チェック・ポイント・リサーチ、ハマスに関連する脅威グループWIRTEによるスパイ活動と破壊工作の拡大を報告

AIを活用したクラウド型サイバーセキュリティプラットフォームのプロバイダーであるチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(Check Point® Software Technologies Ltd.、 NASDAQ:CHKP、以下チェック・ポイント)の脅威インテリジェンス部門であるチェック・ポイント・リサーチ(Check Point Research、以下CPR)は、過去にハマスと関連があったことが判明している脅威グループ、WIRTEの活動について、スパイ活動と破壊工作の拡大を確認、報告しました。

概要

  • CPRは、ガザ地区で紛争が続く中、脅威アクターWIRTEの活動について監視を続けてきました。WITREは、ハマスに関連するグループGaza Cybergangと過去に関連していたことが判明しています。

  • WIRTEは紛争によって活動を妨げられることなく、同地域での最近の出来事に関連したルアーをスパイ活動に利用し、その標的はパレスチナ自治政府、ヨルダン、エジプト、イラク、サウジアラビアとみられます。

  • CPRの調査により、WIRTEがスパイ活動にとどまらず、破壊的な攻撃に活動範囲を拡大していることが判明しました。CPRは、同グループが使用したカスタムマルウェアと、2024年の2月と10月の2回にわたりイスラエルの団体を標的に使用されたワイパー型マルウェア「SameCoin」との間に、明らかな関連性があることを指摘しています。

CPRは、脅威グループWIRTEが主導する大規模なサイバーキャンペーンの動向を注意深く追跡してきました。WIRTEは中東を拠点とするAPTグループであり、ハマスに属する集団であるGaza Cybergangと関連していると考えられています。この秘密組織は遅くとも2018年から活動しており、政治的動機に基づくサイバースパイ活動で悪名を馳せ、同地域の複雑な地政学的紛争に絡む情報の収集に重点を置いています。同グループの標的は、中東、特にパレスチナ自治政府、ヨルダン、エジプト、イラク、サウジアラビアを拠点とする組織・団体です。

紛争が続く中でハマスに関連する他の多くのサイバー活動が停止している一方、WIRTEの活動は継続しているばかりか、さらに拡大しています。最近では同グループはスパイ活動にとどまらず、破壊的な作戦を少なくとも2つ、イスラエルに対して実行しています。

本リリースではWIRTEのスパイ活動および新たな破壊活動、ハマスとの関係を検証します。一方でCPRは、この活動を具体的にガザ地区内部の活動家によるものと断定することには疑問を呈しています。

WIRTEのスパイ活動

中東情勢の緊張が続く中、最近数カ月にわたり、さまざまな脅威アクターがこの紛争を、特定の標的を欺くための囮を作り出すことに利用してきました。中でもWIRTEは紛争期間を通じて非常に活発に活動しており、地域的な攻撃を行っています。

CPRは2023年10月以降、WIRTEに関連して、マルウェアを利用したキャンペーンを複数観測しました。

  • 悪意あるRARファイルを利用した複数のスパイ活動が確認されています。このキャンペーンによってもたらされる初期段階のマルウェアは、被害者が使用しているOfficeおよびOSのバージョン情報、コンピューター名、ユーザー名、インストールされているプログラムのリストなどを攻撃者に送信します。さらに、より幅広い機能を持つマルウェアによる攻撃がこれに続く可能性が高いとみられます。

エラー画面を表示し、悪意あるリンクが埋め込まれたルアーPDF
  • 2024年9月、CPRはPDFファイルを感染源とする新たな感染チェーンを発見しました。このPDFファイルは、高度なサイバー作戦を目的としたオープンソースのフレームワーク、Havocを実装しています。攻撃者が侵害したシステムへのアクセスを得ると、永続的なシステム制御が可能になり、データの抽出、システム内の水平移動、リモートアクセスなど、さまざまな悪意あるアクティビティの実行が可能になります。

WIRTEの活動範囲が破壊的攻撃へと拡大 

2024年10月、サイバーセキュリティ企業ESETの販売代理店のアカウントから、悪意ある電子メールのキャンペーンが開始されました。この電子メールは、病院や自治体などイスラエルのさまざまな組織を標的としており、メールの本文には、受信したユーザーのデバイスが国家支援型の脅威アクターに狙われていると主張する内容が書かれています。また、メールには脅威に対する保護プログラムのインストールを謳うURLへのリンクが含まれていました。しかし、このURLのリンク先はコンピューターやネットワーク上のデータを消去または破損することを目的としたワイパー型マルウェアでした。情報窃取や身代金目的のデータ保持を目的とする他のマルウェアと異なり、ワイパーは破壊を引き起こすことに特化し設計されています。

このキャンペーンで確認されたワイパー型マルウェアは、以前報告されたSameCoinワイパーの最新版です。本年初頭には、イスラエル国家サイバー局(INCD)になりすました悪質なキャンペーンでも使用されました。SameCoinは、AndroidとWindowsで利用可能なマルチプラットフォームのワイパーで、いずれのケースでもINCDからのセキュリティアップデートを装っていました。

10月に行われたキャンペーンでは、メール内のURLをクリックすることで感染チェーンが始まり、ある時点で被害者は悪質なファイルへと誘導されます。この悪質なファイルは、イスラエルの民間防衛軍(Home Front Command)のサイトにアクセスを試みます。このサイトはイスラエル国内からのみアクセス可能なため、これにより被害者がイスラエル人であることを確認するのです。その後、マルウェアは以下のファイルを復号化して実行します。

