JLL、日本の不動産投資市場における金利上昇の影響を分析
日本市場では金利上昇後も資金調達環境は良好、今後も堅固な不動産投資が続くと予測
https://www.joneslanglasalle.co.jp/ja/trends-and-insights/research/jll-japan-investment-trends-202407
ハイライト
好調な日本の不動産投資市場 - 2024年第1四半期の世界の不動産投資額は、前年同期比6%減の1,353億ドルと減少が続く中で、日本の不動産投資額は前年同期比45%増の1兆7,046億円と大幅に増加しています。また、都市別でみると、東京は世界1位の不動産投資が行われた都市となりました。
金利上昇による資金調達環境への影響は限定的 - 日銀は物価や賃金、個人消費の動向をみて慎重に利上げをしていく方針で、将来的にも急激な金利の変化は起こらないと考えられます。資金繰りや金融機関の貸し出し態度にも大きな変化はなく、金利上昇による資金調達環境の悪化は限定的とみられます。
企業による不動産売却の増加 - 不動産投資市場は長期にわたり買いニーズに比べて投資機会に乏しいマーケットが続いていましたが、以下のような動きを受けて、企業による不動産売却が増加するとみられます。
2023年3月、東京証券取引所による全上場企業を対象とした「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請により、企業の株主還元を目的とした不動産売却
全国的に相次ぐ再開発を背景に、不動産会社や事業会社による投資資金の確保を目的とした保有不動産や、完成した再開発ビルの売却
事業会社による設備投資の資金確保を目的とした保有不動産や、賃貸不動産、遊休資産の売却並びにセールスアンドリースバック
年金基金やインフラ企業による底堅い不動産投資需要 - 年金基金は、リスク分散や運用利回り向上を目的に不動産を含むオルタナティブ資産(上場株式、債券以外の運用資産)への投資を拡大してきましたが、未だ運用資産全体に対する設定上限(オルタナティブ資産全体で5%と設定されることが多い)の半分にも満たない水準にとどまっており、さらなる拡大余地が見込まれます。
インフラ企業は、本業との相乗効果や保有不動産の有効活用を背景に、2010年後半から不動産への投資を拡大してきました。近年は、傘下の資産運用会社による運用資産も拡大傾向にあり、将来的な私募REIT設立を検討するインフラ企業もあることから、インフラ企業並びに傘下私募REITによる不動産投資需要はさらに高まっていくと考えられます。
海外投資家による日本の不動産投資需要 - 2020年をピークに海外投資家による取得額は減少傾向にある一方で、売却額は増加しています。これは、欧米の投資家を中心に不動産ポートフォリオの見直しが続いていることや、高いリターンを要求するバリューアッドやオポチュニスティックに適した投資先が不足していることが要因としてあげられます。今後は、賃料上昇や事業会社による不動産売却が期待でき、また、テナント入れ替えやリノベーションによる賃料上昇を通じて高いリターンを見込める投資機会が増加すると予想されることから、海外投資家による不動産取得が再び増加すると予測されます。
JLL日本 リサーチ事業部 シニアディレクター 谷口 学は次のように述べています。
「金利上昇が懸念されていますが、物価上昇や賃金上昇を前提とした慎重な利上げであれば、不動産市場に与える影響は限定的と考えられます。国内投資家の不動産投資需要は非常に底堅く、投資機会の増加によって不動産投資市場は一段と活況を呈すると予想されます。海外投資家にとっても欧米と異なる動きをしている日本の不動産に対する関心は高く、物件取得が本格化する日は近いと思われます。」
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像