【台湾情報】2023年台湾半導体企業の車載向け開拓状況<ワイズ機械業界ジャーナル2023年12月第2週号発行>
〜台湾半導体・電機・電子・機械業界の最新動向を分析する〜
<最新刊目次>
2023年台湾半導体企業の車載向け開拓状況
2023年電源装置メーカーの動向と脱炭素対策
朋億(ノバ・テクノロジー)の剥離廃液回収装置、回収率90%・CO2削減96%を実現
2023年1~8月ポンプ・コンプレッサー・コック及びバルブ製造業の概況と主要メーカーの動向
台湾を含む世界各国・地域が2050年までの温室効果ガス実質排出ゼロ(ネットゼロ)実現を目標に掲げる中、電気自動車(EV)の普及が進み、人工知能(AI)技術の進展により自動運転車の開発も本格化する中、自動車は25年に半導体の第3の応用分野となる見通しで、台湾の半導体各社が車載向けの開拓を強化している。
1.ファウンドリー
ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は成熟製造プロセス採用の半導体需要を見込み、熊本県で工場の建設を進めているほか、ドイツでも工場を計画している。TSMCはオランダの車載用半導体大手、NXPセミコンダクターズとの提携も強化している。NXPは自動運転車向けコンピューティング用ICにTSMCの7、5ナノメートル製造プロセスを採用しており、24~25年にはTSMCの3ナノを採用する見込みだ。TSMCは▽NXP、▽自動車部品最大手のボッシュ、▽半導体大手のインフィニオン・テクノロジーズと合弁でドイツ子会社、ヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(ESMC)を設立し、成熟プロセス採用の車載用半導体を生産する工場を建設する計画だ。TSMCは高性能、高信頼度の自動運転車向け最先端半導体の需要も狙っている。
ファウンドリー大手、聯華電子(UMC)も車載向けを強化しており、車載用半導体大手の▽NXP、▽インフィニオン、▽米テキサス・インスツルメンツ(TI)、▽米マイクロチップ・テクノロジーの4社から受注している。4社は車載用半導体の世界シェアで計30%以上だ。UMCにとって車載向けは最大の成長分野の1つになっている。
ファウンドリー大手、力晶積成電子製造(パワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチャリング、PSMC)の売上高のうち、車載用半導体の構成比は約6~7%だ。今後は車載向け▽金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、▽絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、▽電源管理IC(PMIC、パワーマネジメントIC)など新製品の生産を開始する計画で、25年に車載用半導体の売上高構成比は12~15%まで上昇する見込みだ。
2.ディスクリート半導体メーカー
近年はディスクリートデバイス(個別半導体)メーカーも車載向けを強化している。ダイオードメーカーの徳微科技(エリス・テクノロジー)は24年に既存の生産ラインを刷新し、EVなど向け炭化ケイ素(SiC)MOSFETの受託生産を開始する予定だ。
パワー半導体大手の強茂(パンジット・インターナショナル)はEV世界最大手、テスラからダイオードやMOSFETを受注した。今後も同社が出資する電源管理IC(PMIC、パワーマネジメントIC)メーカー、虹冠電子工業(チャンピオン・マイクロエレクトロニック)とEV向け半導体の開発を進める方針だ。
3.IC設計会社
台湾のIC設計会社も欧米や日本、中国の自動車市場開拓を強化している。IC設計最大手、聯発科技(メディアテック)は23年4月、次世代の車載用プラットフォーム「Dimensity Auto」を発表した。5月には、グラフィックスプロセッサー(GPU)大手の米エヌビディアと、自動車用デジタルコックピット(スマートコックピット、eコックピット)向けソリューション開発で提携すると発表した。3ナノ採用の車載用半導体を25年に量産する計画だ。
「Dimensity Auto」は▽モバイルコンピューティング、▽高速ネットワーク接続、▽マルチメディア娯楽など、メディアテックが強みとするスマートフォン用ICの技術を生かしたプラットフォームで、スマートコックピットで没入型体験を実現できるとうたう。
IC設計大手の瑞昱半導体(リアルテック・セミコンダクター)は欧州の自動車メーカーに車載向けイーサネット用チップを供給している。米国、韓国の自動車メーカーとの提携も進めており、車載向けICの受注が拡大する見込みだ。
4.封止・検査メーカー
台湾の半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)各社は自動運転や車のインターネット(IoV)向けの需要に対応するため、▽フリップチップ(FC)、▽ウエハーレベルチップスケールパッケージング(WLCSP)、▽システム・イン・パッケージ(SiP)などのハイエンド封止ソリューションを提供している。半導体封止・検査最大手の日月光投資控股(ASEテクノロジー・ホールディング、ASEH)は、ファンアウト(FO)型先進封止で車載向け需要を取り込む狙いだ。
このほか、自動車に搭載されるカメラの数が今後倍増し、車載向け相補性金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサー(CIS)の需要が急増すると見込まれる中、CISの封止・検査を手掛ける同欣電子工業や精材科技(シンテック)は、車載向けCIS事業を強化する方針だ。同欣電はCIS封止・検査の生産能力で最大規模を誇り、シンテックはCISのチップスケールパッケージングに注力している。
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