自宅からも参加可能な新しい治験のカタチ ~治験アプリ「Unify」本格始動~
分散型臨床試験の統合的なソリューションを実現、ドラッグラグ・ロス解消の一助に
アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:堀井 貴史、以下、アストラゼネカ)は、分散型臨床試験(DCT:Decentralized Clinical Trial)に有用な治験アプリ「Unify(ユニファイ)」で「スマートフォンと検査機器の連携による治験データの測定」、「バーチャル来院」、「治験薬の患者さんへの直接配送」などが可能となる治験の実施において、本格的に患者さんへの使用が始動しましたことをお知らせします。Unifyを導入することで、患者さんの治験参加に対する負担や障壁が下がり、さらに、製薬会社は新薬開発までの時間とコストを削減できることが期待できます。当社は、健康の公平性を目指し、治験にアクセスしやすい社会実現に向け、DCTの確立に注力しています。
現在、欧米で承認されている新薬の約6割が日本において未承認(1)といわれ、ドラッグラグ・ロスによって将来最新の医薬品や医療技術を使った治療を日本で受けることができない可能性が懸念されます。ドラッグラグ・ロス問題の解決策の1つとして、日本が国際共同治験に参加することが重要といわれています。また、デジタル化が進み、治験の加速や効率化、そして多様な被験者を取り入れる「Diversity in Clinical Trials」の観点からも、世界でDCTが拡大しています。日本が今後国際共同治験へ参加し続け、革新的な医薬品を継続的に使用できるようにするためには、DCTの普及が重要になります。
DCTを実現するUnifyは、アストラゼネカ英国本社(AstraZeneca PLC)が独自開発し、2025年1月末現在54か国以上、93言語に対応、統合的な治験ソリューションを提供する治験アプリです。2023年11月AstraZeneca PLCの完全子会社として設立したEvinova社(本社:スイス、President:Cristina Durán)が、現在Unifyをアストラゼネカ以外の製薬企業、バイオテック、医薬品開発業務受託機関(CRO)などにも提供しています。
Unifyは、患者さんの来院数の軽減、治験実施医療機関から遠方の患者さん、仕事をもつ患者さんの治験参加の障壁の緩和、治験実施医療機関は患者さんの健康状態に関する情報をリアルタイムで収集することで有害事象等が発生した場合にもより迅速な対応が可能など、多くの利点を患者さんに提供することができます。
この度、新たに日本国内で患者さんの活用が開始されたUnifyの主な機能は、下記のとおりです。
- 患者さん自身のスマートフォンと検査機器(体重計やパルスオキシメーターなど)を連携させ、測定データを自宅からリアルタイムで治験実施医療機関へ送信
- 治験を実施する医療従事者が遠隔で患者さんと顔を合わせて問診し、患者さんの健康状態を把握(バーチャル来院)
- 従来型の治験では患者さんが定期的に治験実施医療機関を訪れて受領していた治験薬を、患者さんの自宅へ直接配送(ホームサプライ)
さらに、AstraZeneca PLCがUnifyを活用して実施した慢性閉塞性肺疾患(COPD)を対象とした、国際共同治験CRESCENDO試験では、試験実施計画書上、従来の方法と比較すると下記のような効果が得られることが期待されます(2)。
- 患者登録数の減少: 効率的なデータ収集と高品質なデータにより、必要なサンプルサイズを減少
- 治療期間の約50%短縮
- 対面訪問の約50%減少
- 患者さんの負担軽減: バーチャル訪問と自宅でのデータ収集が可能になり、患者の負担が軽減
- 全体試験期間の約15%短縮: 効率的なデータ収集と処理により短縮
- コストの約32%削減: デジタルソリューションにより、運営コストが削減
2025年1月末現在、Unifyは国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院をはじめ、国内の26の治験実施医療機関で導入され、各治験のプロトコールに準じ患者さんへの使用が開始されています。
DCTの普及は、より患者さんが参加しやすい治験を実現し、ドラッグラグ・ロス解消の糸口になると期待されます。アストラゼネカは、今後もより多くの医療機関や患者さんにUnifyを活用いただくことで、DCTを社会に実装し、治験のより効率的な運用を通じて、ドラッグラグ・ロス解消に貢献してまいります。
UnifyやDCTの普及を通じたドラッグラグ・ロス解消への期待について、特定非営利活動法人パンキャンジャパン 理事長であり一般社団法人 日本希少がん患者会ネットワーク 理事 眞島 喜幸氏は、次のように述べています。
「がんの中で10~15%を占める希少がんは治療薬が少なく予後が悪いため、患者は新薬の開発、承認を切に望んでいます。治験への参加希望は高い一方で、治験施設が身近になく、参加できない患者が全国に大勢います。そのため、UnifyによるDCTの普及は希望の光です。新薬が日本で使えるようになるまでの間に亡くなってしまうようなケースも多々あるため、このようなソリューションがドラッグラグ・ロス解消の一助となり、1日でも早く必要な患者に薬が届くことを期待します」。
アストラゼネカ株式会社の取締役 研究開発本部長の大津 智子は、次のように述べています。
「アストラゼネカの治験数は、国内最多を誇り、9割以上が国際共同治験です。それにより諸外国と変わらないタイミングで日本の患者さんに新薬をお届けしています。治験アプリUnifyという具体的なソリューションで、日本でのDCTを加速させ、これまで治験参加に障壁があった患者さんが参加しやすい環境を創り、アストラゼネカの革新的な医薬品を一日でも早く患者さんに届けていきたいと考えています」。
以上
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ドラッグラス・ロス問題について
創薬のモダリティの変化に伴い、開発の主流がスタートアップをはじめ日本に法人を持たない企業にも拡がっています。投資の早期回収を目指すそれらの企業にとって、コスト高で人口がすでに減少のカーブを描いている日本での治験実施は、優先されづらい状況があります。また、治験に伴う医療機関への定期的な来院の必要性は、居住地が治験実施医療機関の遠方であったり多忙であったりする患者さんの治験参加を困難にします。これらの状況は日本での治験を遅滞させ、海外で使用可能な新規の医薬品を日本の患者さんは使用できず、日本での治療選択肢が限られてしまうドラッグラグ・ロスに繋がることが懸念されます。
Evinovaについて
Evinovaは、デジタルヘルスでライフサイエンス分野を推進し、より優れた健康アウトカムの実現を加速させるグローバルヘルステック企業です。すべての人がより健康になれるよう、当社のデジタルソリューションは、科学的な専門知識、エビデンス、人の経験からの洞察を取り入れ設計されています。アストラゼネカグループの一員であるEvinovaについて、詳しくはEvinova.com をご覧ください。また、当社のソーシャルメディア@Evinova をフォローしてください。
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ医薬品企業であり、主にオンコロジー領域、希少疾患領域、循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオファーマ領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社の革新的な医薬品は125カ国以上で販売されており、世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.com または、ソーシャルメディア@AstraZenecaをフォローしてご覧ください。
日本においては、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝、呼吸器・免疫疾患およびワクチン・免疫療法を重点領域として患者さんの健康と医療の発展への更なる貢献を果たすべく活動しています。アストラゼネカ株式会社についてはhttps://www.astrazeneca.co.jp/ をご覧ください。フェイスブック、インスタグラム、YouTubeもフォローしてご覧ください。
References
1. 創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制の在り方に関する検討会について」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001206963.pdf P.4
2. Durán, C.O., Bonam, M., Björk, E. et al. Implementation of digital health technology in clinical trials: the 6R framework. Nat Med 29, 2693–2697 (2023)
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