M&Aの譲渡検討理由が多様化。「後継者の不在」から「成長や再編目的」へ。上場企業と非上場企業でM&A専門人材の配置に30%以上の差「2025年度 M&Aの取り組みに関する企業アンケート調査」結果を発表

 日本の経営コンサルティングのパイオニアである株式会社タナベコンサルティング(本社:東京都千代田区・大阪市淀川区、代表取締役社長:若松 孝彦)は、全国の企業経営者、役員、経営幹部、管理職、経営企画部責任者・M&A担当者を対象に実施した「2025年度 M&Aの取り組みに関する企業アンケート調査」の結果を発表いたします。

1.調査結果サマリー

(1)   M&Aに関する検討・実施状況に関して、「譲受(買収)を検討中・実施済み」と「譲受(買収)に興味・関心あり」の合計は過半数に達しており、2023年から一貫して上昇傾向を示しています。一方で、「譲渡(売却)」への関心は約1割にとどまる結果となりました。

(2)   譲渡(売却)検討理由では、かつて過半数を占めていた「後継者不在」が半減し、「自社の成長を目的とした他社とのアライアンス」「会社・事業の再建」などを目的とした多様な理由が上位に並ぶ構図へと変化していることが分かりました。

 

(3)   上場企業と非上場企業の間では、M&A人材の整備状況に明確な差が見られる結果となりました。上場企業では過半数が専門人材を配置している一方で、非上場企業では「知見やノウハウが蓄積されていない」や「今後整備したいが未着手」といった状況が多く、外部に依存する傾向が強いことが明らかになりました。 

2.各データ詳細

(1)業績状況で異なるM&Aの方向性。好調は「譲受(買収)」、不調は「譲渡(売却)」に関心。

 業績が好調な企業では、「会社・事業の譲受(買収)」について「検討・実施」(34.6%)や「関心あり」(53.8%)が突出し、成長を加速させる手段として譲受を志向している結果となりました。一方、業績が不調な企業では「譲渡(売却)」について「検討・実施」(6.9%)や「関心あり」(27.6%)が相対的に高く、再編や撤退を視野に入れていることがうかがえます。業績状況によって、M&Aの方向性が大きく分かれる実態が明らかとなりました。

(2)M&Aへの関心は年々拡大傾向。譲受(買収)志向は高まり、譲渡(売却)は停滞。

 M&Aに関する検討・実施状況を年別に見ると、2025年には「譲受(買収)を検討中・実施済み」(21.7%)と「譲受(買収)に興味・関心あり」(34.8%)を足すと過半数に達しており、2023年から一貫して上昇傾向を示しています。一方で、「譲渡(売却)」についての検討・実施や関心が約1割にとどまり、「検討していない」は31.5%と前年とほぼ変わらない結果となりました。自社の成長を目的とした譲受への関心は、年々高まっていることが分かります。

(3)M&Aを検討していない理由は「自力成長(オーガニック成長)を柱としている」が約7割。

 M&Aを検討していない理由として、「M&Aに頼らない自力成長を柱としている」と回答した企業が69.0%に達し、過去3年間で最も高い割合となりました。前年の49.4%から大きく上昇しており、企業の多くがM&Aを選択肢に含めつつも、自力成長(オーガニック成長)を優先する姿勢を示している企業も一定数いることが分かります。

 

(4)譲渡(売却)検討理由の「後継者不在」が減少し、多様化。

 譲渡を検討したきっかけとしては、「自社の成長を目的とした他社とのアライアンス」(27.3%)が最も多く、「後継者の不在」(22.7%)が続きました。かつては「後継者不在」が過半数を占めていましたが、2023年と比較すると半減しています。また、「会社・事業の再建」(13.6%)や「不採算事業の整理」(13.6%)も一定数挙がっており、単一の要因ではなく多様な理由が上位に並ぶ構図へと変化していることが分かります。アライアンスや事業承継に加え、成長や再編を目的とした選択肢としてM&Aが位置づけられている状況がうかがえます。

(5)譲受(買収)側に求める条件は「企業風土」と「成長戦略」。「経営者の人柄」は半減。

 譲受側に求める条件としては、「企業風土」(63.6%)と「今後の成長戦略」(54.5%)が過半数を占める結果となりました。前年と比較すると「企業風土」は13ポイント以上上昇しており、企業文化的な親和性を重視する傾向が高まっていることが分かります。一方で、「経営者の人柄」(31.8%)は大きく減少しており、属人的な要素から組織全体の将来性や企業文化的な相性へと評価基準がシフトしている様子がうかがえます。

(6)   譲受(買収)に向けた取り組み状況は、上場企業と非上場企業で進捗に差。

 譲受(買収)に向けた検討状況では、上場企業では「実際に交渉・検討を行っている案件がある」(28.6%)や「社内で検討はしているが、具体的な対象は未定」(28.6%)が中心となりました。一方、非上場企業では「社内で関心はあるが、何も着手していない」(22.9%)が比較的多く、上場企業に比べて初期段階にとどまる割合が高くなっています。

