酵素分解ローヤルゼリーが、ロコモティブシンドローム予防に貢献する可能性
九州歯科大学との共同研究により、間葉系前駆細胞の多分化能を向上
【研究背景】
日本は高齢者人口の割合が28%を超える超高齢社会であり、様々な老化現象の予防が重要視されています。老化現象は、体の細胞が老化することで起こり、体の細胞を作る「幹細胞」との関わりが様々な研究で示されています。
幹細胞は体の各組織に存在し、筋幹細胞から筋細胞が作られるように、特定の細胞に「分化」することで組織を維持します。幹細胞の中でも、間葉系幹細胞は筋肉、骨、軟骨、脂肪などの複数の細胞に分化する「多分化能」を持ち、様々な細胞から成る関節などの組織を修復・維持していると考えられています。このように、幹細胞の多分化能を維持・向上させることは、加齢に伴う運動機能の低下を抑えるために重要な役割を持ちます。
これまでの研究で、酵素分解ローヤルゼリーは高齢者の筋力を維持することが確認されており、筋肉の幹細胞の活性化が関わっていることが示されています。また、筋肉以外にも、血液や肌、腸などの複数の幹細胞に働きかけることが示されており、体の若返りに働きかける素材として研究が進められています。しかし、ローヤルゼリーが間葉系幹細胞の多分化能に与える影響は明らかにされていませんでした。今回の研究では、酵素分解ローヤルゼリーが、間葉系前駆細胞 (C2C12細胞)の筋芽細胞、骨芽細胞、脂肪細胞への分化にどのような作用を示すか調べました。
【研究結果】
酵素分解ローヤルゼリーは、間葉系前駆細胞であるC2C12細胞に対し、筋形成に作用するだけでなく、骨芽細胞、脂肪細胞への分化を促進したことから、多分化能向上作用を確認しました。
【試験方法】
間葉系前駆細胞であるC2C12細胞に酵素分解ローヤルゼリーを添加して培養した後、筋形成、もしくは、骨形成、脂肪形成の刺激を与えて培養し、酵素分解ローヤルゼリー添加をしなかった通常のC2C12と比べて、筋芽細胞、骨芽細胞、脂肪細胞への分化が促進されたかを評価した。筋芽細胞は筋線維の組織染色にて可視化し、骨芽細胞は骨芽細胞マーカー、脂肪細胞は脂肪形成関連遺伝子の発現量を測定した。
【試験結果】
<筋形成への分化促進>
酵素分解ローヤルゼリーは間葉系前駆細胞(C2C12細胞)の筋形成を促進させた。
C2C12細胞に対し筋形成刺激を与えると、酵素分解ローヤルゼリー添加なしと比べ、筋線維の増加が確認され、筋形成が促進された(図1)。
<骨芽細胞への分化促進>
酵素分解ローヤルゼリーは間葉系前駆細胞(C2C12細胞)の骨芽細胞への分化を促進させた。
C2C12細胞に対し骨芽細胞分化刺激を与えると、酵素分解ローヤルゼリーなし(下図2.の0 mg/mL)と比べ、酵素分解ローヤルゼリー(0.25, 0.5, 1.0 mg/mL)は骨芽細胞マーカーの発現を上昇させた(図2)。
<脂肪細胞への分化促進>
酵素分解ローヤルゼリーは、間葉系前駆細胞(C2C12細胞)の脂肪細胞への分化を促進させた。
C2C12細胞に対し脂肪細胞分化刺激(ADP)を加えると、酵素分解ローヤルゼリー添加なしと比べ、脂肪形成に関わる遺伝子(Pparγ2※1)の発現が増加した(図3)。
※1 Pparγ2…Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ 2の略。
※2 pRJ添加なしの0日目を1とする。
【今後について】
本研究では、酵素分解ローヤルゼリーが間葉系前駆細胞であるC2C12細胞に対し、筋形成に作用するだけでなく、骨芽細胞、脂肪細胞へ分化するのを促進させることがわかりました。今後も研究を重ね、幹細胞研究を起点として、ロコモティブシンドロームのような老化症状に対するローヤルゼリーの新しい機能性の解明につなげてまいります。
引き続き当社は、ローヤルゼリー、プロポリスなどのミツバチ産品に関する有用性研究や素材開発を通し、予防医学の観点から「アピセラピー」を追究することで、お客さま一人ひとりの健康寿命を延伸し、社会に貢献してまいります。
<文献情報>
論文タイトル: Royal Jelly Enhances the Ability of Myoblast C2C12 Cells to Differentiate into Multilineage Cells
掲載誌:Molecules
掲載日:2024年3月24日
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