女性の働き方とヘルスリテラシーに関する調査 vol.3 女性特有の不調を周囲に伝えやすい職場は、組織の目標達成割合が高い
~「上司の理解がある」と回答したグループの目標達成割合は7割以上という結果に~
なお本調査は、パーソルキャリアがキャリアオーナーシップ推進支援を行うにあたり、働く女性が直面している実態と課題を理解するために実施。コミュニティ「はたらく女性の活躍と健康を考える会」有識者の方々(岸畑 聖月氏、高尾 美穂氏、難波 美智代氏)、コミュニティファシリテーター猪熊 真理子氏から、調査結果をもとに課題提起をしていただいています。
1. 女性特有の不調について、上司の「理解がある」と回答したグループは、「理解がない」と回答したグループより、「組織の目標達成をしている」割合が約30ポイント高い |
勤め先の「上司」は、女性特有の不調に関しての理解があるかどうかを質問したところ、理解のある・なしによって組織の目標達成割合に大きく差が出ることが分かりました。具体的には、「上司の理解がない」と回答したグループの目標達成割合が40.0~46.1%に対し、「上司の理解がある」と回答したグループの割合は73.6~76.8%でした。また、男性上司・女性上司いずれの場合においても結果の傾向は変わらず、上司の理解度別にみた、組織の目標達成割合において性別による差異は見られませんでした。(【グラフ①】)
また、勤め先の「同僚」についても、上司の理解度合いと類似した傾向が見られることが分かりました。具体的には、「同僚の理解がない」と回答したグループの目標達成割合が42.0~47.8%に対し、「同僚の理解がある」と回答したグループの割合は69.8~79.9%でした。同僚の理解度別にみた組織の目標達成割合においても、同僚が男性か女性かによる差異は見られませんでした。(【グラフ②】)
2.勤務先の周囲に対して女性特有の不調を「伝えやすい」と回答したグループは「伝えにくい」と回答したグループと比べて、「組織の目標を達成している」割合が28.1ポイント高い |
女性特有の不調がある際、勤め先の周囲に対して不調を伝えやすいかを質問した結果、「伝えやすい」と回答したグループの「組織の目標を達成している」割合は73.1%、「伝えにくい」と回答したグループの同割合は45.0%でした。(【グラフ③】)
3.「女性の健康に関する研修会」「産業医によるカウンセリング」など、職場から提供される制度の充実度によって、組織の目標達成割合に大きく差が出る結果に |
勤め先で、女性の健康に関する研修会などの機会提供があるかを質問した結果、「研修会などがある」と回答したグループの「組織の目標を達成している」割合は80.2%、「研修会などがない」と回答したグループの同割合は55.9%でした。(【グラフ④】)
また、女性の健康支援(生理休暇、産業医によるカウンセリング等)があるかを質問したところ、「健康支援がある」と回答した女性グループの「組織の目標を達成している」割合は74.2%、「健康支援がない」と回答したグループの割合は53.8%でした。(【グラフ⑤】)
これらの結果から、上司・同僚の女性特有の不調への理解がある組織は、組織の目標を達成している割合が高いことが分かります。また同時に、働く女性の健康に関する研修会の実施や、生理休暇、産業医によるカウンセリング等の健康支援を講じている組織の目標達成割合が高いことも分かりました。女性の働き方とヘルスリテラシーに関する調査 vol.2において、ヘルスリテラシーが最も高い女性グループは「個人の仕事において目標を達成している」割合が71.1%と、ヘルスリテラシーが最も低いグループに比べて28.2ポイント高いことをお伝えしましたが、今回の調査結果から、女性個人だけでなく、組織全体がヘルスリテラシーの向上に取り組むことで、女性特有の不調への理解が高まり、組織の目標達成割合を変化させられる可能性があることが分かりました。
■有識者による解説 ※五十音順
今回の調査結果から、個人のヘルスリテラシーを向上させることだけでなく、組織のヘルスリテラシーも向上させることの重要性が伺えます。産婦人科医の高尾美穂氏をはじめとする本コミュニティの有識者は、組織のヘルスリテラシーレベルを上げることの重要性や、組織として取り組むべきヘルスリテラシー向上策について提言しています。
岸畑 聖月 氏
株式会社With Midwife 代表取締役/助産師・保健師・看護師
◆まずは組織のステージを判断、その後、ステージごとの最適なアプローチを
私も経営をしていますが、チームメンバーが心身を健康に保ち、着実に目標達成をしてくれることはとても重要で、理想的な形だと言えます。今回の調査報告から、個人や組織が健康、女性特有の不調のリテラシーを高めることが、組織の目標達成に寄与している可能性が示唆されたことは私たちにとってとても大きな指針になります。とはいえ、どうすれば個人や組織のヘルスケアやライフステージの変化に関するリテラシーを高め相互理解を促せるのか、最適なアプローチ方法やその質について迷う方もいるかもしれません。行動変容に至るまでには無関心期→関心期→準備期→実行期→維持期という過程を通ると言われています。取り組み内容を選択する際にはまず個人、チーム、組織全体がどのステージにいるのかを判断します。その上で例えば「無関心期」であれば知識の補充や感情的動機づけが必要なので、セミナーや社内報などが有効です。「準備期」だと行動目標を周りに宣言するということが必要になりますので、ワークショップなどが最適です。このように、ステージに応じて、具体的になにをするかを検討していただければと思います。しかしこういった取り組み自体が初めてだと、社内状況の判断が難しかったり、社外に依頼が必要な場合にその質の見極めが難しいなどの困り事も出てくるかと思います。このコミュニティにはすでに多様な有識者や取り組みを始めている民間企業もたくさん参加してくださっているので、引き続き共にアイデアを出し合いながら、みなさんの参考になる情報を発信していきたいと思っています。関心を持たれた企業様などがいましたら、ぜひ参画していただき共に方針を話し合えれば嬉しいです。
