金利上昇、4割で「マイナス影響」、「プラス影響」は1割未満 「利息負担増」の懸念広がる 3社に1社は「プラスマイナスゼロ」、円高による物価抑制に期待膨らむ

金利上昇による企業への影響アンケート

株式会社帝国データバンク

日本銀行は2022年12月20日、長期金利の変動幅を従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大し、これまでの金融緩和策から修正を図った。こうしたことを受け、為替市場では日米金利差の縮小を見込んだ円買いが膨らみ、相場は日本銀行の発表前と比べて約5円の円高ドル安(1ドル=137円台→132円台)へと進んだ。

また、財務省が2023年1月5日に実施した長期金利の指標となる10年物国債の入札では、最高落札利回りが0.5%と7年半ぶりの水準まで上昇し、引き上げられた長期金利の上限に早くも到達していた。

利上げなどにより金利が上昇すると、利息負担の増加で企業収益が圧迫されるほか、家計における住宅ローン金利の負担が増加するなどのマイナスの影響があげられる。一方で、家計における預金の利息収入の増加や前述した為替相場の急激な変動の抑制といったプラスの影響も考えられる。

そこで、帝国データバンクは、金利の上昇による企業への影響についてアンケートを行った。
<調査結果(要旨)>
  1. 4割が「マイナスの影響の方が大きい」、3割は「プラスマイナス両方で相殺」
  2. 「マイナスの影響の方が大きい」は「大企業」で目立つ。業界別では、『不動産』が突出して高い
  3. 企業の6割近くで「利息負担増」を見込む。一方、「輸入価格の低下」といったプラスの影響も4割近くに
  4.  

4割が「マイナスの影響の方が大きい」、3割は「プラスマイナス両方で相殺」

金利上昇による事業への影響金利上昇による事業への影響

今後金利が上昇した場合、自社の事業にどのような影響を見込むか尋ねたところ、「プラスの影響の方が大きい」は8.5%にとどまった。一方、「マイナスの影響の方が大きい」は40.0%で最も高くなった。企業からは、「輸入商材の販売比率が大きいため、金利上昇を背景とした円高による商品コスト低減は、利益面で良い影響が出る。2022年は円安によるコストの上昇分を売価に完全に転嫁できていなかったが、昨今の円高への進行により、コストを十分に価格転嫁できるようになっている」(各種商品卸売)といった声が聞かれた。一方、「借入金の支払利息の増加による利益の圧迫が一番懸念される」(プリント回路製造)といったマイナスの影響を見込む声もあがった。

また、「為替相場の安定が輸入価格の低下を導くと予想され、原価の高騰に一応の歯止めが見込まれる。その反面、顧客の金利返済負担の増加が、設備投資マインドにどの程度の影響が出るのか不安である」(造作材製造)とあるように、「どちらとも言えない(プラスとマイナス両方で相殺)」としている企業は31.4%だった。
他方、「影響はない」は9.8%、「分からない」は10.4%となった。


「マイナスの影響の方が大きい」は「大企業」で目立つ。業界別では、『不動産』が突出して高い

金利上昇による事業へのマイナスの影響~規模、主な業界~金利上昇による事業へのマイナスの影響~規模、主な業界~

規模別にみると、すべての企業規模で「マイナスの影響の方が大きい」の割合が最も高くなった。特に「大企業」は44.4%と全体(40.0%)を4.4ポイント上回った。また、主要7業界中5業界では「マイナスの影響の方が大きい」の割合が最も高くなった。一方、円高の進行による輸入価格やエネルギー価格抑制効果がとりわけプラスに寄与するとみられる『卸売』および『運輸・倉庫』の2業界は「どちらとも言えない(プラスとマイナス両方で相殺)」がトップ。

「マイナスの影響の方が大きい」を業界別にみると、金利上昇による返済負担増で家計の購買意欲の低下が懸念される『不動産』(54.8%、全体比+14.8ポイント)が突出して高く、半数を超えた。また、『製造』(44.7%)は全体を5ポイント近く上回っている。

