日立、ドコモとの共同実証によりシステム運用業務に特化したAIエージェントの有効性を確認
システムエンジニアの業務変革をめざすAIエージェントの実用化を推進

株式会社日立製作所(以下、日立)は株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)と、ドコモ情報システム部を対象に、生成AIを活用したシステム運用業務に特化したAIエージェントの実用化に向けた共同実証(以下、本実証)を実施しました。本実証ではまず、日立の生成AI活用基盤の豊富な構築実績、およびAIへのリフト*1とAIへのシフト*2の考え方に基づいたAIエージェント実装のベストプラクティスと、ドコモの長年にわたる大規模システムの安定運用におけるノウハウをかけ合わせ、情報システム部の生成AI活用を促進する基盤の構築と、システム運用業務に特化したAIエージェントの開発を日立が行いました。ドコモと共同で試験運用を実施した結果、インシデント事例の検索・対応、インシデント情報の周知判断・周知文作成、パッチ*3の適用判断の自動化の3つのユースケースでAIエージェント適用の有効性を確認しました。さらに、パッチの適用判断の自動化においては、50%以上の作業時間短縮効果を確認しました。
今後は、本実証の成果を踏まえAIエージェントを適用するユースケースの拡大や、利用者を増やすことで、情報システム部全体の業務効率化ならびにシステム運用業務の自動化をめざします。また、将来的に日立は、AIへのリフトの考えに基づくAIエージェントを、社会インフラを支える大規模かつ複雑なITシステムの安定稼働が求められる他の業界・業種へ展開し、さらにはAIへのシフトの仕組みの確立にもつなげることで、システムエンジニアのさらなる業務変革の推進、ならびに社会全体の生産性向上と持続可能な成長に貢献します。
*1 AIへのリフトとは、AIを介して既存システムにアクセスすることにより、既存システムを改修することなく、システムにAIを取り入れる手法。
*2 AIへのシフトとは、従来のシステムで動作していたプログラムを、業務処理に必要な業務計算やデータベースアクセスを実行するAIエージェントに置換することでシステムをAI化する手法。
*3 ソフトウェアの不具合修正やセキュリティ強化のために提供される更新プログラムのこと。
■背景
近年、労働人口の減少や高齢化の進行により、社会インフラ向けITシステムの運用現場においても人手不足が深刻な課題となっています。日立は、社会インフラにAIを中核としたデジタル技術を融合し持続可能な社会に貢献する社会インフラ向けAI*4の実現をめざしています。複雑化・高度化するITシステムの運用業務においては、規制や技術の変化に対応するために求められる知識が増加し、業務の属人化やマニュアル・データの未整備により、運用業務に必要なノウハウの継承がますます困難になっています。これらの課題を解決するため、日立はAI技術を活用して現場の知見やノウハウの継承、業務効率化を実現し、社会インフラの安定運用と企業の持続可能な成長に貢献することをめざし、ドコモと共同で本実証を実施しました。
*4 社会インフラ向けAIとは、社会インフラにAIとデジタル技術を融合することで社会インフラに”知性”を与え、進化させるコンセプト。(参考:社会インフラ向けAIが拓く未来)
■本実証の詳細
本実証にあたり、まずドコモ情報システム部における業務の詳細を日立がヒアリングし、暗黙知化している業務の明文化や、現状の生成AI活用についてアセスメントを実施しました。その結果を踏まえ、AIエージェントを適用する業務の優先づけと、その基盤となる生成AI活用基盤の構築を実施しました。生成AI活用基盤は、利用者のスキルに応じた3段階の環境で生成AI活用に必要な基本機能を備えており、生成AIを活用するハードルを下げ、情報システム部全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進します。また、以下の3つのユースケースに対応するAIへのリフトの考え方に基づくAIエージェントを日立が開発し、業務適用の有効性をドコモと共同で検証しました。
(1)インシデント事例の検索・対応
インシデント発生時、対応方法を検討するにあたり過去の事例を検索しますが、事例の情報量が非常に多く調査に時間がかかるという課題があります。今回、ドコモの顧客管理システムにおいて、従来のようなキーワード検索ではなく、アラートメッセージや対象サーバーの情報を入力するだけで過去の類似事例を特定し、インシデント内容に応じて、関係者や関係システムへの周知のための必要事項を出力するAIエージェントを開発しました。試験運用の結果、担当者はAIエージェントの検索結果を最終確認することで対応方法を判断でき、業務効率化につながることが確認できました。

(2)インシデント情報の周知判断・周知文作成
設備の交換やそれに伴う工事への対応の際、周知が必要な影響のあるシステムを特定するには複数の設計書を参照する必要があり、多くの時間を要していました。今回、ドコモの顧客管理システムにおいて、生成AIが参照する設計書とその順番を判断し、工事周知が必要な関連システムを判断し、周知すべき内容の文書案を自動作成するAIエージェントを開発しました。試験運用の結果、周知先の確認と周知文書の作成までの一連の業務を効率化できることが確認できました。

(3) パッチの適用判断の自動化
プライベートクラウドシステムにおけるパッチ適用業務は通常、月に1度システムの構成管理表から製品情報を抽出し、リスト化した製品に関わるバグ情報を専用のサポートサイトで検索、バグ事象の内容から対象システムで使用中の製品への影響有無を判断するという流れで実施しています。今回開発したAIエージェントは、製品名とバージョン情報からバグ事象の該当有無を判定するため、担当者は判定内容をもとにパッチ適用の要否を最終判断することが可能になります。また、パッチ適用にあたり必要な、バグ事象の内容やシステムの影響、対応策などをまとめるレポートのドラフトもAIエージェントで作成が可能です。試験運用の結果、AIエージェントの活用前後の比較において、バグ事象の影響有無の判定では54%、レポート作成では64%の作業時間短縮効果を確認できました。

■今後の展望
本実証の成果を踏まえ、日立はドコモと共同でAIエージェントの実運用化に向けて取り組みを加速します。また、他のユースケースへの適用やそれらの共通的な運用を可能にする生成AI活用基盤の高度化を進め、ドコモ情報システム部基幹システムのDX実現をめざします。
将来的に日立は、本実証を通じて確立したAIへのリフトの考えに基づくAIエージェントを他の業界・業種にも展開し、システムエンジニアの業務変革の支援と、従来のシステム開発のあり方を刷新するAIへのシフトの仕組み確立をめざします。また、HMAXソリューションの一部としての展開も視野に、社会インフラを支えるITシステムの安定運用と企業の持続可能な成長に貢献します。
■システムのAIへのリフトとAIへのシフトについて
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.co.jpをご覧ください。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所 社会ビジネスユニット 社会システム事業部
テレコム・ユーティリティソリューション本部
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