スペースデータ、磁気嵐による衛星軌道の変化などを比べる宇宙天気デモ3種をSpaceBrainに追加

〜低軌道の衛星が増えるなか、宇宙天気が衛星や地球周辺の環境に及ぼす影響を、学術論文のモデルで条件を変えながら確かめられるデモ〜

株式会社スペースデータ

株式会社スペースデータ(本社:東京都港区、代表取締役社長:佐藤航陽、以下「スペースデータ」)は、宇宙AIプラットフォーム「SpaceBrain(スペースブレイン)」に、太陽活動に伴う宇宙環境の変化「宇宙天気」を扱う物理シミュレーションデモ3種を追加し、公式プロダクトサイト「SpaceBrain Product Catalog」の「ソリューション一覧」(宇宙領域)に掲載しました。3種のデモ「StormMemory Lab」「Magnetosphere Gate」「CME Arrival Ensemble」では、それぞれ、2024年5月の磁気嵐による衛星軌道の変化、地球を包む磁気圏の境界の変形、太陽から放出されたプラズマの塊が地球に届くまでの時間の幅を、条件を変えながら比べられます。操作できるデモは、お問い合わせいただいた方に個別にご案内します。

背景

宇宙サービスの商業化や、大規模な衛星コンステレーションの整備により、低軌道を周回する衛星は、2003年の大規模な磁気嵐以降に急増したとされます(※)。2024年5月10日から12日にかけては、過去20年あまりで最大規模とされる磁気嵐が発生しました。この磁気嵐の衛星への影響を分析した研究(※)は、衛星の軌道の変化から上層大気の密度の高まりを捉えたうえで、磁気嵐が衛星の運用に与える影響を理解することが、衛星の安全を保ち、低軌道を長期にわたって持続的に利用していくうえで欠かせないとしています。

一方で、太陽活動が衛星や地球周辺の環境に影響を及ぼす過程は目に見えにくく、条件によって結果がどう変わるのかを直感的に理解するのは簡単ではありません。こうした認識のもと、スペースデータは、学術論文のモデルを使い、条件を変えながら宇宙天気の仕組みを確かめられるデモを開発しました。

※ W. E. Parker、R. Linares「Satellite Drag Analysis During the May 2024 Gannon Geomagnetic Storm」(Journal of Spacecraft and Rockets、2024年)

宇宙天気デモ3種

1. StormMemory Lab|磁気嵐が衛星の軌道に残す影響

StormMemory Labの画面

概要:2024年5月の磁気嵐のときの大気と平常の大気で、同じ位置から出発した2機の衛星の軌道がどれだけ離れていくかを比べられるデモです。嵐によって変化した上層大気の密度が、低軌道の衛星にかかる抵抗と軌道の違いにどうつながるかを示します。一般に公開されている過去のデータで事後に再計算したもので、当時の予報ではありません。

比較できる条件:当時の地磁気活動の値を入力した大気(A)と、地磁気活動を平常の値に置き換えた大気(B)で、同じ位置と速度から出発した2機の衛星(仮想の機体)の4日間の軌道を比べます。地磁気活動の履歴(12〜57時間前)だけを平常の値に置き換える実験や、衛星の初期高度(350〜550km)の切り替えもできます。

計算例:初期設定(初期高度400km、面積質量比0.010m²/kgの仮想の衛星)で計算すると、4日後(2024年5月14日0時、協定世界時)には、Aの衛星はBの衛星より平均高度が約1.1km低くなり、進行方向の位置は約350km離れます(モデル上の計算値)。

表示する項目:衛星の位置での大気密度、大気の抵抗による加速度、2機の平均高度の差と進行方向の位置の差、一定の高度で見た大気密度の比の全球分布、地磁気活動の指数の推移

モデルの前提:大気の密度は、経験的な大気モデル「NRLMSIS 2.0」を使い、2024年5月10日から14日まで(協定世界時)の太陽活動と地磁気活動の過去のデータをもとに計算しています。軌道は地球の重力と大気の抵抗だけで計算し、地球の扁平による重力の偏り、上層大気の風、太陽光の圧力、衛星の推進は含みません。この大気モデルは、嵐の後に上層大気が冷える効果を十分に表せない場合があります。2024年5月の大気密度の観測による検証や、予測精度の保証は行っていません。

参考論文:J. T. Emmert ほか「NRLMSIS 2.0: A Whole-Atmosphere Empirical Model of Temperature and Neutral Species Densities」(Earth and Space Science、2021年)