高尾 美穂 氏
医学博士/日本産科婦人科学会専門医/日本医師会認定産業医/イーク表参道 副院長
◆トップダウン、ボトムアップの両方から活動を拡げよう
働く女性が、健康の維持について所属する企業から支えて貰えていると感じることは、自身の目標を達成するにも、組織としての目標を達成するにも必要である、と言える調査結果だったと考えます。女性の健康課題についての研修セミナーなどを依頼なさる企業は増えてきており、その依頼主は人事部総務部系であったり健康管理部門であったり、健康組合であったりさまざまです。トップダウンのかたちで企業全体に女性の健康支援を行き渡らせる方法が有効であるのは言うまでもありませんが、現場の女性たちが必要性を感じ、ボトムアップのかたちで活動を広げていくスタイルにもエネルギーを感じます。
女性の健康課題について情報を共有するのも、女性社員だけなのか、男女合わせてなのか、管理職は別なのか、さまざま見受けられますが、いずれは働くすべての人が女性の健康課題をある程度把握している社会を目指したいです。
難波 美智代 氏
一般社団法人シンクパール 代表理事
◆女性が職場で気遣ってほしいことを、男性の半数は存在すら認識していない
今回の調査によって、職場の理解や制度の設置などが組織全体の目標度達成に貢献していることが可視化されました。一方で、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が実施した「健康経営とフェムテック『正社員男女の健康意識に関する実態調査(全国の20 歳~69 歳正社員男女2,000人を対象としたWebアンケート)』」※によると、「女性特有の健康課題に関する悩み」について、女性からは「職場における理解や気遣い」「生理休暇等を取得しやすい環境」等の支援を求める声が多いが、男性の半数がその存在自体に気付いていないとの結果が示されました。さらに職場における課題認識と期待される支援では、女性が会社に対策を講じてもらえると良いと思う健康やからだに関する悩みとして「月経に関する悩み」(26.1%)、「更年期に関する悩み」(20.2%)が多くみられました。今後は、各職場の課題に応じた、より具体的な情報提供のあり方が求められてくると考えます。
※:2022年4月28日 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社
【健康経営とフェムテック】 「正社員男女の健康意識に関する実態調査」
< https://www.murc.jp/publicity/news/news_220428/ >
コミュニティファシリテーター
猪熊 真理子氏
◆女性の健康に関するテーマは女性活躍推進における要のひとつであり、生産性向上にも繋がることを、より多くの企業に認識してほしい
“女性の健康に関するヘルスリテラシーの向上が、仕事の成果や生産性にどう関わってくるのか”、そのことについて知りたいと考える企業の方は多いと思います。例えば、日本医療政策機構 の「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」※においても、ヘルスリテラシーの高い女性の方が仕事のパフォーマンスが高いという調査結果を発表しているように、ヘルスリテラシーの向上と生産性の向上には関連があることが明らかになりつつあります。また今回の調査結果を見ていくと、女性だけでなく、上司などを含む組織全体のヘルスリテラシーを向上させる取り組み(理解促進・制度・組織風土の構築など)を実施している組織の方が、パフォーマンスが高いという可能性を示唆しています。
女性、そして組織全体のヘルスリテラシーを向上させることがどうして仕事の成果や生産性の向上に繋がってくるのか。1つの仮説としては、女性自身のヘルスリテラシーを向上させることで、女性特有の症状があった時にも対処できるため健康に継続的に就業できることに繋がったり、妊娠・出産・子育てと仕事の両立においても、知識を得た上で主体的にキャリアを構築できることで、女性たち自身の働く満足度を高め、自分らしいキャリアを描きやすくなる、ということが考えられます。女性たちだけのリテラシーを高めても、組織側の女性の健康に関する理解や制度、風土がなければ、女性たちが最大限の可能性を発揮して働き続けることが難しいという意味では、女性と組織全体の両輪でヘルスリテラシーを向上させ、それぞれが望むキャリアや働く環境を、健康に継続的に自分らしく構築できる企業であることが、仕事のパフォーマンス向上にも繋がっていると考えられます。企業経営において、女性の健康というのはある意味ニッチなテーマとして捉えられやすいところがあるかもしれませんが、実は女性活躍推進においての要のひとつでもあり、生産性向上にも繋がっているということを1社でも多くの企業が認識していく必要があると考えています。
