顔画像から肌の特徴を高精度に推定する「Kirei肌AI」の機能を拡充 データ起点の新たなモノづくりで化粧品開発のDXを加速
花王株式会社(社長・長谷部佳宏)化粧品研究所は、独自に開発した肌評価AI「Kirei肌AI*1」をバージョンアップし、従来は専用機器でしか取得できなかった肌内部の状態まで推定する機能などを拡充し、これまでの約5倍となる計77項目もの肌に関する網羅的な評価を可能にしました。これにより、肌状態の確認試験や調査時間の短縮、化粧品の処方設計の精度向上、研究における仮説立案から検証までのサイクルの高速化が実現。さらに、得られたデータを起点に今まで知られていなかった関係性や新たな発想を得るといった好循環も生まれ、“データ駆動型”の化粧品開発が進んでいます。
*1 2021年12月7日
花王リリース ヒトの感性も学習した独自肌評価AI「Kirei肌AI」を開発 評価の難しい肌のつや感の特徴も精緻に表現

今回の研究成果の一部は、第35回IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)Congress カンヌ大会(2025年9月15~18日、フランス・カンヌ)にて発表しました。
背景
化粧品、特にメイクアップの開発においては、繊細な色や質感を作りこんだ非常に多くのアイテムを短いサイクルで提供し続けることが求められています。このニーズに応えるために花王は、肌の見た目の印象を顔画像から高精度に評価、可視化する技術として「Kirei肌AI」を構築し、これまでに、製品評価や生活者向けの肌測定サービス*2に応用してきました。
美と価値観の多様化が加速し、さらなる商品開発研究の効率化および精緻化が喫緊の課題となる中で、「Kirei肌AI」には見た目だけでなく、肌に関する網羅的な情報を取得する機能も期待されるようになってきました。そこで花王は、入力する学習データを再検討し、搭載する機械学習モデルの拡充を進め、解析できる項目の充実に取り組みました。
*2 2023年3月30日
花王リリース 花王、双方向のデジタルプラットフォーム「My Kao」において、自社研究知見を取り入れたAI活用による肌測定サービス「肌レコ」の運用開始
複数の独自機械学習モデルの追加により、顔画像から肌内部の状態まで推定可能に
これまでの「Kirei肌AI」は、ほうれい線や目尻などの部位特有の変化や、水分量、セラミド組成、コラーゲン密度など肌内部の状態を推定できる仕様にはなっていませんでした。そこで今回、これまでの学習データ形式である17.8mm×17.8mmサイズの“肌パッチ画像”に加え、20~80代の男女293名の顔画像から、特定部位を切り出した“部位別画像”計70,389枚も利用し、シワ・たるみ・水分量などを評価、推定する複数の機械学習モデルを新たに構築しました。
これにより、「Kirei肌AI」には計25の機械学習モデルが搭載され、肌表面の見た目から内部まで77項目にも及ぶ肌状態を評価、推定できるようになりました(図1)。

「Kirei肌AI」の機能拡充により、研究スピードが向上し、データを起点とした新たなモノづくりが進む
これまで、肌を評価するには、仮説を立てて試験を設計し、解析が完了するまでに数カ月の時間と数十名の研究員が関わる必要がありました。しかし機能拡充した「Kirei肌AI」では、適切に撮影された顔画像データさえあれば、顔画像1枚あたり10分以下の解析時間で網羅的なデータを得ることが可能です。現在は研究所内での運用も定着し、平均して月間のべ730 枚の顔画像を解析しています。このように、仮説から検証までの劇的なスピードアップが実現しました。
また、過去に取得した膨大な顔画像データ*3も、機能拡充した「Kirei肌AI」で再解析することが可能です。取得時点では評価、推定できなかった水分量、皮脂量、ハリなどの肌状態に関する項目とメイクの仕上がりを同時に評価できるようになったことで、「ハリのない肌では、メイク後の肌でシワが目立ちやすい」などといった関係も、改めて定量化することができました。これまでは気づかなかった課題や、今まで知られていなかった関係性を可視化できることから、データを基にした新たな視点での「よきモノづくり」にもつながっています。
*3 適切な承諾を得ていて、利用可能な顔画像データ
今後の展望
花王は、人の目や精密機器と同等以上の肌評価の実現に向けて、今後も「Kirei肌AI」の評価項目の拡張と推定精度のさらなる向上を継続して進めていきます。さらに、グローバルでの展開を見据えて、さまざまな肌のトーンや肌特性に対応したデータ拡充も推進し、適用範囲の拡大を図ります。このような取り組みを進めることで、化粧品開発における時間およびコストの効率化を図り、美と価値観の多様化に対応する魅力的なモノづくりで、生活者の期待を超える商品開発を推進していきます。
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