2025年、東京の基準地価に新たな動き ~都心区の旺盛な上昇傾向が隣接する城北・城東エリアに波及~
グローバル都市不動産研究所 第36弾(都市政策の第一人者 市川宏雄氏監修)

投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(本社:東京都渋谷区、以下GLM)は、(1)東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、(2)不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授 市川宏雄 氏を所長に迎え、「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」を2019年1月1日に設立しました。
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当研究所では、調査・研究の第36弾として、2025年9月に公示された最新の全国基準地価格をもとに、東京都の基準地価の動向をオフィスビル需要やマンション供給の状況をまじえて詳細に分析した結果を紹介します。


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【01】全国、三大都市圏の基準地価の動向 |
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・全国の全用途平均は前年比1.5%プラス、バブル以降最大の上昇率に
・東京圏・大阪圏では商業地・住宅地ともに上昇幅の拡大が続く
2025年7月1日時点の土地の基準地価格(基準地価)が、9月下旬に国土交通省及び各都道府県から公表されました。基準地価とは、国土利用計画法に基づき、都道府県知事が毎年1回基準地の価格調査を実施するもので、土地の価格動向を的確に把握する上で、国が評価する毎年1月1日時点の公示地価に対し、相互補完的な地価調査として位置づけられています。
2025年の基準地価によると、全国の住宅地・商業地を含む全用途平均で前年比1.5%上昇と4年連続の上昇となり、上昇率は1991年(3.1%)以来の高さとなりました【表1】。

用途別では、商業地の全国平均で2.8%(前年2.4%、以下( )内の数値は前年変動率)上昇し、主要都市で店舗・ホテルなどの需要が堅調なほか、オフィスも空室率の低下や賃料の上昇傾向を受けて収益性が向上していることから地価上昇が継続しています。とくにインバウンド旅行者が増加した観光地等では引き続き高い上昇を示しており、長野県白馬村のメインストリートでは29.3%(30.2%)と高い上昇をみせています。
住宅地の全国平均でも1.0%(0.9%)上昇し、東京圏や大阪圏の中心部で高い上昇を示しているほか、沖縄県宮古島市など別荘・コンドミニアムや移住者・従業員向けの住宅需要を背景としたリゾート地域や、茨城県つくば市・千葉県流山市など子育て環境の整備により転入者が多く堅調な住宅需要に支えられた地域では引き続き高い上昇をみせています。
また、大手半導体メーカー・ラピダスの工場が進出する北海道千歳市の千歳駅付近の商業地では31.4%上昇ともっとも高い上昇率を示し、住宅地や工業地でも高い上昇となっています。
三大都市圏では、全用途平均4.3%(3.9%)上昇と上昇幅が拡大し、地方圏でも0.4%(0.4%)上昇と上昇傾向が続いています。東京圏、大阪圏では商業地、住宅地とも上昇幅が拡大しましたが、名古屋圏では住宅地、商業地とも上昇は継続しているものの伸びは鈍化しています。
このうち東京圏は、商業地で8.7%(7.0%)上昇と13年連続で上昇し、上昇幅が拡大しています。東京圏の都心・主要駅付近では再開発事業によりオフィスと複合商業施設との一体開発等が進展し、コロナ禍後のインバウンド・観光需要回復による集客力向上も相まって、力強い地価上昇につながっています。
住宅地でも3.9%(3.6%)上昇と5年連続で上昇し、上昇幅が拡大しています。全国から東京圏への人口流入や、都心部を中心とした堅調な住宅需要により、上昇幅がさらに拡大したものとみられます。

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【02】東京都内の基準地価の動向 |
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・都心部を中心として商業地・住宅地いずれもコロナ禍前を大きく超える上昇幅に
・一方で2025年後半期は前半期の伸び幅を下回り、上昇スピードはピークアウト傾向
東京圏における基準地価動向をさらに詳細にみると、東京圏の中でも東京都、とりわけ東京都区部の地価上昇が際立っていることが分かります【表2、図1】。

注)都心5区 … 千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区
その他区 … 都心5区を除く区部

