スマートフォンによるドライアイ診断補助を可能にするスマホアプリ型プログラム医療機器の開発・承認を目指し多機関共同特定臨床研究を開始します
順天堂大学医学部眼科学の山口昌大准教授、猪俣武範准教授らの研究グループと順天堂大学発ベンチャー企業のInnoJin株式会社は、2023年3月よりドライアイ診断補助用スマートフォンアプリケーション(DEA01)によるドライアイ診断能を評価する多機関共同特定臨床研究を開始します。
本特定臨床研究のポイント
- InnoJin株式会社が開発した、スマホアプリ型ドライアイ診断補助用プログラム医療機器の承認を目指し、2023年3月より多機関共同特定臨床研究を開始
- 特定臨床研究は順天堂大学医学部附属順天堂医院、東邦大学医療センター大森病院、東京歯科大学市川総合病院の3機関で実施
- 特定臨床研究の結果を元に、2024年以降に検証的治験および医療機器申請を行い、2025年の医療機器承認および眼科クリニックへの販売開始を目指す
研究の背景
ドライアイは国内で2,000万人以上が罹患するとされる最も多い眼疾患の一つであり、超高齢社会、デジタル作業の増加などにより今後も増加すると予想されています。ドライアイに罹患すると、眼不快感、眼精疲労、視機能低下により生活の質や仕事の生産性が低下することがわかっています。しかし、当研究グループの調査から、症状は有するがドライアイと診断されず、未だ症状に苦しんでいるドライアイ未診断者が多く存在することが明らかになりました(※1) 。一方で、ドライアイは重症化すると角膜障害や視力低下などを引き起こす可能性もあり、早期診断・早期治療が求められています。
現在、国内においてドライアイの診断を行うには、患者さんの眼の表面をフルオレセイン生体染色液(※2)で染色したうえで、細隙灯顕微鏡(※3)による検査を実施する必要があります。この生体染色検査は患者さんへの侵襲(※4)・接触を伴うという課題があります。また、遠隔診療・オンライン診療などの診療現場では、細隙灯顕微鏡による眼の観察が困難であり、ドライアイの診察は患者さんからの自覚症状の問診のみでしか行うことができませんでした。そのため、ドライアイと診断されるためには医療機関を受診して検査を受ける必要がありますが、ドライアイ患者の多くを占める就学・就労世代の方は眼科を受診する時間が取れないという社会的課題もありました。
このような医療ニーズに対し、非侵襲的・非接触的にドライアイの病状評価が可能な新たなドライアイの検査法が求められてきました。
研究の目的
本研究では、InnoJin株式会社が開発したドライアイ診断補助用スマートフォンアプリケーション(DEA01)を用いて、ドライアイ疾患特異的質問紙票(J-OSDI)(※5)によるドライアイ自覚症状の収集と最大開瞼時間(※6)測定を組み合わせた非侵襲的・非接触的なドライアイ診断補助機能(図1)のドライアイ診断能を評価します。生体染色や細隙灯顕微鏡による検査を必要としないスマホアプリによるドライアイ診断補助が実現できれば、眼科の遠隔診療・オンライン診療の場においても自覚症状以外の指標によるドライアイの定量的な評価が可能となります。
特定臨床研究の概要
臨床研究実施計画番号: jRCTs032220524
研究名称: ドライアイ診断補助用スマートフォンアプリケーション(DEA01)によるドライアイ診断能を評価する多機関共同試験
研究代表医師: 山口昌大
研究期間: 2023年3月〜2023年12月
対象者: 順天堂大学医学部附属順天堂医院、東邦大学医療センター大森病院、東京歯科大学市川総合病院の眼科外来を受診した方
研究はスマホアプリ型ドライアイ診断補助用プログラム医療機器の開発・承認を目指し、2023年3月より、順天堂大学医学部附属順天堂医院、東邦大学医療センター大森病院、東京歯科大学市川総合病院の3機関共同で実施致します。
■注釈
※1 InomataT,IwagamiM,NakamuraM,ShiangT,YoshimuraY,FujimotoK,etal.CharacteristicsandRiskFactorsAassociatedWithDiagnosedandUndiagnosedSymptomaticDryEyeUsingaSmartphoneApplication.JAMAOphthalmology.2020;138(1):58-68.
※2 フルオレセイン生体染色:眼表面をフルオレセインという蛍光染色液で染色し、各結膜上皮障害の状態を可視化する。眼表面の検査時に行う。
※3 細隙灯顕微鏡:前眼部を検査するための顕微鏡。フルオレセイン生体染色後の眼表面検査にも用いられる。
※4 侵襲:患者の身体または精神に何らかの傷害または負担といった外的影響が生じること。
※5 ドライアイ疾患特異的質問紙票(JapaneseversionofOcularSurfaceDiseaseIndex:J-OSDI):ドライアイの自覚症状を評価するドライアイ特異的質問紙票で12項目からなる。4段階で各項目を解答し、その結果から100点満点のJ-OSDI総合スコアを算出することが可能。
※6 最大開瞼時間:瞬目をできるだけ我慢できる時間。ドライアイ患者では有意に低下していることが明らかになっている。
■本研究に関わる助成金
本事業は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)2021年度「研究開発型スタートアップ支援事業/NEDOEntrepreneursProgram(NEP)」タイプB「スマホアプリ型ドライアイ診断補助用プログラム医療機器の開発」(提案書受理番号:21NP2318)の助成を受けています。
■順天堂大学について
順天堂大学は、8学部4研究科6附属病院からなる健康総合大学・大学院大学として、「教育」「研究」「診療・実践」という3つの柱を通じた国際レベルでの社会貢献と人材育成を進めています。
学是「仁」(人在りて我在り、他を思いやり慈しむ心、これ即ち「仁」)と理念「不断前進」(現状に満足せず、常に高い目標を目指して努力し続ける姿勢)に則り、出身校、国籍、性による差別無く優秀な人材を求め活躍の機会を与えるという「三無主義」の学風を掲げ、「教育」「研究」「診療・実践」を柱に、グローバル社会において医療やスポーツ、人々の健康を支える人材の育成・輩出に取り組んでいます。(https://www.juntendo.ac.jp/)
■InnoJin株式会社について
順天堂大学発ベンチャーとして2020年12月に設立。社名は、Innovation(イノベーション)と、おもいやり、いつくしみという意味の仁(Jin)の造語です。InnoJin株式会社は、ドライアイや花粉症に対するスマホアプリ型プログラム医療機器、VR・XR技術を用いた医療機器の開発やオンライン診療普及に向けた事業を行っております。(https://innojin.co.jp/)
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