  • ハマスの軍事部門、カッサム旅団に言及する壁紙

ハマスの軍事部門、カッサム旅団(イザディン・アルカッサム)に言及している壁紙を翻訳したもの
  • 10月7日からの攻撃を紹介する、ハマスのプロパガンダ映像

  • コンピューターやネットワーク上のデータを消去または破損するよう設計されたワイパー型マルウェア

  •  同じ組織内の他の複数のアドレスに添付ファイルを送信し、同じネットワーク内の他のコンピューターにワイパーファイルをコピーするインフェクターコンポーネント

脅威アクターWIRTEの活動の背後にハマスがいる可能性

破壊的な攻撃におけるキャンペーンの発信内容と、ハマスの政敵であるパレスチナ自治政府(PA)を一貫して焦点としている点は、長年にわたり明らかにされた複数の歴史的な経緯と合わせ、WIRTEとハマスにつながりがあることを示しています。ハマスの軍事部門であるカッサム旅団に関連する画像が使用されている事実は、偽旗作戦を示唆している可能性もあります。しかし、イランの派閥を含む他のグループの攻撃では、このような言及は見られません。WIRTEのターゲット戦略は、特にパレスチナ問題に関して、ハマスの利益と密接に連携しています。さらにWIRTEは、MoleratsやGaza Cybergangなどハマスとつながりのあるグループと関係してきた歴史があり、WIRTEとハマスが関連している可能性を強めています。

中東における破壊と諜報の二重戦略

WIRTEは一貫して中東全域のさまざまな団体を標的にしており、ファイル送信、ルアー、ドメインの参照など、彼らの活動を示す指標から、レバノンやイラク、サウジアラビア、エジプトとの関わりも示唆されています。プロパガンダの内容やテーマは、イスラエルの受信者に向けたフィッシングメールとともに、イスラエルのターゲットに特化していました。加えて、ワイパーはターゲットの国がイスラエルである場合、またはシステム言語がヘブライ語に設定されている場合にのみ作動します。

イスラエルへの攻撃で使われたさまざまなテクニックやペイロードからは、他の中東諸国を狙ったものとは対照的に、非常に興味深く複雑な戦略が浮かび上がります。ここには2つの重要な目標があるように思われます。1つはイスラエル国内を混乱させること、もう1つは近隣諸国をターゲットとしたスパイ活動です。この二重のアプローチは、地域紛争の複雑な力学と、関係者間の優先順位の違いを浮き彫りにしています。

プロアクティブな脅威分析を通じセキュリティ強化の実践を

進化を続けるサイバー脅威の時代において、チェック・ポイントのThreat Emulationは、脅威がネットワークに侵入する前にすべてのファイルを検査することにより、お客様の安全を守ります。制御された仮想環境でファイルを実行することで、未知の脅威やゼロデイ脆弱性を特定し、不正なシステム変更などの有害な動作を監視します。

Check Point Harmony Endpointと連携させることで、この2つのソリューションはリアルタイムでファイルを解析し、オリジナルのファイルが徹底した検査を受けている間にも、ほぼ瞬時に安全なバージョンのファイルへのアクセスを可能にします。 このプロアクティブなアプローチにより、安全なコンテンツへの迅速なアクセスが保証され、潜在的な脅威を効果的に特定して無効化します。それにより、今日のリスクの多いデジタル環境におけるネットワークの完全性を保護できます。

WIRTEのスパイ活動と破壊活動に関するレポートの完全版は、こちらからチェック・ポイント・リサーチのブログをご覧ください。

Check Pointによる保護

Threat Emulation:

  • APT.Wins.Wirte.ta.A/B/C/D/E/F

Harmony End Point:

  •  ransom.win.honey

  •  infoastealer.win.blackguard.d

本プレスリリースは、米国時間2024年11月12日に発表されたブログ(英語)をもとに作成しています。

Check Point Researchについて 
Check Point Researchは、チェック・ポイントのお客様、脅威情報コミュニティを対象に最新のサイバー脅威インテリジェンスの情報を提供しています。チェック・ポイントの脅威インテリジェンスであるThreatCloud AIに保存されている世界中のサイバー攻撃に関するデータの収集・分析を行い、ハッカーを抑止しながら、自社製品に搭載される保護機能の有効性について開発に携わっています。100人以上のアナリストや研究者がチームに所属し、セキュリティ ベンダー、捜査当局、各CERT組織と協力しながら、サイバーセキュリティ対策に取り組んでいます。
ブログ: https://research.checkpoint.com/ 
X: https://twitter.com/_cpresearch_ 

チェック・ポイントについて 
チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(https://www.checkpoint.com/)は、AIを活用したクラウド型サイバーセキュリティプラットフォームのリーディングプロバイダーとして、世界各国の10万を超える組織に保護を提供しています。Check Point Software Technologiesは、積極的な防御予測とよりスマートで迅速な対応を可能にするInfinity Platformを通じ、サイバーセキュリティの効率性と正確性の向上のためにあらゆる場所でAIの力を活用しています。Infinity Platformの包括的なプラットフォームは、従業員を保護するCheck Point Harmony、クラウドを保護するCheck Point CloudGuard、ネットワークを保護するCheck Point Quantum、そして協働的なセキュリティオペレーションとサービスを可能にするCheck Point Infinity Core Servicesによって構成されます。Check Point Software Technologiesの全額出資日本法人、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社(https://www.checkpoint.com/jp/)は、1997年10月1日設立、東京都港区に拠点を置いています。 

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代表者名
佐賀 文宣
上場
未上場
資本金
2000万円
設立
1997年10月