好きな時間に相談できる『産婦人科オンライン』、24時間以内の返信であれば、返信時間がその後の受診行動に大きく影響しないことが明らかに
24時間以内の返信であれば同程度の受診割合 ー国内初、約7400件の相談データを分析ー

■発表のポイント
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産婦人科の非同期型オンライン相談(テキスト形式)で、医師からの返信時間と「返信を待たずに病院を受診する行動」との間に、統計的な関連がないことが示されました。
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返信時間の差や返信前に病院を受診したかどうかは、サービスの満足度(再利用意向)に大きな影響を与えないことも明らかになりました。
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「診療行為ではなく相談である」「返信には最大24時間かかる可能性がある」ことを利用者に理解いただいた上でのサービス提供であれば、有用性・満足度ともに高いことが示されたと考えています。
株式会社Kids Public、日本医科大学の研究グループは、産婦人科領域の非同期型オンライン相談サービス『産婦人科オンライン』のテキスト形式の相談について、相談データ7394件を分析しました。本研究は、予約不要で便利な一方、返信の遅れが利用者の不安を招き、病院受診や満足度低下に繋がる懸念があった非同期型オンライン相談において、医師からの「返信時間」が利用者の「返信前の病院受診」や「満足度」に与える影響を調査したものです。
2021年7月から2023年6月までのデータを解析した結果、返信が概ね24時間以内であれば、返信時間と返信前の病院受診との間に有意な関連はないことが明らかになりました。本成果は、今後の非同期型オンライン相談サービスの適切な設計と運用に貢献することが期待されます。この研究成果は、2025年4月に国際学術誌「DIGITAL HEALTH」に掲載されました。
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/20552076251335379
■本研究の背景、課題
近年、情報通信技術の進化や新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、遠隔健康医療相談(以下、オンライン相談)の活用が急速に拡大しています。オンライン相談には、ビデオ通話などでリアルタイムにやり取りする「同期型」と、メールのように後から専門家が返信する「非同期型」があります。
非同期型オンライン相談は、利用者が時間や場所を選ばずに専門家へ相談できる利便性があります。しかしその一方で、「返信を待つ間に不安になり、結局、医療機関を受診してしまうのではないか」「返信が遅れることで、サービスへの満足度が低下するのではないか」といった懸念点が指摘されていましたが、これまで大規模なデータで検証されたことは世界的にもありませんでした。
■本研究の概要、要点
《解析方法》7394件の大規模相談データを統計的に分析しました
本研究グループは、産婦人科領域に特化した非同期型オンライン相談サービス『産婦人科オンライン』のテキスト形式の相談について、2021年7月から2023年6月までに寄せられた相談7394件の匿名化されたデータを解析しました。
具体的には、相談が送信されてから産婦人科医・助産師が返信するまでの「返信時間」を複数のカテゴリー(0〜5時間、6〜11時間など)に分類。そして、それぞれのカテゴリーで、利用者が返信を受け取る前に「実際に病院を受診した割合」や、利用後アンケートで調査した「サービスの満足度(再利用意向)」に違いがあるかを統計的に分析しました。その際、利用者の年齢や相談内容といった他の要因が結果に影響しないよう調整を行っています。
《結果》返信時間に関わらず、返信前の受診率に統計的な有意差は認められませんでした
分析の結果、返信時間は0~5時間台が最も多く(約4割)、約7割の相談で12時間未満に返信されていました。そして、返信時間が0〜5時間台であっても18〜23時間台であっても、返信前に病院を受診する人の割合に有意な差は認められませんでした。また、全体での満足度(再利用意向)は99.5%で、返信前に病院を受診したことが満足度に影響を与えていないことも分かりました。
加えて、サービス利用後に、予期せぬ容体の急変や重篤な疾患に関連する利用者や医療機関からの連絡はありませんでした。
■研究成果の新規性・独創性
非同期型オンライン相談において、「返信時間」という具体的な指標と、利用者の「実際の受診行動」との関連性を、数千件規模の大規模データを用いて明らかにした研究は、これまでありませんでした。本研究は、サービスの品質や利便性を考える上で返信時間をどのように位置づけるべきか、具体的なエビデンスを示した先駆的な成果と言えます。
■今後の社会的意義、展望
本研究の成果は、非同期型オンライン相談サービスを提供する事業者にとって、サービス設計の重要な指針となり得るでしょう。具体的には、「原則24時間以内に返信が届く」ことを利用者に明確に伝えることで、利用者は安心して返信を待つことができ、不要な病院受診を抑制できる可能性を示唆しています。
今後は、どのような要因が満足度を左右するのか(例:返信内容の質など)をさらに分析するとともに、より長期的な視点での研究も進めていく計画です。これらの研究を通じて、より質の高いオンライン相談サービスの普及、そして妊産婦を含む女性と子どもの心身の健康に貢献していきます。
■用語解説
「非同期型遠隔医療」
医療者と利用者(患者など)がリアルタイムでやり取りするのではなく、患者が送った相談内容(テキストや画像など)を医師等が後から確認して返信する形式の遠隔医療。メールや時差式のチャット形式の相談がこれにあたる。
「同期型遠隔医療」
医療者と利用者(患者など)がビデオ通話などを通じてリアルタイムにコミュニケーションをとる形式の遠隔医療。
■論文情報
タイトル: Evaluation of response time in asynchronous telehealth services in obstetrics and gynecology: A cross-sectional study using a telehealth service user data
著者: Daisuke Shigemi, Rena Toriumi, Ai Ohta, Saki Nakamura, Shunji Suzuki
掲載誌: DIGITAL HEALTH
巻号・ページ: Volume 11
発行年: 2025
DOI: 10.1177/20552076251335379
■会社概要
会社名:株式会社Kids Public
所在地:東京都千代田区神田美土代町11−8 SK美土代町ビル5階
代表者:橋本直也
設立:2015年
従業員数:27名(2024年8月現在)
所属医療者数:269名(2024年8月現在)
URL:https://kids-public.co.jp/
■本プレスリリースに関するお問い合わせ先
株式会社Kids Public 広報担当 春山
TEL:050-1732-0536
Email:pr@kids-public.co.jp
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