認知症の新たなメカニズム解明へ!
~加齢に伴い認知症の発症リスクを上昇させる因子の発見~
千葉大学大学院薬学研究院の殿城亜矢子講師と伊藤素行教授、千葉大学真菌医学研究センターの高橋弘喜准教授の研究グループは、脳内で一酸化窒素によって活性化される可溶性グアニル酸シクラーゼ(注1)が加齢に伴い増加することが、認知症の発症リスクを上昇させる一つの要因であることを明らかにしました。本研究成果により、認知症に対する新薬開発や新たな生体内リスクマーカー(注2)の発見などが期待されます。
本研究成果に関する論文は、2022年8月13日にAging Cellに掲載されました。
本研究成果に関する論文は、2022年8月13日にAging Cellに掲載されました。
- 研究の背景
認知症を含む加齢性記憶障害は、ヒトだけでなく、マウス、ショウジョウバエ、線虫など多くのモデル動物でも共通してみられる現象です。同研究グループは、寿命が短いため老齢個体を容易に得ることができるショウジョウバエをモデル動物として用いました。ショウジョウバエは、匂いと電気刺激を同時に与えられると、その匂いを電気刺激と関連付けて学習し、一定時間記憶することができますが、老化したショウジョウバエでは記憶する能力が低下します。同研究グループはこのようなモデルを用いて、加齢に伴い脳内で発現量が変化することによって記憶低下の原因となる遺伝子を網羅的に探索することとしました。
- 研究成果
これらのことより、加齢に伴いNOやsGCに関連する経路が活性化することが、記憶の低下を引き起こす一つの原因となることが示唆されました。
- 今後の展望
- 用語解説
(注2)リスクマーカー:疾患の発症リスクと相関し、発症リスクを予測できる特定の物質や遺伝子。
(注3)RNAシーケンス: 遺伝子の塩基配列を高速に解読できる次世代シーケンスを用いて、取得した情報をデータ解析することで、遺伝子の発現量を網羅的に解析できる手法。
(注4)L-arginine:アミノ酸の一つであるL-アルギニン。NO合成酵素により、L-アルギニンからNOが合成される。
- 論文情報
著者:Ayako Tonoki, Saki Nagai, Zhihua Yu, Tong Yue, Sizhe Lyu, Xue Hou, Kotomi Onuki, Kaho Yabana, Hiroki Takahashi, Motoyuki Itoh
雑誌名:Aging Cell
DOI:https://doi.org/10.1111/acel.13691
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