※:2018年3月22日 日本医療政策機構 「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
< https://hgpi.org/research/809.html >
はたらく女性の活躍と健康を考える会 事務局:パーソルキャリア株式会社
◆女性特有の不調への理解ある職場作りは、心理的安全性の向上にも繋がる
これまで3回にわたり女性の働き方とヘルスリテラシーに関する調査結果をお伝えしてまいりましたが、今回の集計結果では、女性特有の不調を周囲に伝えやすい職場は、組織の目標達成割合が高いという結果が出ました。それにより大きく2つのことが言えるのではないかと考えます。
1つ目は、上司や同僚など周囲の理解により、適切な対処ができる環境か否かがパフォーマンスに影響を及ぼしている可能性です。周囲の理解がない組織では、女性特有の不調を申し出ることができず、適切な対処をしないまま無理をして働くことで、体調が優れない状態が長引くため、本来のパフォーマンスが発揮しにくい状態になることが予想されます。一方で、周囲の理解がある組織では、女性特有の不調を感じた社員が適切なタイミングで休暇を取得したり、回復に向けて通院や休息をとるといった対応を取ることができると想像できます。結果として、メリハリをつけた働き方が実現でき、就業中のパフォーマンスが安定するため、組織の目標達成率も向上するのではないかと考えます。
次に心理的安全性との関連性です。さまざまなトピックの中でも特にプライベートな要素を持つ「女性の体調」について伝えやすいということは、社員同士がオープンに会話できる職場であることが伺えます。そのような職場では自分の意見や意思を自由に発信出来たり、仲間を信頼しあっている状態が保たれており、心理的安全性が高い環境で働くことができているのではないかと考えられます。このような環境で働く社員は、安心して実力を発揮できるのではないでしょうか。
ヘルスリテラシーを身につけ、女性特有の不調への理解ある環境を適切に整備することは、同時に心理的安全性のある職場を作ることにも繋がると考えられます。このような職場環境を整えることで、働く個人のワークエンゲージメントも高まっていくことが期待できそうです。
■プロフィール ※五十音順
岸畑 聖月 氏
株式会社With Midwife 代表取締役/助産師・保健師・看護師
助産師として年間2,000件以上のお産を支える、関西最大の産科で臨床を経験。不妊や産後うつなどリアルな社会課題に直面し、課題解決は急務であるとプランを前倒し、2019年に株式会社With Midwifeを設立。現在も、臨床経験を継続しながら経営に携わり、その経験を生かして公益財団法人大阪産業局女性起業家応援プロジェクトのプランニングマネージャーも務めている。
高尾 美穂 氏
医学博士/日本産科婦人科学会専門医/日本医師会認定産業医/イーク表参道 副院長
働く女性の産業医。 婦人科の診療を通して女性の健康をサポートし、女性のライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、選択をサポート。アプリstand.fmで毎日更新される番組『高尾美穂からのリアルボイス』では、体や心の悩みから人生相談までリスナーの多様な悩みに回答。
難波 美智代 氏
一般社団法人シンクパール 代表理事
銀行人事部勤務を経て、29歳で起業。女性向けサービスのPRやキャスティング事業を行うなかで2009年秋、自身の子宮頸がん罹患の経験によりNPO法人子宮頸がん啓発協会「シンクパール」を設立。第3期がん対策推進基本計画の策定やがん教育の推進に携わる。現在は、女性の健康教育と予防医療の啓発を行う一般社団法人シンクパールとして、企業や行政に向けたコンサルティング事業等を実施。
コミュニティアドバイザー/ファシリテーター
猪熊 真理子 氏
OMOYA Inc. 代表取締役社長/女子未来大学ファウンダー/
一般社団法人 at Will Work 理事
主に女性消費を得意とした、経営・ブランドコンサルティングや企画マーケティング、組織のダイバーシティ・マネジメント改革、企業内の女性活躍推進などを行う。経済産業省「平成28年度地域創業促進⽀援研修」講師、「平成28年度中国地域中⼩企業・⼈材コーディネート事業」ダイバーシティ経営セミナー・ファシリテーターなどを歴任。
■調査概要
調査期間:2022年1月6日
調査対象:20~59歳
会社役員、正社員、契約社員、公務員・団体職員いずれかの雇用形態で働く現職中の女性 3,200名
調査方法:インターネットによるアンケート回答方式 *2020年労働力調査結果に基づき、ウェイトバック集計を実施
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パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、グループの総力をあげて、これまで以上に個人の「はたらく」にフォーカスした社会価値の創出に努め、社会課題に正面から向き合い、すべての「はたらく」が笑顔につながる持続可能な社会の実現に貢献していきます。
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