【イベントレポート】大切な器を繕い語る、おだやかな時間『金継ぎおじさん』刊行記念・金継ぎワークショップを特別開催2/29(木)まで、東京・代官山 蔦屋書店にて堀道広先生の特設コーナー展開
株式会社マガジンハウス(本社:東京都中央区、代表取締役社長:鉃尾周一)は、漫画家であり漆作家で金継ぎのワークショップ「金継ぎ部」を主宰する堀道広の最新単行本『金継ぎおじさん』(&Premium webの連載マンガPV数第1位)を2024年1月31日に全国の書店・インターネット書店にて発売。
2/1(木)東京・代官山 蔦屋書店にて、刊行記念として開催された金継ぎワークショップの様子をレポートいたします。
開催概要
【会期】2024年2月1日(木)
【時間】①10:00~12:30 ②14:30~17:00
【定員】各回6名
【場所】代官山 蔦屋書店 3号館 2階 SHARE LOUNGE
【主催】代官山 蔦屋書店
【共催・協力】堀道広、マガジンハウス
【問い合わせ先】03-3770-2525
【詳細】
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/cooking/38370-1538020119.html
割れや欠け、ヒビなど、陶磁器の破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で仕上げる日本の伝統的な修理技法「金継ぎ」。1/31(水)に発売となった『金継ぎおじさん』では、娘と二人暮らしの金継ぎ師・繕井継男(つくろいつぎお)のもとに、欠けてしまった大切な器をもって誰かがやってきます。
今回のワークショップでも、参加者の方が欠けたり割れてしまった大切な器を各自持ち寄りスタートいたしました。金継ぎの全5工程のうち1工程をワークショップで行い、残りの4工程は参加者自身で修繕できるよう堀道広さんよりレクチャーを実施。質疑応答や4工程のシュミレーションを行いつつ、丁寧に金継ぎについて教えていただきました。
実際にワークショップで実施した1工程目では、割れた器の断面に、接着前の化粧水のような役割をする「生漆」を塗って拭き取る作業と、「麦漆」や「刻芋」を練って器の破損部分に盛ったり、接着をする作業を実施。参加者が持ち寄ったものや、堀道広先生が持参したものを繋ぎながら、それぞれが器と丁寧に向き合う穏やかな時間となりました。
普段から、天然の漆を使用した古典的な金継ぎを行なっている堀道広さん。
扱いやすくハードルの低い合成漆についての質問が参加者からあがった際、自身の天然漆にこだわる理由を「人体に害がないこと、逆にその点しか理由がない」と話し、金継ぎの仕事に対する実直なこだわりが『金継ぎおじさん』の繕井継男に重なりました。
また、接着や補修で余った漆を調整しながらさらに練り上げると、粘土のように固く変化。造形して乾燥させると、簡単な乾漆像になります。乾漆像は、麻布や和紙を漆で貼り重ねたり、漆と木粉を練り合わせたものを盛り上げて造形する漆技法です。堀道広先生の持参した小さな彫像や根付を参考に、残った漆で思い思いの小さな作品も作成しました。
ここからは約1週間の乾燥期間が必要なため、残りの4工程は参加者ご自身で修繕できるよう、堀道広さんよりシュミレーションを行いつつレクチャーをいただきました。堀道広さんがそれぞれの工程の見本を持参し、参加者の間で回覧しながら興味深くお話と説明をお聞きしました。
2工程目・3工程目はそれぞれ丸1日の乾燥期間をはさみながら、乾いた漆のはみ出た部分を削ったり研いだりしながら、呂色(黒漆)を塗り重ねる「中塗り」と呼ばれる作業を繰り返す工程になります。
この中塗り作業を丁寧に積み重ねることにより、完成した際の作品の質が変わるとのこと。気に入ったものと長く付き合い、大切にするための地道な工程です。
4工程目・5工程目では、漆を塗って、ついに金継ぎの仕上げである金属粉を蒔き付ける作業へ。
「金継ぎ」という名前ですが、蒔き付ける金属粉は「金」以外にも「銀」「真鍮」「錫」と多くの種類があり、それぞれ完成した際の色味が異なります。一般的にイメージする「金」の金継ぎではない、錫の金継ぎなどもグレーの味わい深い色味が落ち着いていて、器に合わせた色と風合いを楽しむことができます。現在金粉は1g2万円ほど、との掘道広さんのお話に参加者が大きく驚く場面もみられました。
真綿で蒔き付けた金属粉が乾燥した後、鯛牙・またはめのうで金継ぎ部分を磨いて金継ぎ工程のレクチャーは終了となりました。
ワークショップが終了した後も、参加者の皆さんが堀道広さん手づくりの「金継ぎ部道具セット」や金属粉を購入し、家に帰ってからも工程の続きができることを楽しみにする様子も。また、堀道広さんに参加者12人の『金継ぎおじさん』単行本へ、それぞれ違う繕井継男のイラストとサインを描いていただきました。丁寧で誠実なレクチャーと金継ぎの工程は、約2時間半のワークショップが短く感じるほど、参加者が興味深く器に集中する時間になりました。工程表に堀道広さんが「おおらかに金継ぎを楽しみましょう」とメッセージを書いた通り、大切な器を繕い語るおだやかな空間は、『金継ぎおじさん』の世界観を体現するようなじんわり素敵なワークショップでした。
現在代官山 蔦屋書店(3号館1F)では、2月末まで堀道広先生の新刊『金継ぎおじさん』のほか、既刊作品やグッズを販売する特設コーナーを展開中です。堀道広先生直筆の貴重なサイン本もございます。なかでも、堀道広先生が自ら手がけた金継ぎ作品数点(展示販売)は必見です。ぜひ期間中にお立ち寄りいただき、奥深い「金継ぎ」の世界をお楽しみください。
堀道広先生について
堀道広(ほり・みちひろ)
富山県出身。うるし漫画家。国立高岡短期大学(現・富山大学芸術文化学部)漆工芸専攻卒。石川県立輪島漆芸技術研修所卒。文化財修復会社を経て、漆屋で職人として働きながら2003年漫画家デビュー後、漆と漫画の分野で活動。東京(国立・西荻窪)、神奈川(葉山)、福岡(平尾)にて開催される金継ぎのワークショップ「金継ぎ部」主宰。著書に『おうちでできるおおらか金継ぎ』(実業之日本社)、『うるしと漫画とワタシ-そのホリゾンタルな仕事』(駒草出版)、『青春うるはし!うるし部』(青林工藝舎)など。
■書誌情報
書名 :金継ぎおじさん
著者 :堀道広
発売日 :2024年1月31日
価格 :1,650円(税込)
仕様 :A5並・176ページ
ISBN:978-4-8387-3261-6
発行 :株式会社マガジンハウス
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