騒音・粉じんを抑えて環境に配慮した鉄筋ケレン技術『Laser Surface Refine工法(LSR工法)』を研究開発、現場実装
日本大学(東京都千代田区:学長 大貫進一郎)、飛島建設株式会社(東京都港区:代表取締役社長 築地功)、株式会社光響(京都府京都市:代表取締役CEO 住村和彦)、PCL株式会社(京都府久世郡:代表取締役 石橋克人)は、鉄筋コンクリート構造物の断面修復工事における鉄筋の錆とモルタルを除去する画期的な鉄筋ケレン技術「LSR工法」を共同で開発しました。鉄道高架橋における補修工事に適用し、安全性、周辺環境及び作業環境が大幅に向上することを確認しました。
■研究開発の背景対応
現在、国内での社会基盤施設の老朽化が叫ばれている中、コンクリート構造物の維持管理においては、劣化が進行している構造物への対応が急務です。劣化を生じた鉄筋コンクリート構造物を維持する方法の一つに断面修復工事があります。この断面修復工事を市街地で施工する際には、周辺環境および作業環境に留意が必要であり、ジェットタガネ等の電動工具を用いた鉄筋ケレンでは騒音レベルが用地境界の規制値を超え、施工が実施できない場合がありました。このような社会背景を受け、日本大学生産工学部、飛島建設、光響とPCLは、騒音・粉じんを抑えて周辺環境および作業環境に配慮した鉄筋ケレン技術について共同研究開発を進め、この度、その研究開発成果である「LSR工法」を完成し、現場での適用を開始しました。

■鉄筋ケレン技術 『LSR工法』 概要
鉄筋の腐食によるひび割れや浮きが発生したコンクリート構造物に対して、劣化部分をはつり落とし、除去した部分を修復する工法があります。この工法は断面修復工法と呼ばれ、その作業フローには、腐食した鉄筋の錆を除去(以下、ケレンと称する)し、防錆剤を塗布する工程があります。固定足場を設置し、施工箇所周辺を防音シートで覆った状態での施工が可能であれば、電動工具を用います。しかし、施工箇所を防音シートで覆うことが難しい場合、特に、住宅や店舗が密集する地域では、施工時の騒音や粉じんが問題となり、作業する時間などに配慮した施工が行われております。
そこで、周辺環境および作業環境の改善を目的として、橋梁の塗り替え工事などにおいて実績がありました、レーザー光を用いて塗膜及び錆を除去する技術に着目し、サンドブラスト、ジェットタガネやカップブラシなどの代替としてレーザー照射によるケレンに関する研究開発を共同で進めてまいりました。その研究開発の成果である「LSR工法」は、パルスレーザーによって錆の除去とともに、鉄筋に付着しているモルタルを脆弱化させ、最終的にカップブラシで仕上げる工法であります。これにより、鉄筋ケレンの騒音、粉じんの発生を低減することができ、周辺環境及び作業環境の向上を可能としました。
主な特長:
➢ 従来工法(ジェットタガネを用いたケレン)と比較して、騒音・粉じんの発生を大幅に低減できる。
➢ 特別な技能を必要とせず、最終的な仕上がりは従来工法と同等である。
➢ 付属の装置を装着することにより、鉄筋の裏側についても施工可能である。
➢ レーザー照射によって、対象物であるコンクリート、鉄筋が変質しない。
➢ 装置本体が軽量であり、高所作業車上で作業可能である。
➢ 従来工法と比較して、施工時間は1.5倍程度である。
LSR工法の機械構成:
LSR工法の機械構成及び諸元を表-1に示します。また、レーザーヘッドを写真-2に、レーザー本体を写真-3に示します。


■現場適用事例
鉄道高架橋補修工事における床版張り出し部での適用事例について紹介します。

(1) 仕上がり
ケレン前後の状態を写真-5に示す。LSR工法のみで全てのモルタルを除去することはできませんが、照射後にカップブラシで仕上げることで、従来工法と同程度の仕上がりを確保することができました。

(2) 作業速度
単位面積当たりの最終仕上げまでの要した作業時間は、LSR工法が3時間/m2、従来工法が2時間/m2となり、LSR工法は従来工法と比較して1.5倍作業時間が長くなりました。生産性向上のために、自動化などの検討を進める計画です。
(3) 粉じんおよび騒音
騒音の測定結果を図-1に、粉じんの測定結果を図-2に示します。LSR工法は、騒音が従来工法のタガネと比較して26%低減でき、粉じんが53%低減されたことが確認されました。

■今後の展望
共同研究開発した「LSR工法」は、鉄筋コンクリート構造物の断面修復工事において、レーザーによって鉄筋の錆とモルタルを除去するケレン技術であり、騒音・粉じんを抑えて環境に配慮した技術であることから、断面修復工事を市街地で施工する際には有効な技術であると考えています。日本大学、飛島建設株式会社、株式会社光響およびPCL株式会社は、この「LSR工法」の改良、普及および活用を推進し、橋梁をはじめとする全ての鉄筋コンクリート構造物の維持管理の推進に貢献していきます。
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