在庫増加でも流動性を維持? 湾岸タワマンはオーナーチェンジに注目

マンションリサーチ株式会社

【調査概要】

■調査期間:2023年1月から2026年月までの期間

■調査機関:マンションリサーチ株式会社

■調査対象:中央区に所在する中古タワーマンション

■サンプル事例数:9,063件の取引事例

■調査方法:一般に公開されている中古マンションの売り出しデータを収集し、独自の統計手法を用いて分析・集計を行いました。

勝どき・晴海・月島などで積み上がる中古在庫 

昨今、中央区の湾岸エリアにおけるタワーマンション市場では、これまでとは明らかに異なる動きが見られるようになっています。特に目立つのが、中古タワーマンションの在庫増加と、それに伴う価格調整です。

中央区の湾岸エリアといえば、勝どき、晴海、月島、豊海などを中心に、タワーマンションが集積する東京を代表する住宅エリアの一つです。これまで価格上昇が続いてきたことから、「湾岸タワーマンションは売りに出せば売れる」というイメージを持つ方も少なくありません。

しかし、現在の市場をデータから見ると、必ずしもそのような状況ではありません。売り出される物件が増える一方で、買い手がすべてを吸収できなくなり、在庫が積み上がっています。そして、一部の物件では売主が価格を引き下げる動きも目立つようになってきました。

ただし、ここで重要なのは、「タワーマンション」という一つのカテゴリーだけで市場を判断してはいけないということです。

同じ中央区のタワーマンションであっても、実際に居住するために購入する「実需物件」と、賃貸中の状態で売買される「投資用・オーナーチェンジ物件」では、在庫の増え方や売れ方に明確な違いが見られます。

実需タワーマンションは在庫増加と回転率低下が同時進行

まず、中央区における実需のタワーマンションを見てみます。

以下のデータは、中央区の実需タワーマンションについて、在庫数と在庫回転率の推移を示したものです。

出典:福嶋総研

ここでいう在庫回転率とは、一定期間に存在する在庫に対して、どの程度の物件が販売されたのかを示す指標です。簡単に言えば、在庫がどれだけ売れているのかを示す「売れ行き」の指標と考えることができます。

したがって、在庫回転率が高ければ高いほど、在庫に対して成約に至る物件の割合が大きく、需要が強い、あるいは市場で売れやすい状態にあると考えられます。

この数字を中央区の実需タワーマンションについて確認すると、2024年頃から大きな変化が起きていることが分かります。

まず目立つのが、在庫数の継続的な増加です。

2024年頃を境として在庫が大きく増加し、その後も高い水準で推移しています。つまり、市場に売り出される物件が増えているということです。

一方、それと歩調を合わせるように、在庫回転率は大きく低下しています。

これは非常に重要なポイントです。

単純に「在庫が増えている」というだけなら、売り物件が増えた結果として説明することもできます。しかし、在庫が増えると同時に在庫回転率まで低下しているのであれば、供給が増えたことに対して需要の吸収力が追いついていない可能性があります。

つまり、現在の中央区湾岸の実需タワーマンション市場では、「売り物件が増えた」のではなく、「売り物件が増えたものの、それを以前と同じペースでは買い手が吸収できなくなっている」と見る必要があります。

在庫増加が価格調整につながる構造

こうした市場環境になると、売主側にも変化が生じます。

以前であれば、多少時間がかかったとしても、周辺の成約事例を参考にした強気の価格設定で売却を待つことができました。しかし、同じような物件が市場に多数出てくると、買主は複数の物件を比較できるようになります。

