「専門学校生の学習と生活に関する実態調査」 職業のリアルを身近に感じることで 学びへの積極性が育つ
大変だけれど成長を感じる 専門学校の学びの特徴が明らかに
調査結果から得られた、専門学校教育の主な特徴は以下の通りです。
①関心・興味: 高校時代と比べて学びに対する態度が積極的に 【高校時代を振り返って】 【現在】 「授業に関心・興味がもてなかった」 「授業に関心・興味がもてない」 46.9% → 33.1% 【-13.8p】 ※「とても+まああてはまる」の合計% ②学習時間: 授業、予復習や課題に取り組む時間は週22時間 ●平均的な1週間における学習・生活時間(全体平均): 「授業への出席」 14.5時間 「予復習や課題に取り組む時間」 3.0時間 「学外実習やインターンシップ」 2.3時間 「授業以外の自主的な学習」 1.9時間 ③学習状況: 実践的で多様な教授・学習スタイル 「学んでいる内容と将来の関わりについて考える」 80.7% 「試験や課題を通過するために相当の努力が求められる」 79.2% 「課題や実践を通じて自分なりのコツや考え方を見つける」 74.1% ※「よく+ときどきあった」の合計% ④教員との関係: 教職員による手厚い 「チーム支援」 「講義などで専門に関する知識や技能をわかりやすく教えてくれる教員」 89.3% ※「いる」の% 「実習等で職業人としてあるべき姿勢や一流の技術を見せてくれる教員」 79.0% ⑤学びの意識: 職業の「リアル」に直面するからこその現実的な悩みと高い成長実感 「就きたい職業・仕事に必要な才能・センスの不足を感じる」57.6% 「授業についていけないと感じる」 47.6% 「学びを通じて自分は成長している」 86.4% ※「とても+まああてはまる」の合計% |
今回の調査では、高校時代と比べて授業内容に興味関心をもち、学びに向かう専門学校生の姿が明らかになりました。一般的に、専門学校生は、高校までの学習履歴等から、学びに対する意欲や積極性の面で低く評価される傾向にあります。しかし、職業と関連する内容について実践的な方法で学んだり、仕事の厳しい現実を前に悩みながらも、教職員のサポートを得て課題をやり抜く経験を通じて、学ぶ姿勢を積極的なものに変容させている生徒が、一定数存在しています。
「興味関心のある内容を自分で選び学ぶのだから当然だろう」と思う方がいるかもしれません。しかし6割の生徒が「学ぶ内容の難しさ」や「才能・センスの不足」の悩みを同時に抱えているという実態も浮かび上がってきました。そこには、単なる「専門的な知識やスキルの習得」に留まらない、専門学校ならではの教育の特徴が垣間見えます。専門学校での職業に向き合う学びが、社会で働いていく上で不足しているものが何か、具体的に考える機会を提供しているようです。こうした学びに対する「当事者意識」は、将来の選択肢を一旦「限定」し、興味・関心がある内容「で」学ぶという選択をしたからこそ引き出された、ポジティブな側面と言えるでしょう。
専門学校と大学で進路を悩んでいる高校生は、こうした専門学校の学びの特徴もふまえた上で、どのような選択をすれば「納得できる」のか、自身の学びに対して責任感を持てるのかを考えてみるとよいかもしれません。
大学で学術を学ぶことと、専門学校で職業を学ぶことは二項対立ではありません。どちらに進学するにしても、自らが学ぶ内容と将来や職業とのつながりを考える機会をもつことは重要です。この点において専門学校は、これまで時代や社会の変化にあわせ、多様な目的・関心をもった生徒を受け入れながら、機会づくりの試行錯誤を積み重ねてきています。その教育実践やノウハウから他の教育機関が学べることも多いのではないでしょうか。
調査概要
名称 | 専門学校生の学習と生活に関する実態調査 |
調査方法 | 学校通しの郵送法による調査 |
調査時期 | 2017年1~3月上旬 |
調査対象 | 一般社団法人全国専門学校教育研究会に加盟する専門学校48校に所属する1年生~4年生9,484名。 ※文部科学省H28「学校基本調査」の専門8分野の生徒比率に一致するようウエイト(重み)の設定を行った。 |
