自然界でも“個性”が重要! ―「おっとり型」と「せかせか型」の共存が集団のパフォーマンスを高める―

千葉大学大学院理学研究院の高橋佑磨(特任助教)は、東北大学大学院生命科学研究科の田中良弥(博士後期課程学生・日本学術振興会特別研究員)、山元大輔(教授)、河田雅圭(教授)、高知大学総合科学系生命環境医学部門の鈴木紀之(准教授)と共同で、ショウジョウバエにおける集団内の行動の個性の多様さが集団の生産性や安定性を高めることを発見しました。
  • 【要点】
■集団内の多様性(ダイバーシティー)や個性の役割や機能は、充分にわかっていなかった。
■ショウジョウバエに見られる「おっとり型」と「せかせか型」を用いて多様性の機能を検証した。
■個性の多様性には「集団全体の生産性や安定性を高める効果」があることを発見した。

 
  • 【研究の背景:個性にはどんな機能があるか?】
生物の集団内の多様性(ダイバーシティー)が集団に対してどのような機能を果たすかはほとんど調べられていませんでした。モデル生物のキイロショウジョウバエには、遺伝子に支配された2つの個性(おっとり型、せかせか型)が共存することが知られています(図1)。
千葉大学大学院理学研究院の高橋佑磨特任助教を中心とする研究グループは、東北大学と高知大学との共同研究で、個性の多様さが集団の生産性や持続性に与える影響を検証しました。

図1.キイロショウジョウバエの幼虫には、活発に動いて餌を探索するタイプ(せかせか型)とあまり動かずに餌を探すタイプ(おっとり型)が存在する。図1.キイロショウジョウバエの幼虫には、活発に動いて餌を探索するタイプ(せかせか型)とあまり動かずに餌を探すタイプ(おっとり型)が存在する。

  • 【研究の成果:個性は競争を緩和し、生産性を高める】

餌をめぐる競争において少数派(マイノリティー)のタイプが有利になることの知られている環境(※1)とそうでない環境を実験的に作り出して2つの個性を単独、あるいは混合して飼育して生産性(生存率や集団全体の重量)を比較したところ、少数派が有利になれる環境に限り、個性に多様性のある集団の生産性が多様性のない集団より高くなりました(図2)。餌を探索する行動に個性があることで資源をめぐる集団内の競争が緩和されたことが、その原因の一つだと考えられます。また、多様性のある集団ほど環境条件を変えても安定して高い生産性を保つこともわかりました。これらは、数理モデルによっても裏付けられました。一連の結果は、少数派が有利になり多様性が共存しやすい環境(※2)では、集団内の個性の多様さには、集団の生産性や持続性を向上させる効果が現れることを示唆しています。

図2.2つの個性を混ぜたときに、単独状態よりも集団の生産性が向上した。図2.2つの個性を混ぜたときに、単独状態よりも集団の生産性が向上した。注釈
1. 本種では、餌に含まれる栄養が少ないほど少数派のタイプが多数派のタイプより生存上有利になることが知られています。本研究では、栄養の少ない条件と多い条件で、2つのタイプを単独、あるいは混合して飼育する実験を行ないました。
2. 遺伝的な多様性や個性は、それぞれのタイプが少数派になったときに有利になれる場合にのみ集団中に維持されます(=共存できる)。したがって、本研究では、「少数派が有利になれる条件」と「多様性が共存できる条件」は同じことを意味します。

  • 【今後期待されること】
多様性の機能の理解は、生物の効果的な保全や農作物の生産効率の向上、社会での多様性の効果的活用に貢献すると期待されます。

本研究の成果は、英国科学誌Proceedings of the Royal Society B:Biological Sciences電子版(1月17日号)に掲載される予定です。

詳細な解説: http://life.s.chiba-u.jp/takahashi/?page_id=712

論文情報の詳細
掲載誌/Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences(論文発表日時:2018年1月17日、09:00 [日本時間])
タイトル/Balanced genetic diversity improves population fitness
著者/Yuma Takahashi, Ryoya Tanaka, Daisuke Yamamoto, Suzuki Noriyuki and Masakado Kawata
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