日射量予測の“大外し”低減技術を開発しました

再エネ変動対応の調整力調達コスト低減に貢献します

NEDO

 NEDOは、委託事業である「太陽光発電主力電源化推進技術開発/先進的共通基盤技術開発/翌日および翌々日程度先の日射量予測技術の開発」(以下、本事業)に取り組み、一般財団法人日本気象協会、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と共同で、日射量予測が大幅に外れる“大外し”を低減する予測技術を開発しました。

 今回開発した予測技術を組み合わせて“大外し”の低減効果を検証した結果、従来手法と比べ、“大外し”が23%低減することを確認しました。日本気象協会は、現在一般送配電事業者などへ提供中の日射量予測および信頼度予測サービスに、今回開発した“大外し”を低減する予測技術を2026年秋ごろから実装し、予測サービスのさらなる高精度化を図ります。

 再生可能エネルギー(以下、再エネ)変動対応に関わる調整力調達コストは2025年度見込みで300億円程度とされており、さらなるコストの低減が求められています。開発技術の早期実用化により、調整力の確保量とそれに伴うコストを低減し、再エネの導入拡大に貢献します。

      図 開発した予測技術および日射量予測“大外し”の低減効果

1.背景

 太陽光発電は、日射量などの気象条件によって発電量が変動する不安定な電源です。従って、太陽光発電量を精度良く予測するためには、日射量予測の高精度化が欠かせません。日射量予測が大きく外れる、いわゆる“大外し”が発生すると、電力システムへ甚大な影響を与えます。具体的には、“大外し”によりバランシンググループ※1や一般送配電事業者などで生じるインバランス量(計画した需要量と発電量の差)が増大し、それに対応する調整力の確保量も増大することなどが挙げられます。また、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)終了電源※2の利活用や将来のFIT制度からの自立化※3を見据えると、今後は太陽光発電事業者やバランシンググループ自らが、インバランスリスクを低減する目的で太陽光発電量を精度良く予測する必要があり、日射量予測技術のさらなる高精度化、特に“大外し”の低減に対するニーズが高くなっています。加えて、調整力を予測の信頼度に応じて柔軟に調達することで、必要となる調整力の低減が期待されるため、信頼度予測の高度化に対する高いニーズもあります。

 本事業※4では、効率的な電力の需給運用の観点から重要となる、翌日および翌々日程度先を対象とした高精度な日射量予測技術を開発しました。

                表 本事業の実施体制

       事業者

      実施内容

代表委託先

  一般財団法人日本気象協会

・日射量予測に特化した気象モデル

 の開発

・複数気象モデル予測値の統合技術

 の開発

・信頼度予測技術の開発

・“大外し”低減予測技術の開発と評

 価

共同実施者

国立研究開発法人産業技術総合研究所

・気象庁データ等の日射量予測の

 特性分析

2.開発した技術と主な成果

 本事業は、太陽光発電の導入拡大と電力系統の安定化への貢献を目的に、2021年度から2024年度まで実施しました。日本気象協会と産総研は、太陽光発電のさらなる普及および太陽光発電推進上の課題となっている「需給運用の複雑化」や「電力の安定供給」の解決に必要となる「翌日・翌々日程度先を対象とした日射量予測技術の高度化および“大外し”の低減」に取り組みました。この取り組みの中で、日本気象協会は、以下の①~③の技術開発を実施しました。また、産総研は、気象庁予報データを活用し、“大外し”事例の要因分析などを実施しました。

 ①日射量予測に特化した気象モデルに係る技術開発

 ②複数機関の気象モデル予測値の統合に係る技術開発

 ③アンサンブル予報※5に基づく信頼度予測に係る技術開発

 特に②では、複数の気象モデルの予測値を統合し、発生頻度が少ない“大外し”予測をターゲットに機械学習を活用することで、日射量予測の“大外し”を低減する補正手法を開発しました。

 今回開発した①~③の技術を組み合わせて“大外し”の低減効果を検証した結果、予測手法の高度化と誤差の大小を事前に分類する手法の高度化により、信頼度が低いと予測した日を含むすべての日の“大外し”は従来手法と比べて13%低減、信頼度が高いと予測した日の“大外し”は23%低減することを確認しました。この結果は、従来手法では正確な予測が困難であった事例についても、①と②により予測誤差を低減し、③により“大外し”の可能性を判断することで、より高い精度の日射量予測情報が利用可能となることを示しています。

3.期待される効果と実用化

 再エネ変動対応に係わる調整力調達コストは2025年度見込みで300億円程度※6とされており、さらなるコストの低減が求められています。今回開発した予測技術の早期実用化により、太陽光発電事業者や太陽光発電を取り扱う小売電気事業者は、日々の発電計画や電力の調達計画の際に、より高精度な予測情報を活用することで計画と実績の差が小さくなり、収益の安定化やインバランスリスクの低減が期待できます。また、一般送配電事業者は、調整力の確保量を抑えられることで電力の安定供給や需給運用のコスト削減が見込めます。

 日本気象協会はこれまで電力会社向けに、独自の気象モデル「SYNFOS(シンフォス)」を含む国内外の複数モデルを活用した日射量予測サービスや、アンサンブル予報に基づく日射量の信頼度予測サービス※7を提供してきました。2026年秋ごろに、これらの予測サービスに今回開発した“大外し”を低減する予測技術を実装し、予測サービスのさらなる高精度化を図ります。

【注釈】

※1 バランシンググループ

幹事となる新電力事業者が複数の新電力事業者を取りまとめ、グループ内でインバランスの融通、電源調達を行うことで、小売電気事業の調達・需給管理業務の効率化を提供する機能です。

※2 再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)終了電源

太陽光発電の固定価格買取制度(FIT制度)による調達期間が終了する電源です。

※3 FIT制度からの自立化

太陽光発電などの再エネ電源が、FIT制度による政策措置がなくとも、電力市場でコスト競争に打ち勝ち、導入・運用されるようになることです。

※4 本事業

事業名:太陽光発電主力電源化推進技術開発/先進的共通基盤技術開発/翌日および翌々日程度先の日射量予測技術の開発

事業期間:2021年度~2024年度

事業概要:太陽光発電主力電源化推進技術開発 https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100174.html

※5 アンサンブル予報

わずかに異なる大気の状態(初期値)から多数の予測を行い、その平均やばらつきの程度といった統計的な性質から、最も起こりやすい現象を予測する方法です。

※6 再エネ変動対応に係わる調整力調達コストは2025年度見込みで300億円程度

再エネ特措法に関する諸論点について(資源エネルギー庁、2025年2月3日)

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/072_01_00.pdf

の37ページに記載の算定結果に基づいた数値です。

※7 国内外の複数モデルを活用した日射量予測サービスや、アンサンブル予報に基づく日射量の信頼度予測サービス

日本気象協会が提供する高精度な日射量・太陽光発電出力予測サービスです。

日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solar https://www.jwa.or.jp/service/energie-management/solar-power-05/

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会社概要

URL
https://www.nedo.go.jp/
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー
電話番号
044-520-5207
代表者名
斎藤 保
上場
未上場
資本金
-
設立
2003年10月