調査項目 | <学生生活> 高校での学習状況/進路選択の際に重視した点(入学理由)/入試方法/志望度/行動主体性/教職員とのつながり/専門学校での学習状況/設備、制度の利用状況/学生生活で力を入れたこと/普段の生活時間/入学後の悩み/教育機会/学習成果/学びの充実度/成長実感 など |
調査研究 メンバー |
中西新太郎(横浜市立大学 名誉教授)、塩瀬隆之(京都大学総合博物館 准教授)、植上一希(福岡大学 准教授)、児島功和(山梨学院大学 特任准教授)、木村治生(ベネッセ教育総合研究所 副所長)佐藤昭宏(ベネッセ教育総合研究所 研究員) |
ベネッセ教育総合研究所のホームページからも、本資料をダウンロードできます。http://berd.benesse.jp/
【主な調査結果】
①関心・興味: 高校時代と比べて学びに対する態度が積極的に
高校時代と比べて、「授業に関心・興味がもてない」と回答した生徒が約3人に1人まで減少。
●高校時代と現在の学習行動
【高校時代】 Q:高校時代の学校や家庭での学習の様子についてあてはまる番号1つに○をつけてください。
【現在】 Q:これまでの学生生活を振り返って次のことはどれくらいあてはまりますか。あてはまる番号1つに○をつけてください。
【参考】 調査の条件が異なるので単純には比較できないが、大学生を対象にした調査では、「(高校時代)授業に関心・興味が持てなかった」(とても+まああてはまる)は46.8%、「(現在)授業に関心・興味が持てない」(よく+たまにある)は68.7%であった。 *ベネッセ教育総合研究所「第3回大学生の学習・生活実態調査」2016 |
②学習時間: 授業、予復習や課題に取り組む時間は週22時間
●平均的な1週間の学習・生活時間(全体平均)
Q:今学期の平均的な1週間を振り返り、次のようなことにそれぞれどれくらい時間を費やしていますか。
【参考】 調査の条件が異なるので単純には比較できないが、大学生を対象にした調査では、「大学の授業などへの出席」11.7時間、「授業の予復習や課題をやる時間」2.7時間、「大学の授業以外の自主的な学習」2.3時間であった。 *ベネッセ教育総合研究所「第3回大学生の学習・生活実態調査」2016 |
③学習状況: 実践的で多様な教授・学習スタイル
8割が「試験や課題を通過するために相当の努力が求められる」と回答。
専門学校の学びが生徒にとって容易ではないことがうかがえる。
●教育機会の頻度
Q:これまでの専門学校での授業を通じて次のような機会がどれくらいありましたか。
●教育機会の有無別の 「成長実感」
教育機会の差が、学びを通じた成長実感の差に影響を与えている。
④教員との関係: 教職員による手厚い 「チーム支援」
専門学校生の8~9割が何らかの形で自らの学びを支援してくれる教員が「いる」と回答。
●自分を支援してくれる教職員の有無
Q:あなたには次のような教員や職員がいますか。あてはまる番号1つに○をつけてください (「いる」「いない」の2択)。
⑤学びの意識: 職業の「リアル」に直面するからこその現実的な悩みと高い成長実感
●進学後の学びや進路に関する悩み
Q:専門学校での学びや進路に関する悩みについてお聞きします。次のようなことはどれくらいあてはまりますか。
●(進学後)「授業についていけない」の比率
Q:これまでの学生生活を振り返って、次のようなことはどれくらいあてはまりますか。
●学びを通じた高い「成長実感」
Q:これまでの学生生活を振り返って、次のようなことはどれくらいあてはまりますか。
【専門学校に関する基本情報】
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1.高校卒業者全体に占める専門学校進学者の比率
2.すでに「受け皿」の方が大きい「専門学校進学」
3.高校生の進学希望(学校偏差値帯別・高校2年生)
Q: あなたは将来、どの学校まで進みたいですか。
4.高校生の学校外の平均学習時間(学校偏差値帯別・高校2年生)
Q: あなたは普段学校での授業以外に1日にだいたい何時間くらい勉強していますか。 (塾や予備校、家庭教師との勉強時間含む)
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