女王蜂由来乳酸菌M1菌でつくられる「発酵ローヤルゼリー」が免疫機能を維持・強化する可能性

食品で唯一、M細胞を増加させ、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化させることが明らかに、さらに、マクロファージ貪食能、IgA抗体分泌促進も確認

株式会社 山田養蜂場

株式会社山田養蜂場(所在地:岡山県苫田郡鏡野町、代表:山田英生)の自社研究所である、山田養蜂場 健康科学研究所(所在地:同上)は、神戸大学大学院農学研究科、熊本大学大学院生命科学研究部の研究グループとの共同研究にて、女王蜂由来乳酸菌M1菌が、ローヤルゼリーに含有される10-ヒドロキシ-2デセン酸(以下、デセン酸)を全て10-ヒドロキシデカン酸(以下、デカン酸)に変換できること、Lactobacillus panisapiumに属する新しい菌であることを明らかにし、この菌を「Lactobacillus panisapium M1」と命名しました(以下、M1菌)。また、M1菌で発酵することでデカン酸量を増加させた「発酵ローヤルゼリー」を開発し、発酵ローヤルゼリーが、腸管免疫の"門番"であるM細胞を増加させ、マクロファージ貪食能、およびIgA抗体分泌を促進することを確認しました。

さらに、"免疫の司令塔"であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を直接活性化することも明らかになり、免疫機能を維持・強化する可能性を示しました。

本研究成果は、Food Science & Nutrition. 2025; 13(2):e70041.、および日本農芸化学会2025年度大会(2025年3月4日~8日開催)にて発表いたしました。

【研究背景と目的】

厚生労働省によると、2020年1月から2024年5月までの新型コロナウイルス感染者数は約3,300万人、国立感染症研究所によると、インフルエンザは2023-2024年のシーズンだけで約1,800万人が感染しており、いまだ感染対策が求められています。

当社は、熊本大学との共同研究により、ローヤルゼリー中の10-ヒドロキシデカン酸(デカン酸)が、腸管免疫で"門番"として働く「M細胞」の分化を誘導し、病原体の侵入を防ぐ「IgA抗体」の産生を促進することを明らかにしています。デカン酸は自然食品ではローヤルゼリーにしか含まれない特長成分ですが、ローヤルゼリー中のデカン酸は約0.4%と多くはありません。化学合成ではなく、自然由来の方法でデカン酸生成を実現したいと考え、様々な研究を続ける中で、ローヤルゼリー中に約1.6%含まれ、構造が似ている10-ヒドロキシ-2-デセン酸(デセン酸)を、微生物の発酵により、全てデカン酸に変換することができれば、ローヤルゼリー中のデカン酸量を増加させることができると仮説を立てました。

本研究では、デセン酸をデカン酸に変換できる女王蜂由来乳酸菌の探索・同定と、女王蜂由来乳酸菌で発酵し、デカン酸濃度を高めた「発酵ローヤルゼリー」の免疫に対する作用を調べることを目的としました。

【女王蜂由来乳酸菌M1菌同定の試験方法と結果】

■女王蜂由来乳酸菌M1菌の同定と、発酵ローヤルゼリーの開発

女王蜂や働き蜂、蜂の子から採取した157株の乳酸菌の中から、ローヤルゼリー中の10-ヒドロキシ-2-デセン酸(デセン酸)を全て10-ヒドロキシデカン酸(デカン酸)に変換する、女王蜂由来の菌「M1菌」を見つけ出しました。神戸大学との共同研究で、M1菌の分類や、遺伝子配列、細胞中の脂肪酸含有量、糖代謝能力を調べた結果、Lactobacillus panisapiumに属する新しい菌であることを確認し、「Lactobacillus panisapium M1」と命名しました。

M1菌がローヤルゼリー中のデセン酸をデカン酸に変換させるための最適条件を検討したところ、ローヤルゼリーを酵素処理した上で、嫌気条件で発酵することで、デカン酸濃度を5倍に高めたローヤルゼリーを作成することができました。このローヤルゼリーを「発酵ローヤルゼリー」と名付けました。

デカン酸にはM細胞分化促進や、IgA抗体分泌促進作用があることから、発酵ローヤルゼリーにも同様の作用があると考え、次に、免疫に対する作用を調べました。

【免疫に関する試験方法と結果】

発酵ローヤルゼリーの、「M細胞増加」「pDC活性化」「マクロファージ貪食能促進」「IgA抗体分泌促進」

■M細胞分化促進(1)