『不動産』からは、「住宅を売る商売のため金利が上がると不動産が売りにくくなる」(建物売買)といった声があがった。他方、『製造』からは「原材料逼迫にともない長納期での先行手配が必要となっており、借入金で賄っているため利息が増えると直接的に数字に影響する。取引先には支払条件の変更や利息の転嫁などには応じてもらえない」(電子部品製造)というように、借入金の支払利息の増加を懸念する声が多数聞かれた。


企業の6割近くで「利息負担増」を見込む。一方、「輸入価格の低下」といったプラスの影響も4割近くに

金利上昇による具体的な影響(複数回答)金利上昇による具体的な影響(複数回答)

金利上昇で見込んでいる具体的な影響について尋ねたところ、「借入金の支払利息が増える【マイナスの影響】」が56.5%でトップ(複数回答、以下同)。次いで、「輸入価格の低下(物価高騰の抑制)【プラスの影響】」が38.3%、「利息が高くなり資金調達しづらくなる【マイナスの影響】」が30.7%で続いた。

企業における利息負担の増加といった直接的なマイナスの影響とともに、為替変動の抑制による輸入価格の低下といったプラスの影響も上位にあがっている。

また、「緩やかな円高への転換による安定な為替相場【プラスの影響】」(28.4%)、「住宅ローンなどの返済負担が増えて消費が冷え込む【マイナスの影響】」(27.1%)は3割近くとなった。

その他にも、「利上げは、景気への影響よりも、異常な状態が長過ぎたことに対する是正の意味合いの方が大きいと考える。一過性でやるべきものが異常なくらい長過ぎてしまい、日銀が機能不全になっている。景気が悪くなるのは我慢してでも正常に戻すべきだと思う」(一般管工事)といった意見にあるような、「金融政策運営の正常化【プラスの影響】」を見込んでいる企業は13.2%だった。

企業規模間では影響の違いが一部みられた。「大企業」において、「取引先の設備投資や業況が悪化【マイナスの影響】」が34.9%と中小企業のそれを10.8ポイント上回った。一方、「中小企業」では、「輸入価格の低下(物価高騰の抑制)【プラスの影響】」(39.4%、大企業比+7.4ポイント)が目立った。

他方、業界別に見込んでいる影響をみると、特に『不動産』における「住宅ローンなどの返済負担が増えて消費が冷え込む【マイナスの影響】」の割合は50.9% と全体を23.8ポイント上回った。

企業の声企業の声




本アンケートの結果、今後金利が上昇した場合、自社の事業に「プラスの影響の方が大きい」と見込む企業は8.5%にとどまった一方、「マイナスの影響の方が大きい」は4割にのぼった。特に『不動産』における「マイナスの影響の方が大きい」割合は全体を大幅に上回っている。また、「プラスとマイナス両方で相殺」としている企業は約3社に1社だった。
金利上昇で見込んでいる具体的な影響について「借入金の支払利息が増える【マイナスの影響】」が6割近くにのぼり、「輸入価格の低下(物価高騰の抑制)【プラスの影響】」「利息が高くなり資金調達しづらくなる【マイナスの影響】」が3割超で続いた。

日本銀行が行った長期金利の変動幅の拡大は、金融政策運営の正常化への一歩となっており、長期的にみて日本経済にはプラスの影響が期待できる。また、過度な円安を抑えるといった効果もみられはじめている。

しかしながら、円安の進行のみが背景ではない昨今の物価の高騰や、消費の落ち込み、人件費の増加などで企業を取り巻く環境は厳しさが続くなか、金利の上昇による利息負担の増加は経営にさらなる影響を及ぼす恐れがある。日本銀行は物価や経済の状況に十分注意した金融政策の実施のほか、政府は家計や企業の負担を把握し、それを軽減するための経済対策の迅速な実行が求められよう。

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ビジネスカテゴリ
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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月