関連論文:W. E. Parker、R. Linares「Satellite Drag Analysis During the May 2024 Gannon Geomagnetic Storm」(Journal of Spacecraft and Rockets、2024年)/R. J. Licata ほか「Science Through Machine Learning: Quantification of Post-Storm Thermospheric Cooling」(Space Weather、2022年)/Y. Wu ほか「A Space Weather Approach for Quasi-Real-Time Assessment of Satellite Orbital Decay During Geomagnetic Storms Based on Two-Line Element Sets」(Space Weather、2025年)

使用データ:CelesTrak(太陽活動・地磁気活動の指数)、GFZ Helmholtz Centre for Geosciences(ドイツ)の地磁気活動の指数(Kp、確定版、CC BY 4.0)

2. Magnetosphere Gate|地球を包む磁気圏の変形

Magnetosphere Gateの画面

概要:太陽から吹き出すプラズマの流れ(太陽風)に押されて、地球の磁場が及ぶ領域(磁気圏)の境界が縮んだり広がったりする様子を、太陽風の圧力と磁場の向きの2つの要因に分けて確かめるデモです。観測データの再現や予報ではなく、合成した入力による比較実験です。

比較できる条件:太陽風の圧力(0.5〜30nPa)と、太陽風の磁場の南北方向の成分(−20〜+20nT)を操作できます。「平常」「圧力だけ上昇」「南向き磁場を追加」「回復」の場面を順に再生し、圧力だけを変えた効果と、磁場の向きだけを変えた効果を分けて示します。

表示する項目:太陽側の境界までの距離(地球の半径の何倍か)、基準からの縮み具合、圧力を変えた効果と磁場の向きを変えた効果、静止軌道に近い距離(地球の半径の6.6倍)との差、入力の幅に対する境界の位置の幅

モデルの前提:境界の形は、観測にもとづいて導かれた経験式で計算します。入力の変化にすぐ応じる簡略なモデルで、実際の応答の遅れや境界の波打ち、衝撃波、プラズマの流体計算は含みません。圧力と磁場の向きの効果は、圧力、磁場の向きの順に変えたときの差分で示しており、両者の寄与を一意に分けたものではありません。6.6倍の円は距離の目安で、実際の衛星の位置や障害を予測するものではありません。関連論文に挙げた機械学習の研究でもこの経験式が比較の基準として使われていますが、機械学習のモデルはこのデモに実装していません。

参考論文:J.-H. Shue ほか「Magnetopause location under extreme solar wind conditions」(Journal of Geophysical Research: Space Physics、1998年)

関連論文:L. Klingenstein ほか「Parameterization of the subsolar standoff distance of Earth's magnetopause based on results from machine learning」(Annales Geophysicae、2025年)/A. V. Suvorova ほか「Magnetopause expansions for quasi-radial interplanetary magnetic field: THEMIS and Geotail observations」(Journal of Geophysical Research: Space Physics、2010年)

3. CME Arrival Ensemble|太陽から放出されたプラズマが地球に届くまで

CME Arrival Ensembleの画面

概要:太陽からプラズマと磁場が大規模に放出される現象「コロナ質量放出(CME)」について、地球に届くまでの時間(以下、到達時間)が条件の違いでどれだけ変わるかを示すデモです。実際の現象の予報ではなく、合成した条件による比較実験です。

比較できる条件:CMEの初期速度、背景の太陽風の速度、抗力係数(背景の太陽風から受ける抵抗の効きやすさを表す係数)を操作できます。入力の幅は初期速度の幅(±%)で設定し、背景の太陽風の速度と抗力係数の幅はこれに連動します(初期設定は初期速度±20%、背景の太陽風±50km/s、抗力係数±50%)。「速いCME」「遅いCME」「太陽風と同速」の例を切り替えられます。入力を少しずつ変えた128通りの計算をまとめて行い、到達時間の分布をアニメーションで示します。

表示する項目:中心となる条件での到達時間(計算の開始から)、128通りのうち中央の80%が収まる到達時間の幅、一定の速度で進んだ場合との差、CMEの前面の速度と太陽からの距離、そのときの加速度

モデルの前提:CMEは背景の太陽風との速度差に応じて減速・加速するとし、その動きを1次元の抗力モデル(Drag-Based Model)で計算します。計算は、太陽の中心から太陽の半径の20倍の距離を起点に、地球までの距離(1天文単位)に届くまでを対象にしています。128通りの計算は、入力の違いを多数回計算して到達時間の分布を見る考え方(関連論文のDBEM)を参考にした合成のサンプルで、到達の確率や予報の信頼区間を示すものではありません。噴出の仕組み、CME同士の相互作用、磁場の構造、衝撃波、磁気嵐の強さは計算しません。

参考論文:B. Vršnak ほか「Propagation of Interplanetary Coronal Mass Ejections: The Drag-Based Model」(Solar Physics、2013年)