熊本大学との共同研究で、腸管免疫で"門番"として働き、樹状細胞を活性化させる「M細胞」を増やすか調べました。

【細胞試験】

腸管上皮モデル細胞に発酵ローヤルゼリーを添加して培養したところ、発酵ローヤルゼリーを添加していない条件、発酵前のローヤルゼリーを添加した条件に比べ、M細胞に分化した細胞の数が有意に増加しました。つまり、発酵ローヤルゼリーはM細胞を増加させることが分かりました。

■プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)活性化(2)

M細胞の下流に位置し、"免疫の司令塔"として働く「pDC」を活性化させるか調べました。

【細胞試験】

モデル骨髄細胞を試薬で分化誘導させたpDCを発酵ローヤルゼリー、M1菌で刺激したところ、発酵ローヤルゼリーを添加していない条件に比べ、pDCの活性化マーカーの発現が増えました。つまり、発酵ローヤルゼリーはpDCを直接活性化させ、その関与成分がM1菌であることが分かりました。

【ヒト試験】

20-60歳の健康な人に発酵ローヤルゼリーを4週間飲用してもらい、飲用前後に採血し、血中pDCの活性化マーカーの発現量を解析しました。その結果、発酵ローヤルゼリー飲用後に、血中pDCの活性化マーカーの発現が増えました。つまり、発酵ローヤルゼリーは、ヒトにおいてpDCを活性化する可能性が示されました。

■マクロファージ貪食能促進(3)

pDCによって活性化され、病原体を食べて退治する「マクロファージ」の貪食能を、促進するか調べました。

【細胞試験】

マクロファージ様細胞に発酵ローヤルゼリーを添加して培養しました。その結果、発酵ローヤルゼリーを添加していない条件、発酵前のローヤルゼリーを添加した条件に比べ、異物に見立てた粒子の貪食量が増えました。つまり、発酵ローヤルゼリーはマクロファージ貪食能を促進することが分かりました。

■IgA抗体分泌促進(4)

pDCによって活性化された免疫細胞から産生され、病原体の侵入を防ぐ「IgA抗体」の分泌を、促進するか調べました。

【ヒト試験】

18歳以上の、健康だが唾液へのIgA抗体分泌が少ない人に、発酵ローヤルゼリーを8週間飲用してもらい、唾液へのIgA抗体の分泌速度を調べました。その結果、発酵ローヤルゼリー飲用2、3週間後に、唾液へのIgA抗体分泌が促進され、飲用終了2週間後に低下しました。つまり、発酵ローヤルゼリーは、ヒトにおいてIgA抗体分泌を促進する可能性が示されました。

【まとめと今後について】

本研究により、M1菌の発酵によってデカン酸濃度を高めたローヤルゼリーである発酵ローヤルゼリーは、「M細胞の増加」「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化」「マクロファージ貪食能促進」「IgA抗体分泌促進」といった免疫機能の維持や強化に働きかける可能性が示されました。

発酵ローヤルゼリーは"腸管免疫の門番"M細胞、"免疫の司令塔"pDCの両方に働きかける唯一の食品です。

今後、発酵ローヤルゼリーの免疫に対する作用をさらに追究することで、予防医学の観点に基づき、お客さま一人ひとりの健康寿命を延伸し、社会に貢献してまいります。

山田養蜂場 健康科学研究所

<論文発表情報> 

論文名:Fermented royal jelly enriched with 10-hydroxydecanoic acid and its potential for enhancing mucosal immunity

著者:板谷颯1,2)、八巻礼訓1)、小西花織1)、岡本秀人1,3)、奥村暢章1,3)、重松典宏4)、三隅将吾5)、竹中慎治2)

1) 株式会社山田養蜂場 健康科学研究所、2) 神戸大学大学院農学研究科、

3) 株式会社山田養蜂場 美容科学研究所、4) 株式会社山田養蜂場 研究開発本部、 

5) 熊本大学大学院生命科学研究部

書誌事項・発表日時:Food Science & Nutrition. 2025; 13(2):e70041.  (2025年2月18日発表)

<学会発表情報> 

発表演題名:Royal jelly fermented by Lactobacillus panisapium M1 derived from honeybee queens (Apis mellifera) induced dendritic cell activation.

学会名:日本農芸化学会2025年度大会

発表日:2025年3月5日(水)

発表者: 〇野々部修平1)、小西花織1)、岡本秀人1,2)、板谷颯1)、伊藤隆志1)、奥村暢章1,2) (〇:演者) 

1) 株式会社山田養蜂場 健康科学研究所、2) 株式会社山田養蜂場 美容科学研究所

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会社概要

株式会社 山田養蜂場

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URL
https://www.3838.com/
業種
水産・農林業
本社所在地
岡山県苫田郡鏡野町市場194
電話番号
0868-54-1971
代表者名
山田英生
上場
未上場
資本金
1億円
設立
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