特にタワーマンションの場合、同一マンション内や近隣マンションで類似する間取り、階数、方角、専有面積の物件が競合するケースもあります。

そのため、売却を急ぐ売主ほど、周辺の競合物件より価格を下げる必要が出てきます。

そして一件の値下げが周辺物件の価格にも影響し、それを見た別の売主が価格を見直す――という動きが生まれます。

現在見られている急激な値下げの動きは、こうした在庫増加と流動性低下が価格に波及した結果として捉えることができます。

投資用タワーマンションも在庫は増えている

では、実需ではなく、賃貸中の状態で売買される投資用、いわゆるオーナーチェンジのタワーマンションはどうでしょうか。

出典:福嶋総研

こちらも実需物件と同様に、2024年頃から在庫が大きく増加しています。

つまり、「投資用だから在庫が増えていない」というわけではありません。

タワーマンション市場全体において、売り物件が増加しているという点では、実需と投資用に共通した動きが確認できます。

ところが、その後の推移を見ると違いが現れます。

投資用タワーマンションの在庫は2024年頃から増加した後、2025年5月頃をピークとして、その後はおおむね横ばいで推移しています。

実需物件のように在庫が増え続けているわけではありません。

さらに重要なのが在庫回転率です。

投資用タワーマンションについては、在庫回転率に一定のばらつきはあるものの、実需物件ほど大きく低下しておらず、比較的安定した動きを見せています。

つまり、投資用タワーマンションも供給過多の状況にはなっているものの、市場に出てきた物件が一定のペースで売買されていると考えることができます。

オーナーチェンジ物件は「価格の決まり方」が違う

なぜ、同じタワーマンションなのに、実需と投資用でこのような違いが生まれるのでしょうか。

その大きな理由の一つが、価格の決まり方の違いです。

実需マンションの場合、購入者が実際に住むことを前提としているため、駅距離、眺望、階数、間取り、室内状態、周辺環境など、さまざまな要素が価格形成に影響します。

一方、オーナーチェンジ物件の場合は、すでに入居者がいて賃料収入が発生しているため、投資家はその収益性を重要な判断材料とします。

そのため、収益還元法などを用いて、将来得られる収益を基準に価格を判断することになります。

一般的には、同じマンション・同じような専有面積であったとしても、実需で売買される物件と比較すると、オーナーチェンジ物件の価格は低くなる傾向があります。

「同じマンションでも価格が違う」という投資用市場の特徴

さらに面白いのが、同じマンションだからといって、同じ価格になるわけではないという点です。

例えば、同じタワーマンションの同じような広さの住戸であっても、現在設定されている賃料が異なれば、投資家から見た収益性も変わります。

賃料が高ければ収益性は高くなり、逆に賃料が低ければ収益性は低くなります。

また、単純に賃料だけを見ればいいわけではありません。管理費や修繕積立金などのランニングコスト、固定資産税、現在の賃貸契約の内容、契約期間、賃料改定の可能性など、投資家が確認すべき項目は多岐にわたります。

つまり、投資用物件では「マンションそのものの価値」に加えて、現在その部屋がどのような収益を生み出しているのかが価格を左右します。

市場の中に「割安物件」を見つける余地がある

この構造が、現在の市場における投資用タワーマンションの流動性を支えている可能性があります。

実需の場合、購入者の多くは「自分が住みたいか」という感覚的な判断も含めて物件を比較します。そのため、価格が高すぎると判断されれば、購入を見送るという選択につながりやすくなります。

一方、投資用物件では、物件価格と賃料収入から利回りを計算することができます。

そのため、市場にある物件を一つ一つ精査していけば、「この条件なら価格が割安なのではないか」と判断できる物件が見つかる可能性があります。

もちろん、利回りだけで投資判断をすることはできません。賃料が相場より高く設定されている場合や、将来的な賃料下落の可能性、修繕積立金の上昇、物件固有のリスクなども考慮する必要があります。

しかし、こうした条件を一つ一つ吟味できることが、投資用市場の特徴でもあります。

「在庫が増えた=売れない」ではない

今回のデータから重要なのは、在庫が増えているという一つの現象だけでは、市場の状態を判断できないということです。

中央区湾岸のタワーマンションでは、実需、投資用の双方で在庫が増えています。しかし、実需では在庫増加とともに在庫回転率が低下しているのに対し、投資用では在庫が一定のところで横ばいとなり、在庫回転率も比較的安定しています。

これは、同じ「在庫増加」であっても、その背景にある需要構造が異なることを示唆しています。

実需市場では、価格上昇によって購入できる層が限定される一方、売主側には高い価格への期待が残っている可能性があります。その結果、売り出し価格と買主が受け入れられる価格との間にギャップが生じ、在庫が積み上がりやすくなります。

一方、投資用市場では収益性という比較的明確な基準があるため、価格と収益のバランスが取れた物件については、現在のような市場環境でも投資家から選ばれる余地があります。

これからは「タワーマンション」という括りだけでは見えない

今後、中央区湾岸のタワーマンション市場を見るうえでは、「価格が上がった」「在庫が増えた」「値下げが増えた」という表面的な数字だけを見るのでは不十分です。

重要なのは、誰が売り、誰が買い、どのような価格形成によって売買されているのかという点です。

実需については、在庫回転率の低下がどこまで続くのか。そして、現在積み上がっている在庫が今後どの程度価格調整を受けるのかが重要になります。

一方、投資用については、賃料と物件価格のバランス、つまり収益性が今後どのように変化するのかを見る必要があります。

中央区湾岸のタワーマンションは、これまで「値上がりするマンション」という一括りで語られることが多かったエリアです。

しかし現在は、同じエリア、同じタワーマンションでも、実需と投資用で市場の動きが大きく異なる局面に入っています。

だからこそ、これからのマンション選びでは「このマンションは人気があるのか」だけではなく、「その物件は実需なのか投資用なのか」「現在の価格は何によって決まっているのか」「在庫に対してどれだけ売れているのか」という視点が、これまで以上に重要になってくるのではないでしょうか。

筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)

マンションリサーチ株式会社

データ事業開発室 

不動産データ分析責任者

福嶋総研

代表研究員

福嶋総研代表研究員。早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、

建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。

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会社名: マンションリサーチ株式会社

代表取締役社長: 山田力

所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階

設立年月日: 2011年4月

資本金 : 1億円

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会社概要

マンションリサーチ株式会社

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業種
サービス業
本社所在地
東京都千代田区神田美土代町5−2 第2日成ビル 5階
電話番号
03-5577-2041
代表者名
山田 力
上場
未上場
資本金
1億円
設立
2011年04月