関連論文:M. Dumbović ほか「The Drag-based Ensemble Model (DBEM) for Coronal Mass Ejection Propagation」(The Astrophysical Journal、2018年)/M. Dumbović ほか「Drag-Based Model (DBM) Tools for Forecast of Coronal Mass Ejection Arrival Time and Speed」(Frontiers in Astronomy and Space Sciences、2021年)

デモの位置づけと注意事項

・3つの現象を同じ構成の画面で扱い、条件を変えたときの結果の違いを比べられます。各デモの計算結果は、CSV形式で書き出せます。

・各デモには、参考にした論文、計算の条件、モデルの適用範囲と限界を明記しています。

・各デモは、学術論文のモデルをもとにスペースデータが独自に作成したもの(StormMemory Labは一般に公開されている過去のデータも使用)で、論文の著者や研究機関との共同開発や、その公認を示すものではありません。

・いずれも研究・教育用のプロトタイプで、現在の宇宙天気の予報や、実際の衛星の運用判断に使うものではありません。

・画面の地球の画像:NASA / Reto Stöckli「Blue Marble」

デモの紹介ページ

SpaceBrainの公式プロダクトサイト「SpaceBrain Product Catalog」の「ソリューション一覧」(宇宙領域/宇宙天気。掲載名:磁気嵐・衛星抗力シミュレーション、太陽風・磁気圏境界シミュレーション、CME到来時刻アンサンブルシミュレーション):https://catalog.spacebrain.org/

スペースデータ CSO 兵頭龍樹のコメント

「宇宙天気は、太陽フレアに伴う電磁放射、太陽高エネルギー粒子、コロナ質量放出などによって、地球周辺の宇宙環境が突発的かつ大きく変化する現象です。その影響は一様ではなく、『いつ、どの軌道上の、どの人工衛星が影響を受けるのか』という、時間と空間に依存した問題として捉える必要があります。

人工衛星への影響は、通信・測位・観測などの社会インフラにも波及するため、宇宙天気の把握と予測は、今後、安全保障や経済安全保障の観点からもますます重要になると考えています。

スペースデータのCSO、そして惑星科学者として、これまで物理現象の研究で培ってきた知見を活かし、物理モデルとAIによるサロゲートモデルを組み合わせることで、宇宙環境をリアルタイムに解析し、さらに個々の人工衛星への影響まで評価できる、高精度な宇宙天気サービスの実現を目指していきます。」

SpaceBrainについて

SpaceBrainは、スペースデータが開発する宇宙AIプラットフォームです。人工衛星やスペースデブリ、小惑星、宇宙天気などに関する多様な観測データを一つに統合し、デジタルツインと物理シミュレーションによる分析を支えるシミュレーション基盤です。公式プロダクトサイトでは、宇宙、安全保障、レジリエンスの3領域のソリューションを、実際に動くプロトタイプとして紹介しています。

URL:https://catalog.spacebrain.org

関連リリース:

スペースデータ、宇宙空間の脅威を統合的に監視・分析・予測する宇宙AIプラットフォーム「SpaceBrain」を開始(2026年6月22日)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000157.000080352.html

スペースデータ、宇宙・防衛・防災AIを体系化した「SpaceBrain」公式プロダクトサイトを公開(2026年7月24日)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000187.000080352.html

今後の展望

スペースデータは、宇宙天気をはじめ、SpaceBrainが扱う宇宙の現象について、仕組みを物理シミュレーションで確かめられるデモを拡充します。

株式会社スペースデータについて

株式会社スペースデータは、宇宙を誰もが活用できるインフラへと変える「宇宙の民主化」を使命に、宇宙をはじめとするあらゆる空間の知能化(MAKE SPACE INTELLIGENT)に取り組むテクノロジースタートアップです。

空間を情報化し、AIに物理を学ばせ、機械が自律的に動けるようにする「空間知能」の技術を活用して、宇宙開発から都市開発、防災、安全保障まで、次の未来を支えるデジタルプラットフォームの構築を国内外で進めています。

スペースデータの公式サイトでは、「NEWS」にて最新の取り組みや発表をご紹介しています。詳細は https://spacedata.jp/news をご覧ください。

社名:株式会社スペースデータ

代表:佐藤航陽

所在地:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 15階

資本金:15億1300万円

事業内容:宇宙開発に関わる投資と研究

HP:https://spacedata.jp

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LinkedIn:https://www.linkedin.com/company/spacedatajp/

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業種
情報通信
本社所在地
東京都港区虎ノ門 1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 15階
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代表者名
佐藤 航陽
上場
未上場
資本金
15億1300万円
設立
2017年01月