(7)M&Aを検討する上での懸念点、上場企業は「情報不足」、非上場企業は社内の「経験者不足」。

 M&Aを検討・実行する上での懸念点として、上場企業では「ターゲット企業の情報が得にくい」(38.1%)や「PMIに不安がある」(33.3%)が上位を占めました。一方、非上場企業では「M&Aを担う人材・経験者が社内にいない」(42.2%)や「譲受企業を任せる経営人材の不足」(36.1%)、「中期経営計画やM&A戦略の不明確さ」(33.7%)が目立ち、人材体制や戦略面に関する課題が多く挙げられました。上場企業と非上場企業で懸念点の性質には違いが見られるものの、いずれの場合でも継続的にM&Aを実施していくための社内の仕組み等の整備が必要であることが分かります。

(8)上場企業は過半数で「M&Aの専門人材を配置」、非上場企業では「未整備」が多い結果に。

 M&A人材の育成や知見の蓄積状況について、上場企業では「専門人材を配置している」(57.1%)が過半数を占めており、一定の体制構築が進んでいることが分かります。一方、非上場企業では「知見・ノウハウが蓄積されていない」(36.1%)や「今後整備したいが未着手」(32.5%)が多く、外部への依存傾向が強い状況が見られました。上場企業と非上場企業の間で、専門人材等の整備の進捗度合いに明確な差が表れていることが確認できます。

3.総括・提言

(1)M&Aの目的と方向性を明確化する

業績状況や経営環境によってM&Aの動機は異なり、譲受・譲渡の双方に幅広い要因が挙がっています。まずは自社にとってのM&Aの目的を整理し、成長の加速、事業再編、承継などの方向性を明確化することが重要です。目的を明確にすることで、候補探索や条件交渉においても一貫性を持った判断が可能となります。現状は業績の良い企業も、外部環境の変化によって反転する可能性があることも踏まえ、早期にM&Aに着手することが必要となります。

 

(2)外部機関との接点を拡充し、情報基盤を整える

譲受への関心は高まっているものの、情報や候補先の不足がM&Aの実行を制約している状況が見受けられます。信頼できる専門家との接点を増やし、市場動向の把握や譲渡・譲受候補の探索、条件設定の知見を獲得するなど、情報基盤を整備することが必要です。また、信頼できる専門家と出会うためには、自ら積極的に行動することが重要です。

 

(3)M&A人材育成と体制整備の必要性

非上場企業を中心に、「未着手」や「人材不足」といった回答が多く、M&Aに関する体制整備や知見の蓄積が進んでいない実態が明らかになりました。M&Aを一過性の活動とせず、継続的に取り組むためには、社内の専門人材の育成やOJTの仕組み、責任体制の明確化など、組織的にM&Aを推進できる基盤を整える必要があります。

〈総括・提言 執筆者プロフィール〉

株式会社タナベコンサルティング

M&Aコンサルティング事業部 執行役員 丹尾 渉

収益・財務構造改革を中心に、資本政策や組織再編コンサルティングなどに従事。2017年から M&A コンサルティング本部の立ち上げに参画。M&A 戦略構築からアドバイザリー、PMI までオリジナルメソッドを開発。延べ 100 件以上の M&A コンサルティングに携わる。戦略なくして M&A なしをモットーに、大企業から中堅・中小企業のM&A を通じた成長支援を数多く手掛けている。

4.関連リンク

・「2025年度M&Aの取り組みに関する企業アンケート調査」資料ダウンロードページ

https://www.tanabeconsulting.co.jp/manda/download/detail28.html

5.調査概要

[調査方法]インターネットによる回答

[調査期間] 2025年8月18日~9月12日

[調査エリア] 全国

[有効回答数] 217件

※本調査では、アンケートにご回答いただいた企業において、従業員規模が300人超~2000人以下の企業を中堅企業、300人以下の企業を中小企業として分類・分析を行いました。

※各図表の構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。 

タナベコンサルティンググループ(TCG)について

 TCGは、1957年創業の東証プライム市場に上場する日本の経営コンサルティングのパイオニアです。「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という経営理念のもと、未来の社会に向けた貢献価値として「その決断を、愛でささえる、世界を変える。」というパーパスを掲げております。現在は、グループ8社、約900名のプロフェッショナル人材を有する経営コンサルティンググループとなり、国内外の中堅企業を中心とした大企業から中規模企業のトップマネジメント(経営者層)を主要顧客とし、創業以来18,900社以上の支援実績を有しております。

 トップマネジメントアプローチで経営戦略の策定からプロフェッショナルDXサービスによる経営オペレーションの実装・実行まで、チームコンサルティングにより経営の上流から下流までを一気通貫で支援する唯一無二の経営コンサルティングモデルを国内地域密着のみならず、グローバルへと展開しております。

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


会社概要

URL
https://www.tanabeconsulting-group.com
業種
サービス業
本社所在地
東京都千代田区丸の内1-8-2 鉃鋼ビルディング9F
電話番号
-
代表者名
若松孝彦
上場
東証プライム
資本金
17億7200万円
設立
1963年04月