第3回大学生の学習・生活実態調査 08年→16年の学生変化 アクティブ・ラーニングが増え、学生の学びは真面目に一方で、大学に「面倒をみてほしい」学生は増加
「学習の方法は大学で指導をうけるのがよい」 51% (11ポイント増)「生活について大学が指導・支援するほうがよい」 38% (23ポイント増)
【主な調査結果】 1.学びの機会:アクティブ・ラーニング型の授業を受ける機会が増加。 ・ 「グループワークなどの協同作業をする授業」(よく+ある程度あった)71.4% →8年間で18.1ポイント増 ・ 「プレゼンテーションの機会を取り入れた授業」(同)67.0% →8年間で16.0ポイント増 ・ 「ディスカッションの機会を取り入れた授業」(同)65.7% →8年間で19.0ポイント増 2.学習態度:グループワークやディスカッションで、自分の意見を言う、他者に配慮する学生が増加。 ・ 「グループワークやディスカッションで自分の意見を言う」(とても+まああてはまる)58.6% →8年間で11.8ポイント増 ・ 「グループワークやディスカッションでは、異なる意見や立場に配慮する」(同)67.4% →8年間で13.9ポイント増 ・高校時代の探究的な学びの経験が多い学生のほうが、少ない学生よりグループワークやディスカッションで自分の意見を言うことができると回答。 3.進路決定:「興味のある学問分野があること」を重視して大学選択した学生が減少。 ・「興味のある学問分野があること」54.5% →8年間で10.3ポイント減 ・大学選択で「興味のある学問分野があること」を重視しなかった学生ほど、高校時代に進路や将来について積極的に考えていなかったと回答。 4.大学教育観:興味よりも楽な授業を好む声、大学の支援・指導を求める声が増加。 ・ 「あまり興味がなくても、単位を楽にとれる授業がよい」61.4% →8年間で12.5ポイント増 ・ 「大学での学習の方法は、大学の授業で指導をうけるのがよい」50.7% →8年間で11.4ポイント増 ・ 「大学生活については、大学の教員が指導・支援するほうがよい」38.2% →8年間で22.9ポイント増 5.大学生活:大学生活に対する満足度が8年間で低下。学生生活が期待通りと回答したのは約半数。 ・ 「大学生活を総合的に判断して」(とても+まあ満足している)51.1% →8年間で13.0ポイント減 ・ 「期待通りの学生生活を手に入れた」(とても+まあそう思う)48.1% |
■調査結果からみえてきたこと
大学教育改革の渦中にあった8年間の学生の意識や学びの変化をまとめると、以下3点です。
(1)アクティブ・ラーニング形式の授業が増え、自己主張できる学生が増加…大学の授業で際立って増加して
いるのが、アクティブ・ラーニングの機会です。特にこの4年間で、ディスカッションの場における学生の変化(異なる意見や立場への配慮、意見の主張)がみられ、大学の授業改善が学生の態度の変容につながっているようです。その他、実習や外国語による授業などの機会も増え、学生の学びの機会は多様になっています。
(2)興味のある学問分野や進路意識があいまいなまま、入学する学生が増加…大学選択の際に、興味のある学問分野を重視した学生が減少しています。興味のある学問分野を重視しなかった学生は、進路や将来についてよく考えなかった傾向にあり、将来や大学で学びたいことがあいまいな入学者が増加しているようです。
(3)“楽単志向”や大学への依存度が高まり、大学生活に満足できない学生が増加…興味よりも楽に単位をとりたいと考える学生や、学習・生活両面で大学から支援・指導をしてほしい学生が増加し、大学生活への満足度が低下しています。約半数が、期待通りの学生生活ではないと感じています。
提案 ディプロマ・ポリシーを活用し「学びの目標」を明確に。大学を「自ら学ぶ場」に転換させよう!