東京都区部の基準地価は、2013年以降、商業地、住宅地とも上昇を続け、2019年に商業地で8.4%上昇、住宅地で4.6%上昇を記録した後、いったんコロナ禍に見舞われますが、2025年には商業地で13.2%(9.7%)上昇、住宅地で8.3% (6.7%)上昇となり、すでに2019年時点を大きく上回る上昇幅となっています。
とくに都心5区では、2025年に商業地で14.8%(10.7%)上昇、住宅地で12.9%(9.6%)上昇であり、商業地、住宅地とも都心部の上昇率の高さが目立っています。
ただし、地価公示の標準地と同一地点である基準地(共通地点)で、2025年の前半期(2024年7月1日~2025年1月1日)と後半期(2025年1月1日~7月1日)に分けて地価変動率をみた場合、東京都全域における商業地は前半期5.7%上昇・後半期5.3%上昇、住宅地は前半期3.5%上昇・後半期3.4%上昇と、いずれも前半期に比べて後半期は上昇幅が縮小しています【表3】。

区部では商業地は横ばいながら住宅地の上昇率はやや縮小、多摩地区では住宅地は横ばいながら商業地の上昇率は大きく縮小している状況となっています。東京都区部を中心とした力強い上昇は継続しているものの、2025年後半期にかけてその上昇スピードはややピークを迎えはじめたと言えるでしょう。

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【03】東京23区別にみた基準地価動向 |
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・商業地は台東区(18.2%)を筆頭に18区で10%超、観光需要回復や再開発を背景に
・住宅地は新築マンション供給が進む都心区や東部の隣接区の伸びが外縁部を引き離す
次に、東京23区別の基準地価の動向をみていきます。
商業地においてはすべての区で上昇幅が拡大し、上昇率が10%を超えた区は18区となり前年より7区増えています【表4】。

上昇率がもっとも高い区は台東区18.2%(12.5%)であり、中央区16.7(10.0%)、千代田区16.2%(11.3%)、杉並区16.1%(10.9%)、中野区15.5%(11.1%)が続いています。
都心5区(いわゆる東京ビジネス地区)ではオフィスビルの平均空室率が3%以下に低下し、平均賃料も坪当たり2万1,000円台に回復するなど堅調なオフィス需要に支えられ【図2】、千代田区、中央区のほか、港区12.9%(9.0%)、新宿区14.4%(11.0%)、渋谷区13.5%(13.1%)も総じて高い上昇率をみせています。

こうした都心区を中心とする極めて高い地価の上昇が周辺区にも広がり、JR中央線沿線の商業地を抱える杉並区や中野区でも15%を超える上昇となっています。また、北区14.4%(11.6%)、江東区14.2%(9.3%)、荒川区13.9%(10.8%)など、都心近くの城東・城北エリアで高い上昇をみせているのも特徴と言えます。
23区内の基準地(商業地)で上昇率がもっとも高かったのは、台東区浅草1丁目(27.4%上昇)で、2位は同区西浅草2丁目(25.2%上昇)です。浅草周辺はインバウンドを含めた観光客の増加により、店舗や飲食店の需要増加に加え、ホテル建設などが進んでいることが高い上昇率の要因と言えるでしょう。また、上位10位内に中央区が5地点ランクインしていますが、銀座や築地、京橋、新富町などの駅周辺でホテルやオフィスの需要が高いことを表しています【表5-1】。

注)同じ変動率で順位が異なるのは、小数点第2位以下の四捨五入によるもの。
住宅地においてもすべての区で上昇幅が拡大し、上昇率が10%を超えた区は12区となり前年より10区増えています【表4】。
上昇率の順位は港区13.7%(9.2%)と目黒区13.7%(9.6%)が同率でトップ 、台東区13.4%(7.2%)、中央区13.3%(12.4%)、品川区12.9%(9.1%)、新宿区12.7%(8.7%)が続いています。都心区やこれに隣接した目黒区、品川区、文京区12.2%(8.4%)のような交通利便性や住環境に優れた区ではマンションや戸建住宅の需要が旺盛で、極めて高い上昇をみせています。墨田区11.8%(8.5%)、江東区10.5%(8.1%)、荒川区9.9%(8.3%)、北区8.9%(8.0%)などの都心近くの城東・城北エリアも、商業地と同様に高い上昇となっています。
なお、23区内の基準地(住宅地)で上昇率がもっとも高かったのは、JR飯田橋駅と市ケ谷駅の間で神楽坂に隣接した新宿区市谷船河原町15.9%であり、渋谷区神宮前3丁目15.7%、港区赤坂1丁目15.6%が続いています。また、渋谷区猿楽町(代官山駅付近)や品川区北品川5丁目(御殿山付近)、豊島区高田3丁目(目白駅付近)、文京区小石川5丁目などの高級住宅街がやはり続く中で、江東区有明1丁目や中央区月島3丁目といった再開発が進む臨海部も上位に入っています【表5-2】。

