2026年第1四半期、中古マンション市場に変化 都心5区で値下げ圧力強まる
■ 2026年第1四半期の概況:市場は静かに転換点へ
2026年も4月に入り、早くも最初の四半期が経過しました。この期間の中古マンション市場を振り返ると、一見すると大きな変動は見られないものの、エリア別に見ると明確に歪みが生じ始めていることがわかります。特に東京都心部とそれ以外のエリアにおいて、市場の温度差が徐々に顕在化しています。
■ 都心5区で拡大する値下げ圧力

前四半期と比較して最も顕著な変化は、都心5区における値下げ幅の拡大です。2025年10月~12月における都心5区の中古マンションの値下げ率は5.77%であったのに対し、2026年1月~3月は6.24%へと上昇しており、これは2023年以降で最大の水準となっています。
さらに注目すべきは、この値下げ率が2024年7月~9月以降、継続的に高くなっている事です。すなわち、単発的な調整ではなく、売主側が価格修正を余儀なくされる構造的な圧力が強まりつつあると考えられます。これまで価格上昇を牽引してきた都心5区において、需給バランスに変化が生じ始めていることは、市場全体にとって重要なシグナルといえるでしょう。
■ 23区全体は依然として安定推移
一方で、東京23区全体で見ると状況は大きく異なります。2026年1月~3月の中古マンション値下げ率は5.53%と、前四半期と比較して微増にとどまり、全体としては横ばい圏での推移が続いています。
このことから、少なくともマクロ的に見た23区市場においては、急激な市況悪化や需給崩壊といった兆候は確認されていません。すなわち、都心5区で見られる値下げ圧力の強まりは、23区全体に波及しているわけではなく、特定エリアに限定された現象であると事が分かります。
この「局所的な調整」と「全体の安定」というコントラストこそが、現在の市場を読み解く上での重要な視点となります。
■ 流動性の変化:都心5区で進む売れにくさ

さらに、都心5区における販売期間および値下げ回数の推移を見ると、いずれも増加傾向にあることが分かります。これは単に価格を下げているだけではなく、「値下げをしても売れにくい」という状況が生じていることを意味します。
従来であれば、一定の価格調整を行えば成約に至っていた市場環境と比較すると、現在は買主側の選別がより厳しくなっていることが推察されます。価格だけでなく、立地・築年・専有面積・ブランドといった複合的な要素において、より高い水準が求められている可能性があります。

これに対し、23区全体では販売期間・値下げ回数ともに前四半期と大きな差はなく、流動性の観点でも横ばいで推移しています。すなわち、市場全体として流動性が低下しているわけではなく、都心5区においてのみ流動性の低下が顕在化している構図です。
■ 2023年以降に顕在化した市場の二極化
こうした動きの背景には、2023年以降に顕在化した中古マンション市場の構造変化が存在します。特に象徴的であったのは、2023年7月から翌年7月にかけて、各月の成約坪単価が新規売出坪単価を上回るという異例の現象です。
この期間においては、高価格帯の中古マンションが優先的に売るという状況が発生しました。しかし、この歪みは長期的に持続可能なものではなく、価格形成の前提そのものにズレを生じさせる要因となりました。
結果として、市場は「実需に支えられた適正価格帯」と「期待先行で上昇した高価格帯」に分断され、いわゆる二極化が進行していきます。
■ 高価格帯市場における反動の顕在化
2026年に入り、この二極化の影響がより鮮明になっています。特に都心5区のような高価格帯マーケットにおいては、これまで上昇を続けてきた反動が顕在化し始めています。
言い換えれば、「価格が上がり続けること」を前提としていた市場参加者の期待が修正されつつある局面にあるということです。購入検討者側においては、金利環境や将来不確実性を踏まえた慎重姿勢が強まり、売主側の価格設定とのギャップが拡大していると考えられます。
この結果として、値下げ率の上昇、販売期間の長期化、値下げ回数の増加といった指標に現れているように、需給調整が進行している状況です。
■ 今後の市場をどう捉えるべきか
以上を踏まえると、現在の中古マンション市場は「全面的な下落局面」ではなく、「エリアおよび価格帯ごとの選別が進む局面」にあると整理できます。特に都心5区においては、これまでの上昇局面に対する調整が本格化しており、短期的には軟調な動きが続く可能性があります。
一方で、23区全体では依然として流動性が維持されており、実需に支えられたマーケットは底堅さを保っています。このため、今後の市場分析においては、「都心=強い」という従来の単純な図式ではなく、よりミクロな需給構造の把握が不可欠となるでしょう。
市場は現在、次の成長局面に向けた調整フェーズにあると考えられます。その中で、どのエリア・どの価格帯が持続的な需要を獲得できるのかが、今後の焦点となります。
筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
福嶋総研代表研究員。早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
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