インテージ、生成AIの利用実態に関する複合的調査を実施
利用率は上昇傾向も、いまだ高い利用のハードル 学生と上位の役職者で積極的な活用が見られる
株式会社インテージ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:檜垣 歩、以下インテージ)は、メディアログデータ・生活者アンケート・ビジネスパーソンアンケートに基づく生成AIの利用実態に関する複合的調査の結果を公開します。
[ポイント]
・生成AIサービスの利用率は低迷を脱し昨春から上昇に転じるも、いまだ1割弱。単語の認知は広がる一方で、日常生活・ビジネスシーンともに利用は浸透せず
・学生の利用経験率は47.8%で生活者全体(13.1%)を大きく上回る。学業目的の活用が底上げの要因に
・ビジネスへの導入は個人よりも組織から進行。企業規模が大きいほど、上位の役職者ほど活用に積極的な姿勢
インテージの保有するメディアログデータ「i-SSP®」の集計によると、2024年9月時点で、一般生活者全体(以下、TOTAL)における私用PCのWebブラウザを通じた生成AIサービスの月間利用率は8.6%となりました(図表1)。
図表1
2022年11月のChatGPT登場直後から利用率は上昇を始め、23年春に5%を越えました。そこから約1年は伸び悩みましたが、24年4月から再び上昇に転じ、その後は利用率を伸ばし続けています。
学生の利用率はどうでしょうか。こちらは最初期からTOTALと比較して高い水準で推移しており、24年7月には26.7%に達しました。特にテストやレポートの時期(1月・7月)に増加し、長期休暇期間(3月・9月)に下がる傾向が顕著にみられます。学業と関連して生成AIサービスを活用している様子が見られる一方で、利用が減少している24年9月でも利用率が19.1%(前年同月差+8.8ポイント)となっており、学業以外の日常生活でも利用が増えているようです。
利用実態をより掘り下げて理解すべく、生活者2万人を対象に、日常生活での生成AI利用に関するアンケート調査を実施しました。ここではTOTALと学生それぞれの生成AIの利用状況と利用意向を面積で表しています(図表2)。その結果によると、学生の約半数(47.8%)が生成AIを利用しており、i-SSPログデータと同様に、生成AIを積極的に活用している実態が確認されました。一方、TOTALでは、生成AIという単語の認知率は学生と同程度であるものの、利用経験者は学生よりも大幅に少ないことが分かります。生成AIは、先進的な取り組みが注目されがちですが、多くの生活者にとって未だ身近な存在とは言えません。企業や開発者は、このギャップを理解したうえで、生活者のニーズに合わせたサービスや情報の提供を行う必要がありそうです。
図表2
さらに、生成AIの利用経験者に対し複数回答で利用目的を聴取したところ、TOTALでは「文章の作成・改善」「情報収集のサポート」「翻訳」「文章の要約」の4項目での活用が特に多くなっています(図表3)。また、TOTALと学生の比較では、「文章の作成・改善」「翻訳」「文章の要約」で学生の利用が多い結果となりました。図表1と同様に、学業関連目的に対して生成AIを活用している様子が想像できます。
図表3
上記の生活者調査と並行して、ビジネスパーソン2万人を対象に、生成AIのビジネスへの活用状況に関する調査を実施しました。まず、現在の生成AIの導入状況について活用・導入・導入検討・非検討の4段階で聴取した結果をまとめました(図表4)。いずれのセグメントにおいても活用ができているという回答は5%に満たず、6割以上が「導入の予定もない」と回答しています。このことから、日常生活と同様に、ビジネスシーンでも生成AIの利用は限定的であることが確認されます。また、その差はわずかですが、「会社・組織全体」「所属部署」「個人の業務」の順に導入の進行度が高いことから、現状ではビジネスパーソン個人の主導よりも組織全体からの働きかけによって導入を進めている様子もうかがえます。
図表4
図表4の「ご自身の業務における導入状況」を基に、勤め先の従業員数と職位のセグメントごとに比較を行いました(図表5)。全体的な傾向として、勤務先の従業員規模が大きく、また職位が高いほど生成AIの導入を進めており、特に従業員規模が大きくなると職位間の差が顕著になることが確認されました。職位の高いビジネスパーソンを中心にアンテナを高く張り、積極的な活用を試みる姿勢が見える一方で、一般社員との意識の乖離とそれを埋めるためのアプローチも課題となりそうです。
図表5
職位間の比較においては、今後の生成AIに関する展望についても異なる特徴が見られました(図表6)。生成AIを導入しているビジネスパーソンに対し「あなたの業務が今後どれだけ生成AIに置き換えられると思うか」をたずねたところ、置換度合を「大・極大」と予想する回答は少数にとどまりました。一方で、「極小」と予想したビジネスパーソンの割合は職位が高いほど大きく減少しています。職位の高いビジネスパーソンでは、生成AIの能力や将来性を深く理解し、自身の意思決定をサポートするツールとして有効活用できる可能性を認識していることが、背景にあると考えられます。
図表6
インテージでは、今回の調査以外にも生成AIを活用した調査手法の開発などさまざまな研究活動を行っています。今回調査の詳細な結果は、弊社コンテンツサイト「知るギャラリー」にて随時公開してまいります。こちらもご覧ください。
使用したデータ
当社の主力サービスであるSCI®(全国消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォンからのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関するデータを収集するものです。当データから、パソコン・スマートフォン・テレビそれぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。
・生活者調査
調査地域:日本全国
対象者条件:18~75歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=21,255 ※国勢調査にもとづき性別・年代・地域を母集団構成に合わせて回収
調査実施時期:2024年10月28日(月)~11月05日(火)
・ビジネスパーソン調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~65歳の男女(有職者)
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」のビジネスパーソンパネルより抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=20,498
調査実施時期:2024年10月25日(金)~11月05日(火)
株式会社インテージは1960年に創業。インテージグループとしてアジアNo.1*であるマーケティングリサーチ/インサイト事業に加えてマーケティングソリューション事業を展開し、9か国の海外拠点とともに国内外の企業・団体のマーケティング活動を総合的に支援しています。事業ビジョンとして“Create Consumer-centric Values”を掲げ、深い生活者理解とデータ活用の高度化による顧客企業支援を通じ、生活者の幸せの実現を目指しています。
*「ESOMAR's Global Top-50 Insights Companies 2024」に基づく(グループ連結売上高ベース)
【報道機関からのお問い合わせ先】
■株式会社インテージ 広報担当:下河原(しもがわら)/依田(よだ)/川口(かわぐち)
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