※1 出典:J. Dairy Sci. 107:6945–6970 Global losses due to dairy cattle diseases: A comorbidity-adjusted economic analysis
※2 培養法:検体(牛乳)に含まれる菌を培養し、原因菌を同定する検査方法
PCR法:検体に含まれる菌のDNAを増幅して、その種類を同定する検査方法
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