2019年3月、性的虐待や強姦事件に相次いで出された無罪判決。先進国のなかでも後れをとっている日本の性暴行関連の刑法の問題点とは?
株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン(取締役社長:干場弓子、本社:東京都千代田区)は2019年8月13日に『なぜ、それが無罪なのか!? 性被害を軽視する日本の司法』(伊藤和子著)を刊行いたしました。
■ 性的虐待や強姦事件に相次ぐ無罪判決、背景にある法律の問題点
2019年3月、性的虐待や強姦事件に相次いで無罪判決が出されました。なぜこれらが無罪なのか? そこには、2017年の刑法性犯罪規定改正を経てもなお残る問題点がありました。
本書は、先進国のなかでも後れをとる、日本の性暴行関連の刑法の問題点を、具体的な判例や話題の事件をもとに浮き彫りにし、改正への提言を行う一冊です。
※巻末には「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧」を収録予定
■ 被害者側に課されている圧倒的に不利な立証責任の実態
2017年、刑法の性犯罪規定が改正され、強姦罪は「強制性交等罪」に、準強姦罪は「準強制性交等罪」に名称が変わり、男性が被害に遭った場合も処罰されることになり、刑も重くなりました。(3年以上の有期懲役→5年以上の有期懲役)。それでも、刑法の規定に「暴行、脅迫」「抗拒不能」などの要件はそのまま残されたため、未だに性被害にあっても泣き寝入りをせざるを得ない人がたくさんいるのです。
それぞれの罪の構成要件を見ると、
「強制性交等罪」では、①暴行・脅迫を用いて、②性交等を行うこと。
「準強制性交等罪」では、①心神喪失又は抗拒不能となった人に対し、②性交等を行うこと
とされています。
「心神喪失」とは、精神的な障害によって正常な判断力を失った状態をいい、「抗拒不能」とは、心理的又は物理的に抵抗ができない状態をいいます。つまり、「抵抗することが著しく困難な場合」にこの構成要件は満たされることになります。
相次いだ無罪判決では、この「心神喪失又は抗拒不能となった」かどうかが争点となり、それが立証できない限り無罪になるような法律になっているのです。
■ 他国はどうなのか―大幅に後れをとる日本の制度
イギリス、カナダ、スウェーデン、ドイツ、米国(一部の州)などでは、不同意の性交をすべて「レイプ」として刑事罰の対象とするなど、被害者の視点に立った性犯罪の定義規定の改正が実際に行われています。アジアでも、韓国や台湾では、性犯罪の成立範囲を拡大する法改正が行われました。
条文上で「暴行、脅迫」「抗拒不能」などの要件を明記し、検察(被害者)側に高い立証のハードルを課している日本の制度は、国際的な潮流からしても時代遅れになりつつあり、被害者を苦しめています。
■ 問題は判決を下す “裁判官” ではなく、あくまでも“法律”。法改正が必須
こうした問題に対して、私たちは何ができるのでしょうか。何を変えていくべきなのでしょうか。
「判例主義」を背景とする日本の刑事裁判においては、上級審の判決が判例として確立していくため、下級審もそれに従うという傾向があります。また、裁判官独立の原則により、法解釈の指示ができるわけでもありません。そのため、上訴制度によって是正と統一が図られているのです。その結果、下級審は上級審と違う判決を出しても、判例の立場が変化しない可能性が高ければ、上級審によって覆されてしまうため、判例が踏襲されやすくなるというサイクルになっているのです。
ここで私たちにできることは、大前提となる法律の改正を求めることです。
- 強制性交等罪における暴行・脅迫/ 心身喪失・抗拒不能の要件を撤廃し、相手からの「不同意」のみを要件として性犯罪が成立するよう刑法を改正すること
- 監護者等性交等罪の適用範囲を18歳以上に拡大し、処罰を重くすること。
- 親族、指導的立場にある者(教師・施設職員等)や上司など地位や関係性を利用した性行為に対する処罰類型を設けること。
- 低すぎる性交同意年齢(13歳)を引き上げ、抜本的に見直すこと
本書では事例を交えながら、上記のポイントをわかりやすく解説します。
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https://d21.co.jp/column/naze_muzai/index.html
【書籍情報】
タイトル:なぜ、それが無罪なのか!? 性被害を軽視する日本の司法
発売日:2019年8月13日
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
仕様:新書判・ソフトカバー/p.288
ISBN: 978-4-7993-2544-5
本体価格:1,000円(税抜)
【著者紹介】
伊藤 和子(いとう かずこ)
弁護士・国際人権NGOヒューマンライツナウ理事・事務局長
1994年弁護士登録、以後、女性、子どもの権利、えん罪事件、環境訴訟など、国内外の人権問題に関わって活動。2004年に日弁連の推薦で、ニューヨーク大学ロースクールに客員研究員として留学。帰国後の2006年、国境を越えて世界の人権問題に対処する日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウ(Human Rights Now)の発足に関わり、以後事務局長として国内外の深刻な人権問題の解決を求め、日々活動している。同団体の主な活動範囲は、女性や子どもの権利擁護、ビジネスと人権に関する問題、アジア地域の人々の自由と尊厳の擁護、紛争下の人権問題など。弁護士活動でも人権、特に女性の権利を焦点に置いて活動。日弁連両性の平等に関する委員会委員長、東京弁護士会両性の平等に関する委員会委員長を歴任。
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