以上の変化から見える課題は、学生にとって大学が「教わる場」であり、授業に向かう態度は良化しているものの、「自ら主体的に学ぶ場」への転換はまだこれからだということです。そこで、大学が学生に身につけさせたい力を示したものであり、学生にとっては学修成果の目標となるディプロマ・ポリシーの活用を提案します。
【主な調査結果】 6.大学のポリシーの認知・理解:大学が学生に卒業までに身につけさせたい能力(ディプロマ・ポリシー)を理解している学生ほど、大学生活に満足している。 ・ディプロマ・ポリシーの認知・理解別 「大学生活を総合的に判断して」(とても+まあ満足している) →知っていて理解している(68.7%) 知らない(47.3%) で21.4ポイントの差 |
ディプロマ・ポリシーに対する理解度の高い学生ほど、大学生活に満足していることが明らかになりました。学生がポリシーを理解することは、自身の学ぶ目標を明確にすることでもあります。学びたいことがあいまいな入学者が増加している今こそ、ポリシーを通じて大学と学生の間でコミュニケーションを取り、「学びの目標」を確認することが急務だと考えます。
しかし、この提案は、大学教育のひとつの局面を救うものに過ぎません。真の課題である「自ら学ぶ」への転換は、大学だけでなく日本の教育全体の課題です。ベネッセ教育総合研究所では、今後もさまざまな教育段階での調査・研究を通じて、この点について考えていきます。
本リリース内容の詳細につきましては、ベネッセ教育総合研究所のWEBサイトから「第3回大学生の学習・生活実態調査 速報版」をダウンロードできます。こちらもあわせてご覧ください。http://berd.benesse.jp/koutou/
1. 学びの機会:アクティブ・ラーニング型の授業を受ける機会が増加。
・ 「グループワークなどの協同作業をする授業」(よく+ある程度あった)
2008年53.3% 2012年59.1% 2016年71.4% →8年間で18.1ポイント増加
・ 「プレゼンテーションの機会を取り入れた授業」(同)
2008年51.0% 2012年57.6% 2016年67.0% →8年間で16.0ポイント増加
・ 「ディスカッションの機会を取り入れた授業」(同)
2008年46.7% 2012年54.2% 2016年65.7% →8年間で19.0ポイント増加
・ どの項目も8年間で増加しており、授業の機会が多様になっている。
2.学習態度:グループワークやディスカッションで、自分の意見を言う、他者に配慮する学生が増加。
・ 「グループワークやディスカッションでは、異なる意見や立場に配慮する」(とても+まああてはまる)
2008年53.5% 2012年56.0% 2016年67.4% →8年間で13.9ポイント増加
・ 「グループワークやディスカッションで自分の意見を言う」(同)
2008年46.8% 2012年51.5% 2016年58.6% →8年間で11.8ポイント増加
・ 「授業の復習をする」(同)
2008年34.6% 2012年39.5% 2016年46.6% →8年間で12.0ポイント増加
・ 「計画を立てて学習する」(同)
2008年41.8% 2012年42.4% 2016年49.0% →8年間で7.2ポイント増加
・高校時代の探究的な学びの経験が多い学生のほうが、少ない学生よりもグループワークやディスカッションで自分の意見を言うことができると回答。
3.進路決定:「興味のある学問分野があること」を重視して大学選択した学生が減少。
・「興味のある学問分野があること」
2008年64.8% 2012年62.1% 2016年54.5% →8年間で10.3ポイント減少
・「興味のある学問分野があること」を重視しなかった学生ほど、高校時代に進路や将来について積極的に考えていなかったと回答。
4.大学教育観:興味よりも楽な授業を好み、大学の支援・指導を求める声が増加。
・ 「あまり興味がなくても、単位を楽にとれる授業がよい」
2008年48.9% 2012年54.8% 2016年61.4% →8年間で12.5ポイント増加
・ 「大学での学習の方法は、大学の授業で指導をうけるのがよい」
2008年39.3% 2012年43.9% 2016年50.7% →8年間で11.4ポイント増加
・ 「大学生活については、大学の教員が指導・支援するほうがよい」
2008年15.3% 2012年30.0% 2016年38.2% →8年間で22.9ポイント増加
5.大学生活:大学生活に対する満足度が8年間で低下。学生生活が期待通りと回答したのは約半数。
・ 「大学生活を総合的に判断して」(とても+まあ満足している)
2008年64.1% 2012年63.2% 2016年51.1% →8年間で13.0ポイント減少
・ 「期待通りの学生生活を手に入れた」(とても+まあそう思う) 2016年48.1%
・ 「ここ数年やってきたことを全体的に見て、幸せだ」(同) 2016年72.0%
・ 「これまでの学生生活(学習や部活,人間関係など)は成功している」(同) 2016年61.9%
・学生生活の中でやってきたことに対する幸福感は約7割、成功した実感は約6割の学生が持つ一方で、学生生活が期待通りだとの回答は約半数にとどまる。
6.大学のポリシーの認知・理解:大学が学生に卒業までに身につけさせたい能力(ディプロマ・ポリシー)を理解している学生ほど、大学生活に満足している。
・卒業までに身につけさせたい能力(ディプロマ・ポリシー)の認知・理解別
「大学生活を総合的に判断して」(とても+まあ満足している)
知っていて理解している68.7% 知っているが理解はしていない49.0% 知らない47.3%
→ディプロマ・ポリシーを「知っていて理解している」と「知らない」で21.4ポイントの差
【ディプロマ・ポリシー】
各大学、学部・学科などの教育理念に基づき、どのような力を身につけた者に卒業を認定し、
学位を授与するのかを定める基本的な方針であり、学生の学修成果の目標ともなるもの。
※「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)、「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受け入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン
(平成28年 中央教育審議会)より引用
■参考資料
保護者との関係:保護者の意見に従う、困ったことがあると保護者が助けてくれると考える学生が増加。
・ 「A:保護者のアドバイスや意見に従うことが多い」(A+どちらかというとAに近い)
2008年40.1% 2012年45.9% 2016年49.7% →8年間で9.6ポイント増加
・ 「A:困ったことがあると保護者が助けてくれる」(同)
2008年41.8% 2012年49.0% 2016年57.8% →8年間で16.0ポイント増加
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