注)同じ変動率で順位が異なるのは、小数点第2位以下の四捨五入によるもの。
一方、23区のうち外縁部である葛飾区5.0%(4.4%)、江戸川区5.1%(4.8%)、練馬区5.4%(4.5%)、足立区6.0%(5.1%)、世田谷区6.5%(5.5%)は、都心区及び都心隣接区の地価上昇の波及を受け、上昇幅は拡大しているものの比較的小さな上昇に留まっており、都心区などとの二極分化がやや進みはじめていると言えます。
最近の東京23区の新築分譲マンション市況をみると、2025年上半期(1~6月)に1戸当たり平均価格が1億3,064万円、1㎡当たり単価が201.5万円となり高騰を続ける中で、供給戸数は2024年以降急激に減少しています【図3】。

資材価格の上昇や人材不足などの影響で建築費高騰が続く中、23区内では都心区など立地の優れた場所にマンション供給を絞り込む傾向が強くなっていることも影響していると考えられます。都区部内で顕著になりつつある「西低東高」の傾向は今後も続くのか、要注目と言えそうです。

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【04】都市政策の第一人者 市川宏雄所長による分析結果統括 |
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・都心の地価高騰、周辺区へ波及―二極化が鮮明に
・住宅・商業地ともに過去最大の上昇幅、ピークアウトの兆しも
全国の全用途平均地価は前年比1.5%のプラスで、三大都市圏では4.3%と上昇率はバブル期の1991年の3.1%以来の大きさです。用途別では、店舗・ホテルなどの需要が堅調で、商業地が全国平均で2.8%、三大都市圏で7.2%上昇しています。
大手半導体メーカーの工場が進出する北海道の千歳駅付近の商業地では31.4%も上昇し、住宅地や工業地でも高い上昇となっています。
三大都市圏の中で東京圏は商業地で8.7%と13年連続で上昇、住宅地でも3.9%と5年連続で上昇しました。地方圏では商業地で1.0%、住宅地で0.1%と小幅ですが、沖縄の宮古島などリゾート地域や子育て環境で人気の大都市の郊外ではより上昇しています。
東京都区部の地価は、2013年以降、商業地、住宅地とも上昇を続け、2019年に商業地で8.4%、住宅地で4.6%上昇を記録。コロナ禍で低下したものの、2025年には商業地で13.2%、住宅地で8.3% と回復しました。とくに都心5区では、2025年に商業地14.8%上昇、住宅地12.9%と高い上昇でしたが、2025年後半期にややピークを迎えはじめています。
商業地では台東区(18.2%)を筆頭に18区で10%超で、観光需要回復や再開発を背景として外縁部を引き離しています。また、都心区の極めて高い地価の上昇が影響し、JR中央線沿線の商業地を抱える杉並区や中野区で15%を超える上昇、それに次いで北区、江東区、荒川区など都心近くの城東・城北エリアで高い上昇となっています。
住宅地もすべての区で上昇幅が拡大し、変動率が10%を超えた区は12区となり、港区と目黒区が13.7%と同率でトップ 、それに台東区、中央区、品川区、新宿区が続きます。都心区の影響を受けて上昇幅は拡大しているものの、葛飾区、江戸川区、練馬区、足立区、世田谷区では5.0%~ 6.5%と半分ほどの伸びとなっており、都心区などとの二極分化がみえます。
最近の東京23区の新築分譲マンション市況は、2025年上半期に1戸当たり平均価格が1億3,064万円、1㎡当たり単価が201.5万円ですが、供給戸数が2024年以降急激に減少しているために価格高騰に拍車をかけています。その結果、マンション価格の上昇率は過去10年以上にわたって地価の上昇率を上回っています。


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会社概要 |
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会社名 :株式会社グローバル・リンク・マネジメント
会社HP :https://www.global-link-m.com/
所在地 :東京都渋谷区道玄坂1丁目12番1号渋谷マークシティウエスト21階
代表者 :代表取締役社長 金 大仲
設立年月日 :2005年3月
資本金 :6億10百万円(2025年6月末現在)
業務内容 :不動産ソリューション事業(投資用不動産の開発、再生、土地企画)
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